翌朝
「今日の遠征任務は……
陽炎、不知火先導か…陽炎もこないだの台風で相当疲れてただろうし、調子を確認しとくか?」
ずっと雨やら風やらがひどく
なかなかリフレッシュになるような天気の日がなかったが、落ち着けているだろうか
881帰りの艦娘達とは違うが
陽炎も移動したての艦娘、打ち解けられていないメンバーの中で、ホーム感のない鎮守府で
くつろげるはずもない
「ちゃんと休息を取れているか心配だし」
言い訳のようにつぶやきながら
執務室を出て、
艦娘寮の駆逐艦寮に連絡を入れる
寮母…ならぬ雷が応じてくれたので
駆逐艦寮を訪問する
「…失礼しまーす……」
そもそも寮監に許可を取っていないと提督という身分すら何の役にも立たない艦娘寮の訪問
鎮守府が職場とするなら
寮はいわば彼女達の家なのである
そんな所に職場の(形式的)上司なんてのが来た日には気も休まらない
故にこそ、最近忘れられかけているけど
公務員扱いな提督はちゃーんと許可を取るのである
『艦娘の扱いは所属鎮守府の提督に一任される』という条項のせいで誤解されたりするが
本来提督は艦娘を用いて海域を攻略するのに必須ではなく、『心柱』の縛りを用いた
艦娘制御用の首輪であり、また
出力のブースターなのだ
改や改二を無視して、最高練度の半分程度の力でもいいなら艦娘は提督を持たなくても活動できる
心柱によって艦娘が提督にリンクするのは、『提督命令』を使って
艦娘の反乱を防ぐ
また、人間が指揮を執ることで
高度に戦略的かつ広域的な連携を取るため
心柱は提督(またはそれに代わるもの)への信頼度によって艦娘の能力を引き上げるもの、として知られているが
それはあくまで副作用のような扱いで、本来の用途は忠誠心を刷り込み、命令を聞かせるための鎖と首輪であることに変わりはない
………と、881研でみた資料には書かれていた
扱いとしては危険な兵器に緊急停止ボタン付けておく、程度の感覚なのだろう
艦娘を提督が統制し、提督を大本営が支配する、公務員とは言うが
自衛隊そのものが軍という名前に変わったというだけではない、名前に引っ張られてなのか
ガチ軍派だっている…というか
そういう老害どもが上に居座っている
どこでもそういう老害どもはいる
という事だろう
まぁそれはそれとして、
881で得た情報はそんなものだけじゃない
新型追加艤装の案には『精神的な結びつきのみならず、物理的な形にすることで、より心柱の副作用による能力向上を強く吐き出す』アイテムの概要や設計が書かれていた
が、やはりというか何というか
[なんかロマンチックなのか
[心柱の作用を強めるせいで提督に対する意識が歪む可能性もある上に普段の出力は逆に下がっちまう、しかも艦娘側にもかなりの負担が掛かるせいで
使用可能なのは最大練度級の戦艦がギリギリ
これのどこに実用性があるんだ?]
[………軽巡には…?ダメなの?]
[ダメです、形しか見てなかったみたいだからはっきり言うけど、最大練度の戦艦でもなきゃ艦娘側の体が持ちません]
まぁ、勘の良い提督諸氏は分かるかもしれないが、アレのプロトタイプだ
……あ、話が逸れてた
「…まず、陽炎を尋ねないと」
陽炎型の部屋にたどり着くまで、
しばらく迷って事は秘密である
「陽炎?いるか?」
陽炎がいる筈の部屋の扉をノックして
声をかける
「先輩っ!?」
「…提督と呼べ提督と」
「待っていま入っちゃダメ!」
「……おう、まぁ大体わかった」
扉越しの声と同時にバタバタと騒がしい気配、陽炎と不知火が何かしている……不知火の方は動きが遅いな、嫌々やっていると見えるところから見るに、部屋の片付けあたりか?
