戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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自身の言葉

「皐月が着任した…のはいいんだが

瑞鶴と五月雨をどうにかしないと…」

 

俺は侵食されることで資材エネルギーを得ていたからギリギリ大和撫子を支えていた

陸奥+瑞鶴+五月雨+川内の供給で

大和撫子の起動に釣り合うくらいだ

 

消費が増えると追いつかないし

供給が減った今、真っ当に

大和撫子を振るうことも難しいだろう

 

「…いや、儀装に頼りっぱなしになってはいけない、それに…侵食はいずれ

俺の自我すら蝕んだ筈だ

力のために意志を捨てることがあってはならない、意志無き力は暴力に過ぎない」

大和

「…………大和」

「はい」

 

扉の前で待っていたらしい

大和を呼び

 

「入ってくれ」

「はい」

 

執務室に入ってもらい、

 

「話をしようか、大和さん」

「…………」

 

大和は黙して語らず、静観の姿勢だ

 

まず、今するべきことはなんだ?

[まずは鎮守府の再統制と

榛名さんの制圧、五月雨、瑞鶴の復活

侵食の低減方法を見つける

 

こんな感じかな?]

 

「あぁ、まずリンクを減らすって方法は役に立たないし、魂を強化するのは食われる役を誰かに押し付けるだけ、結局根本的な解決にはならない

 

どうすればいいんだろうな…」

 

「提督」

「…ん?なんだい?」

「提督は、私をつかうとき、なぜ説明を下さらなかったのですか?」

 

大和は沈痛な面持ちで語り始める

が、次に放たれた一言は

全くもって予想外だった

 

「私は提督にとって負担だったのでは

ないですか?」

「……………は?」

 

「だって私は多量の資材を消費して」「お前は何を言っているんだ?お前が俺にとって負担?あるわけないだろ」

 

「だったら!」

「俺の知らないことをどうやって説明するんだ?そもそも俺はお前達の侵食のことなんて最近…いや

一年前に知った程度だぞ?」

 

逆に艦娘からの侵食についてなんて題目の研究が存在したことが驚きなのだ

 

俺にとっての関係を表すなら川内はパートナーだし瑞鶴は後輩だし、五月雨は…娘?だ

陸奥は職場の先輩に近いが

 

そこに負担がどうのという話は介在していない

 

それを大和に説明したら

 

「じゃあ…私はどうなんですか?」

と涙目で返された

「………ローソン店員?」

 

「ひどいです!わたしだけ職場ですら無いなんて!」

「い、行きつけだから!週4で会ってるレベルだから!

 

「たかだか数分のお付き合いで…職場の先輩に勝つなんて無理ですぅ」

「ほら、シフト入れ過ぎは過労を招くから…」

「ていとくっ!」

 

責めるような視線を向けてくる大和は

俺の襟を掴み

「なんでわたしだけ他人なんですか!」

 

ガクガクと揺すりながら叫ぶ

 

「うぉぉあおぉおあ…う、うぇぇ…」

 

「ああっ!提督!ごめんなさい!」

「う……かはぁ……ふぅ」

数十秒に渡って揺すられるという拷問の果てに、やや息を乱しながらも並行を取り戻した俺は

大和をなだめる

 

そもそも大和は高嶺の花であって

距離感こそが重要なのだ

と説明してみた…のだが

 

「高嶺の花なんかじゃありません!」

と力説されてしまった

 

目が据わっているのは気のせいか?

 

[多分気のせいじゃ無いよ…はぁ]

[なぜため息をつく、川内]

 

「聞いているんですか!提督!」

「うおぉぉ」

 

また揺すられて…ぅゔ…

 

「いいか大和…真の良妻とは…暴力に訴えたり、強引な手段で強要するのではなく…繊細かつ大胆に思考を制御し、操られる本人が操られているという自覚なく…大和に依存している状態を作れるものを言うのだ…具体的には鳳翔さん」

 

「ほ、鳳翔さんですか?」

「あれこそ良妻賢母の見本だよ」

 

鳳翔さんごめんなさい

大和が怖いからちょっとだけ

生け贄になっててください

 

鳳翔さんへと弟子入りをガチで検討し始めた大和の横をすり抜けて

執務室の扉へとたどり着き

 

「どこへ行くんですか?」

 

奇妙なエコーと粘着質な声に引き止められる

「…お、お前と一緒に、間宮に行く準備だぁ」

「一枚分のチケットでですか?」

 

ツカツカと近づいてくる大和

その表情は明るかった

 

「はぁぁぁぁあっ!」

「ぬぉぉあああっ!」

 

艤装なしとはいえ、

戦艦のパワーで締め上げられてはたまらない

俺は即座に脱出を試みたが叶わず

 

大和にゴキゴキと骨をやられかける

「自分の艦娘に殺されるとは…これも提督の定めか…」

「そんな事しません!なんて人聞きの悪い!」

 

ぷりぷりと怒る大和…

なお、現在進行形で骨をやられかけている状態の俺には頓着してくれない様子

 

「その…大和さん?

痛みで感覚死んでるから伝わんないけどさ…結構当たってない?」

「へ?…きゃぁあっ!提督のエッチ!」

「俺のせいか!?痛たっ!」

 

肩やったかもしれん…

反射的にうめき声が出る俺に

大和が心配げな声をかけてくる

 

「提督っ!?痛いですか?立てますか?」

「誰のせいだと…〜」

 

労わるような手つきではあるものの

元凶そのものである事に変わりはない

 

「だってぇ…提督…」

「なんだよ………」

 

「提督…最近わたしのこと見てくれないですし…」

しゅん、と俯く大和

 

なんだか急に悪いことをしているような

気分になった俺は

とりあえず俺の胸の前あたりに来た

大和の頭を撫でておく事にした

 

「あっ…ありがとうございます」

笑顔になってくれたようだ

 

俺が原因で表情を曇らせてしまったのなら

俺はその陰りを晴らすために行動を惜しむことはない…多分

 

「さて、俺は大和のことを負担になんて思ってないよ、ここまではいいかい?」

「…はい」

 

「俺は大和を大切にしているし、そこに鎮守府の他のみんなとの差はない、俺は人物に対して差別をしない」

 

「はい」

なにか少し悔しそうな声の大和

…なぜだ

 

「大和撫子の使用は確かに

大きな消耗も伴う、でも大和自身の協力もあって、消耗は大きく減じていた

だからそこまで大きな負担にもなっていない」

 

大和はこくん、と頷く

「なら、大和が悩む事はない

これで落ち着いてくれるかな?」

 

大和の背を撫でてながら

優しく言い聞かせる

 

そして

 

「そこで聞いてる榛名!入ってくれ!」

俺は強く声を上げる

 

その瞬間

がたっ!と扉がなり

数秒後に、遠慮がちに扉が開く

 

入って来たのは…やはり榛名

 

「すみません…盗み聞きとかではなく…」

「御託はいい、そんな事は気にしない」

言い募る榛名を遮り、

 

「私は気にしますっ!これでも女の子です!人並みに恥ずかしいんですから!」

 

バタバタしている大和を抑えて

榛名を迎え入れる

 

「どこから聞いてたのかも大体わかってる…俺の体の侵食の問題は…」

「存じ上げませんでした、提督の戦力に、そんな代償があったとは」

 

大和の体を離し、立ち上がる

 

「俺の体はボロボロだ、常軌を逸した戦力…というわけでもないのに、無駄に体を壊してしまっている、ね」

「提督…」

 

「………え?何ですかこの空気感

私ヒロインですよ?!」

 

またバタバタし始めた大和を抑えて

榛名に俺の状態を掻い摘んで説明するのだった

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……

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