戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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ロングタイムノーシー

陽炎たちの遠征が開始された後は

言い訳で誤魔化していた積み上がる書類に手をつける

 

「…ばぁぁぁか、何考えてんだよ

こんな時に作戰とか参加するはず無いだろ…資材の調達もままならないってのに」

 

貯蓄が一時期3桁まで行ったんだぞ

もはやグロ画像だよ

 

「なんでこんな時に大規模な掃討なんて計画するんだよ…

面倒な

 

秋刀魚はどうした今年の秋刀魚は」

鰯も集めるんだったか?

 

「…………秋刀魚漁はまかせっきりだったしなぁ」

 

そもそも海域の制圧に忙しかったし

秋刀魚は地域振興に繋がるが

それで本業をおろそかにはできない

必然的に今回の秋刀魚漁はお休み…正確には自主的判断に任せて

秋刀魚を取るもよし、ガチで狩りに行くもよし、とお達しを出したのだが

 

何人かの艦娘は秋刀魚を優先したようだが

そもそも秋刀魚取り装備は戦術が限られることもあって実戦的な装備とは言い難い

 

高難易度のエリアではガチ戦装備を使わざるを得ないという関係上、今年の漁獲高は不漁としか言えない

 

そもそも大型漁船などと違って艦娘の積載能力はそう高くない、ゆえに秋刀魚もそう10尾、20尾と獲れる訳ではないのだ

 

「今日の入荷はサス材は無し、アルミ材はφ12×2000が2本…」

 

資材はともかく、

材料の方も厳しくなって来ているなぁ

コレが深海棲艦の計略の成果…厄介だ

 

冬場には物価も上がるし

一応対策を考えておかないと…

 

「はぁ…」

ため息をついて、思考を入れ替える

現状の懸念事項は

 

「各地の深海棲艦の動向、

 

海域を奪われた深海棲艦は、必ずと行って良いほど反攻作戦を展開する

…それに、場所はアイアンボトムサウンド、深海棲艦の温床そのものだ」

 

無尽蔵な湧出に押し負ける

なんて可能性だってありえる

できるだけ早期に潰すか、圧倒的な力を持つ提督達に応援を要請するか

 

周囲一帯を治める連中全員を倒さないと

アイアンボトムサウンドに平穏を取り戻すことは出来ない

 

「戦姫だけじゃない…鬼、姫級はまだいる、あの、忌まわしき海峡に」

 

俺は拳を握って、開く

 

「所詮前線に出られない俺、

仕事はメンテと書類処理どまりなんだ

 

せめて、艦娘のみんなが、全力で戦えるような環境を整えないと」

 

俺は、全員の艤装の点検を決意した

 

「神巫提督、いらっしゃいますか?」

 

執務室の扉がノックされる

「…入って」

「失礼します」

 

扉を開けて入って来たのは…

里見君

 

「提督…蒼羅さん、定期検診、ちゃんと受けてくださいね?

特に最近は戦闘に手を出している

体が不安定になっていてもおかしくありませんよ?」

 

「……確かにね、前は妖精も倒れたし

俺の腕の再生回数もかなりかさんでる

次は何があってもおかしくはないな」

 

「初回検診という訳でも無し

特に変わることはありません、期日が明日ですので、それを伝えに来ただけです」

 

それだけ言って、踵を返す里見君

 

「…了解した、行くよ」

扉に声をかけながら、再び思案に入る

 

やる事は多いなぁ

 

(ご多忙な提督さんをお助けするのが

私たち、秘書妖精のお仕事です!)

[ぴっびぃ!]

 

白タコヤキにのって秘書妖精が飛んで来た

今まさに閉じるという所の扉の隙間に入り込み、ギリギリですり抜け…られてない!

秘書妖精だけはすり抜けたけど

白タコヤキが弾かれた!

 

「おいタコヤキ、大丈夫か?」

「ぴぎぃ、ぴっぴっ」

 

優しく掌に乗せて…おい

俺の指を食いちぎろうとするのやめろ

 

「ぴっ??」

「えっ??じゃねぇよ!

自然に人の肉を食う輩はこの鎮守府にお前しか居ないからな!?」

 

「ぴっぴぎぃ?」

「ホントにだよ!」

 

白タコヤキが相変わらずすぎて泣けてくる

お前空母棲鬼にくっついて行ったんじゃないのかよ、なんか成長してこいよ!

 

[ま、まぁまぁ、仕方ないって]

[練度は上がってるんじゃない?]

 

ひょこっと出てきた瑞川の二人組

 

[練度は上がってるのかなぁ…]

「よし、お前ちょっと演習場裏な?」

 

[ぴりぎきいっ!?]

だからカツアゲじゃねぇよ

執拗に疑問を投げてくる白タコヤキをひっつかんで、執務室内に放り投げる

 

「ぴっぎぎしぃ!ぎぴっ、ぴにぎぎいっ」

あっそうだ!あのっ、榛名さん

か、なるほど、お前榛名の監視忘れてたな?こないだ空母棲鬼に頼んでたんだが

 

[モラル観低そうな大人の空母系って

空母棲鬼しか思い浮かばなかった、というせいでもあるけどな]

 

[モラル……本人が聞いたら怒りそうなことを…]

[黙れ夜戦ガール]

 

[実際問題下手な空母に頼んだら

この変態!の一言と共に百二百の打撃を受けていてもおかしくない

それは彼女らが善性であり、かつ一般社会と関わりのある、『一般的思考』つまりは『常識』と『良識』を知る存在だからであり、その『常識』『良識』を持たない艦で

 

榛名に気付かれないで監視できる能力を持ち、監視任務なんてのを引き受けてくれそうな

空母系艦娘というと、

 

空母棲鬼かレ級の二人だけだ

報酬次第ではやってくれそうだった隼鷹ももういないし、レ級は性格的に怪しい

 

というわけで空母棲鬼に頼んだわけ…]

[はいはい長い言い訳ありがとう]

[対応が辛辣だ!]

 

川内に切り返されつつも俺は白タコヤキを窓の外に放り返すことに成功

次いで秘書妖精から書類を受け取り

 

「よし!鳳翔さん実戦出撃だ!」

書かれていたのは資材の収支、

このままの計算ならボーキも少しは余る

鳳翔さんの連続出撃で艦載機の練度上げを図ろう

 

「………白タコヤキも同行させるか」

 

しばらくブラック日程が確定した白タコヤキは

 

「ぴっぎぃ……」

窓の外側の縁に寝転がるのだった

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……

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