戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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相互理解

「侵食を抑える可能性…ねぇ」

 

「はい、それをお教えしましょう」

「いらん」

 

「…え?」

「いらんと言っている、魔法少女ごっこ(ぼくとけいやくして)なら駆逐艦か軽巡艦相手にしていろ

「ええぇっ!なんでですか!提督っ」

 

[提督…私たち、邪魔なの?

いちゃ、いけないの?]

 

[そんなわけあるかよ、俺の艦娘は誰一人邪魔なんかじゃない]

「俺は魂内の艦娘との関係が()()でな

川内をいまさら引き離せないのさ」

 

「ていとくっ!死にたいのですか!」

「いつ死ぬかの違いだよ、それに

深海棲艦相手にも話せばわかることがわかったんだぞ、それなら一人分の人生くらい掛けても文句は言われ無いだろう」

 

「[ダメ!死んじゃダメ!]」

鹿島と川内の声が重なる

 

「提督、私は貴方に生きていてほしいんです、嫌われているのは知っているけど、それでも

私は貴方のことが、好きなんです!

好きな人には出来るだけ長く生きていてほしいんです!」

 

[提督!絶対死んじゃダメだからね!]

 

「……おいおい、実質一択じゃないか

ダメだぞそういうキュー○え問答は」

 

「提督!」

[ていとくっ!]

 

[話は聞かせてもらったわ!]

[あのー…司令官さん]

[瑞鶴ちゃん、イタいからやめなさい]

[久しぶりだけど…ちょっと難しそうなお話中?]

 

「提督」

声とともに、ガチャ!

と扉をあけて普通に入って来たのは

 

大和

 

「提督、なぜ隠していたのですか?」

「…なにをだ?」

「とぼけないで下さい!私たちの使用が、いえ、存在そのものが提督を蝕む毒だなんて!そんな事…何一つ知らずに、」

 

大和はそのまま泣き出してしまう

 

「おい大和……鹿島!お前のせいだぞ!」

《貴方のせいよ!》

大和と俺以外の声が揃った

 

特に負担の大きい大和撫子でしばらく使われていた大和故に、責任を感じてでもいるのだろうか

「提督は…いっつも…」

 

ぎゅうっ!と制服の裾を掴む大和

同時に俺の左手を引っ張る鹿島

 

「もう何でもいいから早く聞いて下さい!」

「……」

 

「提督…お願いです」

鹿島の声など届くはずもないが

続く大和の涙目が効いた…多分

 

ちなみに三人娘+お嬢(はっやーい)おとなのおねえさん(第三砲塔)は黙り込んでいる

 

なお、陸奥だけは単純に陸式弾を使う限りにおいては負荷は無いのだが…NX(ネクスエッジ)を使うと腕が吹き飛ばされてミンチになるからなぁ

その再生で負荷もかかるし

 

サミーはまた泣きそうだし

瑞鶴は怒りすぎて髪が重力に逆らっているし川内に至っては

『夜戦封印』と大書した掛け軸を掛けている…どんだけの覚悟が要るんだそれ…

 

[提督!私たちは本気だよ]

[川内…お前それは無理だろ…]

[本気って言ったら本気なの!最近夜戦し過ぎたからちょーっとお休みしようとか考えてた所だし!]

 

[別に夜戦してないんだが、

瑞鶴は…大丈夫かお前、髪型崩れてんぞ]

[うっさいわよクズ提督!ばかばかばかばか!侵食ってなによ!なんで体の負担を隠してたのよ!]

 

「それ今言う?…まぁマジレスすると

心配かけたく無かったから…かな?」

 

[逆に心配かけてどうするのよ!

ああっもう!このバカ提督!

とりあえず今後しばらく接続切るわよ!]

[あっちょっと待って]

ブツン!

 

なにかが切れる音と共に、大きな喪失感

[瑞鶴…おい、瑞鶴!]

[無駄ですよ司令官さん]

 

瑞鶴の反応はなく、聞こえるのは五月雨の声

[私たちの魂の接続は、ほかの艦娘の皆さんの『心柱』の繋がりのように制御されていません

それが悪影響をもたらすなら…

私たち自身の意思で、接続を切るしか…]

 

「五月雨!」

[今まで負担をかけていて、ごめんなさい、でも、まだ私たちを許してくれるなら

私が建造された時に会いましょう]

 

再びの切断音と共に、

五月雨との接続も失う

 

[提督、ごめんね…]

[川内!お前は行かせないぞ!]

 

「侵食の軽減方法!鹿島!」

「!!…っはい!」

 

鹿島が突然笑顔になって、説明を始めた

俺は魂内で接続解除を始めた川内を強引に繋ぎ止めながらその話をきく

 

「根本的に魂は精神エネルギーで構成されていますが、その構成は均一の性質を持ちません

それは同質の精神エネルギーを吸収する性質を示し、早い話が

隣接する魂に融合、吸収し、

置き換わります」

 

「鹿島!話が長い!要点で頼む!」

 

「んふっ、わかりました、では

一言だけ、

食われるのは隣接する最も弱い魂です!」

「了解!要は俺が弱いから食われるんだな!」

 

なら魂を強化すれば良い

艦霊に飲み込まれないように

 

「聞いたな川内」

[聞こえたけど!それは結局提督に強い負荷がかかっちゃうでしょ!]

