戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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安心と信頼の

「お疲れ様、榛名」

 

榛名を金剛型の部屋に運び、

ベッドに寝かせる

 

ちなみに、金剛から鍵を借りた

 

「…はぁー」

「すみません、提督…」

 

「いや、体力を使い果たしてしまうとは

思っていなかった、

こちらの予想が甘かったよ」

 

俺は榛名の額に手を載せて

「短い時間でも良い、ゆっくり休んでくれ」

優しく撫でる

 

さて、昼食は胃に優しいものにしよう

うん、うどん万歳

 

「おやすみ、榛名…」

「……すぅ…」

 

榛名は安心したような表情でないっている

かわええ

 

「さて、執務…」

俺が執務に戻るために体を回転させるその直前、榛名は明らかに寝ながらの状態で俺の腕を掴み

いかなる技法によってか、全く痛くない関節取りで抱え込む

 

「…はぁ…」

 

「練習してんなぁ…無駄に」

そんなところにまで予複習を欠かさないあたり

努力家な一面が垣間見える

 

まぁ、良いや

 

「起きるまで待っていよう」

 

ちなみに、そのあとは結局

昼前には起きてくれた

 

「…う、…提督!?」

「おはよう、榛名」

 

笑顔で挨拶である、これ重要

「!出て下さい!」

「…この腕で?」

 

榛名に抱えられた腕に視線を投げる

榛名もそれに気づき

 

「きゃあっ!提督っ!ダメです!その

こういうのは、まだ」

 

俺の腕を 離して、ぽふ、と布団を被る

まだ、ということは

後々ならば良いのだろうか

 

「まぁ、その辺りは検証の余地があるな」

 

頭だけを出して、

俺の方に視線を向けてくる榛名

 

なんだこれ、

 

「提督…その、えっと」

「…無理をしなくて良いよ、ゆっくり

自分のペースで良い」

 

息を詰まらせていた榛名に、優しく声をかけて、その頭を撫でる

起きた直後なら、すぐに干渉すれば…

 

榛名は特に抵抗もせずに

目をとろんと鈍らせ

 

「ていとく…そんな…優しくしないでください…わたし、ていとくにひどいことしてるのに…」

 

「いや、ひどい事なんてされていないよ、俺は榛名に優しくする事をやめはしない」

 

一定のペースで髪を撫でながら

ゆっくりと話しかける

 

落ち着く空間で、ゆっくりと

優しく声を注がれると、人間ってのは

ほぼ無条件に信じ込んでしまうものだが、艦娘も同じなのだろうか

 

「俺は榛名に優しくするよ、

だって榛名は人間なんだからね」

 

ゆっくりと、柔らかく

安心と信頼を与える声で

 

「榛名、良いかい?

君は一個の意志を持つ人間なんだよ」

「…はるなは…『わたし』は へいき です」

 

強固なマインドセットだこと

ここまで行くと洗脳だな

 

「そうか、へいき、平気ね、

平気って時は、なんて言うのかな?

大丈夫って言うんだね」

 

「はい…はるなは…」

「人間だよ」

 

ゆっくりと認識をすり替えて、

あるべき認識を歪めていく

 

言葉とはかくも恐ろしいものなのだ

 

「はるなは…大丈夫…です」

「いや、君は無理をしているね、

そんなに疲れているのだから

もう、休んで良いんだよ」

 

洗脳特有の一見通ってるように見えて筋の通っていない会話

 

これで強引に寝かしつける

すまんな、無理やりに眠らせて、これ催眠術とか暗示とかそういう系統のアレなんだ

 

「おやすみ、榛名」

「はい…ていとく」

 

大人しくすやぁしてくれた榛名

今度は腕を取られたりはしない

 

「…じゃあな」

 

さっと部屋を出て、鍵をかけておく

執務室に戻り…

 

「テートクー、書類処理終了してるネー」

どことなく疲れ果てている金剛が迎えてくれた

 

[妖精さんに絡まれてたんだね

2時間くらいずっと]

 

「……おっ、おう、お疲れさま…」

 

「燃えた…燃え尽きマシタ…真っ白二

うふふ…」

 

「おい!金剛!それはダメだ!

