窓を開けて、手に戻ってくる白タコヤキを放り投げる
「ほら!お前がネームドになるんだよっ!」
「ぴぎぎぎいっ!」
俺の手から飛び上がって離れたタコヤキは、そのまま放物線を描いて落下した
どうも滑走が足りなかったようだ
「………まぁ、いくら精鋭だからって
たまにはそんな事もあるさ」
俺は再び白タコヤキを捕まえて
とば…さない
「空母棲鬼のところ行くぞ、
お前の運用についての話がある」
「ぴぎいっ」
タコヤキは今まで聞いたことがないほど高く鳴いていた
そのとたんに、扉が折れた
圧力的な意味でへし折れた
「マジか」
「提督?そこに白タコヤキ、いるわよね?」
「はい」
入って来たのは、空母棲鬼本人
「貸して」
「はいどうぞ」
「ぴっぎゅう?!」
有無を言わさぬ圧力で手を差し出し
俺はそこに白タコヤキを乗せる
ナンデ?!とばかりにこちらを見上げる白タコヤキの視線はガン無視させてもらう
「…この……セクハラタコヤキーっ!」
ぶん投げた…執務室内壁にシューッ!超!エキサイティング!
「アンタは!何で!毎日毎日!
何か一つ問題を起こすのよっ!」
「ぴぃぃぎむきゅっ」
しーらねえっとか何言ってんのお前
あと何をしてるの
お前艦載機だろ?
セクハラとか何やってるの?
それは脂ぎったおじさんの特権だよ?
三十〜五十代のおじさんとかがメイン層だろ
なんで10代いってるか怪しいタコヤキがセクハラするんだよ
「提督、聞いてよ…このタコヤキ
毎回私のスカートの中とか谷間とか意味不明な所に着艦しようとするのよ…」
「格納庫(意味深)かよ…」
軽く済ませるような話題じゃなかったようで
本当に辟易した表情だ
ずっとセクハラに明け暮れていたのかコイツ
「お前の成長はその方向性じゃないだろ…それは触手先生の成長ツリーだぞ」
「ぴぎぬひぎいいっ!」
触手じゃないっ!だと?
お前がやってることはまさにそれなんだよ
[部下は上司に似るって言われるけど?]
[俺はこんな輩ではないが…]
[……本当に?]
[本当だ!]
[自信ある?]
[あぁあるとも]
[じゃあキスして]
[わか……おい!嵌る気だったろ!]
[チッ…バレたし…]
[夜戦禁][わーっ!聞こえなーい!]
[まだ何も言ってないんだけどなぁ]
突然子供っぽく騒ぎ始めた川内に苦笑しながら、空母棲鬼に返事をする
「コイツの矯正が必要か?」
「…あればいいけど、実際できるの?」
「できる、というかするよ、
まぁ見てなさい」
まずは工廠に移動して那珂ちゃんの艤装を置きます、ネジ一つまで分解します、
わざと潤滑油やマーカーの赤インクを派手に散らしながら四つ並べた艤装全部を分解して
ゆっくりと白タコヤキにバールを向けて
「つ、ぎ、は、お、ま、え、だ」
「ぴぎぎいいいっっ!」
[ひうっ][きゃぁあっ!]
最高速ですっ飛んで行った白タコヤキは
十メートルほど離れて立っていた空母棲鬼の服の右袖に入る、これでもしスカートの裾にでも入ろうとしたら容赦はないと分かっているのだろう
その動きに迷いはなかった
あれ?なんかタコヤキ以外の声も聞こえた気がするが…気のせいか?
[気のせいじゃありません!]
[…すまん、五月雨
正直君が怖いの苦手というのを忘れていた
川内と瑞鶴はそうでもなかったみたいだけど、五月雨は苦手だったね、ごめんね]
誠心誠意謝ることにした
[そうよ!五月雨をあんなに怖がらせて!事前告知くらいしなさいよ!]
[…瑞鶴?お前が怒ってどうする?]
それにこの手の亜種たかしくん問題は慣れたものだろ?そこまで怖くした覚えもないし
[うるさいわね!工廠が暗いのが嫌なのよ!早く執務室帰りましょうよーっ]
叫び声がだんだん悲痛になってくる
[つまるところ……]
[[怖かったんだ]な]
[うぅ〜っ!]