「その程度の負荷で音をあげるような

弱い提督だから悪いんだよ

俺が強くなればそれで良いのさ!」

 

器の不足が原因ならば

俺が器を強化すれば良いだけだ

もっと面倒な問題なら話も違ったが

それだけだ

 

「精神力を強引に引き上げる方法といえば」

 

強いストレス…そして、その源(鹿島)

都合よくここにいる!

 

「提督、これは貸しですよ?」

「知るか!」

 

精神突入

 

無理矢理に引き出された出力を使って

川内との接続を引き寄せ

 

「ちょっ!まってそれは」

「お前の意見は…求めぇん!」

 

太い声とともに魂を捕捉、

戦艦の主砲からの負荷にも耐えられるのだ

軽巡ごときならば軽いもの

 

瑞鶴と五月雨の接続が切れたのが却って良かったのか、一気に川内の魂を引き寄せることができた

 

「これで…よし!」

「あっ……」

 

その瞬間、世界に色が溢れた

 

「なんだ…これ」

「……なに…」

 

川内の心が伝わってくる

記憶、思考、感情

 

ありとあらゆる想いが俺に流れ込む

同時に、

 

俺の中の灰色や黒の記憶が、意識が感情が、思考が、現象という形を失い

ただ莫大な情報の羅列となって川内へ流れていく

 

そして

 

「……」

「……」

 

「ただいま、提督」

「おかえり、川内」

 

魂内で手を取り合い

現実へと帰還を果たした

 

「…あっ、おかえりなさい提督」

 

「チッ!桑嶋じゃねえか」

「あっ!ひどいですよそれ!せっかく手を貸してあげたのに」

 

「お前の手なんか貸されてねぇわ!」

「…あっ、なるほど…はい、そういう事ですね…」

 

急に可哀想な物を見る目になった桑嶋に

とりあえずいうだけ言って落ち着き

 

制服だけ脱いで大和を帰し

自室のオフトゥンにダイブした

 

約5分後に、扉の裏から静かな声が聞こえた

 

「………はぁ…良いですか?

これは独り言ですが…

その過剰反応は過大な精神的影響による一時的な精神の不安定化が原因ですので、明日あたりに自己嫌悪に陥ってもあまり気にしないで下さいね」

 

柔らかな声は、それだけ言い残して消えた

 

翌朝

 

 

「や ら か し た」

 

何言ってんだ俺……

鹿島だからってキツく当たりすぎた…

過去と今は関係ないでしょ…

 

 

はぁ

 

[提督?あんまり気にしないでって

鹿島さんも言ってたよ?]

「そんなのは聞いてない…きっと」

 

[嘘です、聞いてたよ、だって感情を共有してるから分かるもん]

[What?]

[いやホワットじゃなくて、

ほら、魂の直接接続なんてするから

意識が混ざっちゃってじゃない?]

 

[…おう]

[その時にね、接続どころか

ちょっと融合しちゃったの、お陰で霊的(資材)エネルギーがどうとかは

ほとんど関係なくなったけど

お互いの意思とか思考がお互いに

流れるようになっちゃった]

 

つまり、なに?

隠し事はオールウェィズ不可能?

[隠し事なんてする気だったんだ?]

[いえなんでもないですハイライトつけ直してて下さい]

 

布団の中で擬似ピロートーク(一人)

完全に痛い人だな

 

[ほら提督、起きるよ]

「…はぁ」

 

起き上がった俺はまず枕元を振り返り

 

正座のまま寝ている鹿島に驚く

「何故そこにいっ!」

「……んっ……あぁ提督 ふぁぁ〜

ん!すいません」

 

眠たげな雰囲気の鹿島はさっと立ち上がり

 

「いたたた…脚が…」

痺れてしまっているようで

生まれたての子鹿もかくやのガクガク状態だった

 

「ほら、落ち着いて」

「ありがとうございます」

 

俺は鹿島に手を差し出し

鹿島は俺の手に掴まって姿勢を安定させる

 

「………もう、大丈夫です」

 

「そうか…世話になった、あと

ごめんな」

「……何のことでしょう?私は提督に謝られるようなことはされてませんよ?

お礼なら異動願い一枚で手を打ちます」

 

「呉からか…大将大丈夫かなぁ…」

 

「大丈夫ですよ、あの人なら

最近龍驤さんも着任しましたし

私は戦闘方面ではからっきしですからね

 

交渉ごととか外交であれば得意ですよ?」

 

微笑を浮かべながら俺の手を取る鹿島

「今日は長年の夢が叶った記念日ですから、一緒に行きましょう!うふふっ♪」

 

ちなみに、その日の夜には

一枚の異動願書が鼎大将の毛根を直撃した




鹿島さんと和解!

まぁ代償は大きかったですが
ついでに川内とも進展!(なんかちがう方向性)
精神の融合ってむしろ悪化してる…してない?

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……

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