起きろ!起きるんだ金剛!」

 

[提督もノッてるじゃん]

[違う!そういう意味じゃない!]

 

「私はもう力を使い果たしてしまいマシター、あとはお願いしマース」

 

書類の山を指差す金剛

「アレを…どうか…」

 

がく、とストーリー序盤のお約束キャラのように倒れる金剛、ごめんよ本当に

 

俺は書類を確保して、

鎮守府内線で大淀と時雨を呼び出す

 

数分後

 

「…提督、失礼します」

「おう、時雨もいるか?」

「うん、どうかしたの?提督」

 

ドアを開けて普通に入って来る大淀と

ひょこ、と扉の影から出てきた時雨

 

二人に頼む仕事は

「大淀は書類の処理、然るべき場所に出しといてくれ、時雨は…金剛が倒れたから、妖精の相手を代役頼む…統率力あるし」

 

「僕で良いのかい?」

「良いんだよ、

むしろ時雨じゃなきゃできない」

 

夕立や白露ではそもそも妖精と一緒になって遊んでしまう未来が丸見えだし

 

にゃしいとかはちょっと性能的に耐えられない…金剛を沈めるほどのパワーとスタミナだからな

 

暁とかは嫌がるだろうし

夕雲はちょっと難がある

 

陽炎は……どうだろうな?

駆逐艦を除いても

少なくとも愛宕達は論外だ、妖精達は体に優しくない…というか気遣いがないから

 

「頑張るよ」

「よろしくな」

 

「任務、了解しました…

私は全力で急ぎますので、耐えてください」

 

大淀はそう時雨に告げて、

すでに妖精が集り始めていた書類の束を確保し、妖精を躱しながら出て行った

 

あの身のこなしはすごいなぁ

今の、海に出られない俺には関係ないけど

 

さぁ、俺も手が空くから

今度は金剛をお部屋に連れて行こう

 

こんなところで姉妹の似ているところを見るとちょっと笑えて来るな

体力を使い果たすまで頑張り続けてくれた二人を笑うことなんてできないが…

 

「さぁ、金剛、お前も……って

お前昼食ってねえのかよ…」

 

金剛の机の上には、一日これ一本なエナジードリンクが佇んでいた…

「お前なぁ…まぁ仕方ない

体力を使い果たした状態での食事は危険だからな…」

 

「んぅ…てーとくの口移しなら大丈夫デース」「ちょっと俺には難度高いわ」

 

 

ぐったりしながらパチっと目を開け

ぶっ飛んだ事を言い出す金剛をあしらって

こちらもベッドに放り込む

 

「はい、おやすみ」

「ちょっ!ホントに放り出すのは無しデース!もっと優しく接してくだサーイ!」

 

「そんだけ騒げりゃあ十分だよ」

「あっ…提督にお姫様抱っこされたいが為の計略なんかじゃないデース!体力を使い果たして倒れただけであって」「はいはい、計算高い姉だこと」

 

純粋に頑張ってくれた大丈夫ちゃんを見習いなさい全く…

 

さて、今日の執務も金剛型二人を犠牲にして終わった、いや、実際は金剛は演技だし

榛名が赤疲労になるだけで終わったが

 

「…いや、赤疲労も本来ならあり得ないからなぁ…動けなくなるレベルで疲労困憊ってことだし…」

 

それにそうなると間宮羊羹で一度戻しても蓄積した疲れが取れないせいですぐに黄色になってしまう

しばらくはしっかりお休みだな

 

「昼食とってから遠征隊のみんなの艤装メンテ、資材量と鉄鋼材入荷の確認と…廃油と切粉の引き取り業者さんにも連絡しないと…」

 

提督は今日も忙しい

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……

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