涙目の瑞鶴…なんかクるものが…
いや違うぞ、
俺は涙を舐めるタイプの変人じゃない
純粋にこれはこれで可愛いと思っただけだ
[純粋にそう思えるなら相当イかれてるよ?提督]
[お前なぁ…なんでそんな風に俺の心を折りにかかるんだよ川内!]
[だって事実を指摘してるだけじゃん
そんなことより暗いから夜戦時だよね?]
[工廠の天井の電灯をつけてないだけだっての…外は昼間だよ]
「提督、お見事」
川内と言い争っている最中に
簡素な一言とともに拍手が聞こえる
「…空母棲鬼、ありがとう]
拍手を受けるとは久しぶりだ、
どのくらいかというと…年単位かな?
「提督自身の技量…というかそのセンスには惜しまざる拍手が贈られるべきよ
まさか物理で脅すなんて原始的な手をここまで的確に効かせるなんてね」
「あんまり怖くなかったと思うんだが」
[あぁもう!白状するわよ!怖かった!]
[はいはい、ごめんね瑞鶴]
そっと目を閉じる瑞鶴、
何を期待しているのかさっぱりだが
「まぁ、それは置いといて、執務室へ帰ろうか…白タコヤキ、お前は演習場裏待機な」
「ぴぎいっ」
心底嫌そうだが自業自得、そこに容赦はない
「飯…はしばらく先だから…」
「執務といっても、今日はあんまり仕事もないのでしょう?」
見すかすような視線をこちらに向けて
空母棲鬼が微笑む
「よくわかったな」
「だって、本当に忙しい時は秘書妖精が扉を閉鎖しているもの」
「あいつそんな事してたのか!?」
驚愕だった…
(お呼びですかー?)
「お呼びじゃないから帰ってなさい」
(はーい)
呼び出して置いてなんだが
さっと踵を返すや否や、秘書妖精はその場から消え去っていた
いつも思うが謎の高機動はなんなんだ
「司令官さん!」
時津風と電と…秋雲の三人が単縦陣で突撃してきた
「時津風ちゃんのお部屋のおはなしなんだけど…なんで一人だけ別室?」
「…それいったら秋雲も夕雲型の部屋にいるだろ」
「うっ…それはほら!アレよ
艦型が混乱してたから…自分では夕雲型のつもりだったし…」
素早く切り返すと今度は電が前に出てくる
「艦型が同じ艦娘は基本同室だったはずなのです、陽炎型の時津風ちゃんが違うお部屋なのはおかしいと思うのです」
「そもそも時津風は憲兵隊所属だ、ウチ所属の艦娘として扱いはしないよ」
そもそも時津風はどうなんだ?と視線を送ればそこには
自分はどうすればいいのかわからなくなって混乱している時津風
「おい、二人とも…よく見ろよ
時津風の方が困ってるぞ」
「…え?」「ふぇ?」
「しれー…」
結局全員微妙な表情で固まってしまう
どうも内々で話が纏まらないうちに俺のところに来てしまったようだな
「まぁ、部屋割りは当人の希望で入れ替えもできるし、今日帰ってきたら陽炎たちに聞いてみるよ」
「なのです!」
「なんだ早とちりかぁ〜」
「まぁ秋雲に限っては他人事じゃないしなぁ、陽炎型なのか夕雲型なのかも不明瞭だし」
秋雲は暫定的に夕雲型の部屋にいるが
今後の希望次第では陽炎型の部屋に移動することもある、艦型もあって
他人事とは思えないだろう
電は…心配性に優しさが5:5で混じったような性格だし、まぁ電主導の暴走だろうなぁ
たまにはそんなこともあるさ…
俺は執務室に帰り
健康診断を受けに医務室へ向かうのだった
600話記念番外編は
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過去編軍学校
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過去編深海勢
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裏山とかの話を
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テンプレ転生者(ヘイト)
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ストーリーを進めよう
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戦争が終わった後の話を!
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しぐ……しぐ……