…まぁ、待っておく
実に40分を要したお片付けタイムを終えて、今度は化粧タイムに入ったらしい
俺が化粧なし/ありを指定するわけでなし
向こうも心構えやら身だしなみやらという意味で化粧している可能性もある
多少待ち時間が伸びた所で拘泥はしない
「せんぱい、まだいる?」
「おう…いるぞ」
「……ごめんね、待たせちゃった」
ガチャっと扉を開けながら
ひょこっと出てくる陽炎
「いや…今来た所だ」
「くすっ!…結構待たせちゃったのに
今来たって、先輩」
流れるような動作で俺にくっつきながら
笑う陽炎
「別にいいだろ?今来たんだよ
さて、今回の訪問はお前の調子をみるためのものだから、あんまり目的がある訳でもなくて…」
「えっ?…せんぱい、もう帰っちゃうの…?」
涙目になる陽炎
お前そんなキャラじゃなかったよな?
「せんぱいぃ〜」
「ええい泣くな!喚くな!
ついでに化粧が崩れるから頬を擦るな!」
くっついてくる陽炎を安心させるために
まずは強く抱きしめる
「ふぇ?」
「ほら、落ち着いたかな?陽炎
……まったく、なんで俺がこんなことを
まぁ良い、陽炎の調子は…問題ないと判断した
うん、判断した」
「先輩!」
きゅっ!とひっついてくる陽炎
それと同時に、開きっぱなしだった部屋のドアの奥から、冷たい声が聞こえる
「随分と姉さんと仲が良いんですね
ロリコン司令」
「俺はロリコンではない」
「その言葉は姉さんを剥がしてから行ったらどうですか?」
「………」
俺は陽炎に視線を向けるが
(ふるふる)
拒否されてしまった
「積極的に剥がそうとしないあたり
ロリコンの匂いを嗅ぎ取れるのですが」
「ほら、離れて陽炎!」
「
「聞こえてるぞー?離れろ」
語調を強めて
あまりつかいたくないが、
このままでは埒があかないために
使わせてもらう
艦隊司令としての提督の特権
そう、
心柱に干渉して艦娘の能力を制限、向上する
いわば回数制限のない○呪だ
とはいえ、多用、濫用すれば心理的ハードルの低下や反感を招きかねないので
天龍の時の様な退っ引きならない事態の時のみ使用を許可する、という制約を自分に課している
命令された陽炎はビクッ!と体を震わせて、涙目でこちらを見上げながら離れる
「すまんな…
呟きながら振り返り、不知火を見遣る
「お前も今日は遠征出撃だぞ、
しかも10時から」
ちなみに、今の時刻は9:10
余裕で間に合うくらいだが
そろそろ準備を始める頃なのは確かだ
「はい、把握しています、ロリコン司令」
「ロリコンじゃねえ、でもまぁ把握してるのならそれで良い、お前なら慣れた航路だ
心配することもない」
「了解しました、司令」
「先輩…」
「姉様を構ってあげて下さい」
「「えっ??」」
陽炎の背中を押す不知火
押し出される陽炎を反射的に受け止めて
「危ないだろ、不知火!」
「ロリコンの司令官にはちょうど良いでしょう」
「…
おい、そこの陽炎
若干嬉しそうにするな
「離れなさい陽炎、俺はちゃっと不知火と話をつけるよ」
笑顔で語りかけると
陽炎はなぜか怯えた様な顔でカクカクと頷き、離れた
「不知火、正座」
「…何故でしょうか、
不知火に何か落ち度でも?」
「正座」
「?」
「あくしろよ時間なくなるだろ」
「…あくまでそう仰るのならば」
正座した不知火相手に俺は強く息を吸い込み…
「人の背をいきなり押すやつがあるかー!!」
叱りつける
「しかし、十分に安全を」
「しかしもないもない!」
説教は30分を超えて
ドックへの移動中にようやく終わったのだった
600話記念番外編は
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テンプレ転生者(ヘイト)
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戦争が終わった後の話を!
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しぐ……しぐ……