「………私ハ…何処にいるの…
何ヲしているノ…」
ただ、暗い場所を彷徨う
力を貸してくれる艤装も、力の根源である心も…まるで動いてくれない
「…龍驤は行った…私ハ…ココで朽ちる方が良いノネ…」
かつてのヲ級としての姿から
人間、艦娘時代に近い容姿にはなってくれた…しかし、未だにこの身は深海の怨念に囚われたまま
周りを見れば辺り一面に転がる
無念と絶望を謳う黒いモノ
それらは私を捕らえ、
私を自らに同化しようとする
でも、それで良いのかもしれない…
私はもう、帰れない
「最後に…蒼羅に…会エタカラ…」
気づけば私の四肢には黒いモノがまとわりつき、まるで鎧のように、枷のように手足を覆っていた
「…終わるノネ…この…暗い場所デ…」
ゾッとするような寒気が私を絡め取り
深海の暗い意思が私を喰らう
「……さよなら…私ノ…蒼羅…」
turn dead
これは…掠れ行く自我の残した
最後の記憶…かつて人間だった頃の
幸せな思い出
「ねぇ、そら…あなたは寒くない?」
「大丈夫だよ?それより、ねえさんこそ薄着でしょ?部屋…父さんは僕が抑えるから、部屋にいなよ」
「無理よ、父さんは力も強いでしょ?
二人で一緒に外にいた方がいいわ」
「それもそうかな…、」
冬の寒さに身を震わせながら
姉弟は身を寄せ合っていた
「…昔ノ…私?」
「そうだよ、未来のわたし、
ずっと待ってた」
そう言って、
過去の私が私に手を伸ばす
「この世界に来たわたしは、
自分の意識から分離されていたの
八年前のあの日から、人間としての過去のわたしと、艦娘としての、この世界のわたしに」
『わたし』が四肢を覆う艤装に触れるとガタガタと震えながら艤装が崩れ落ちていく
「この世界はわたしが作った、
この世界にわたしは逃げ込んだ
…だから、私はもう、ここからは出られない、ここにいるのは『わたし』と『蒼羅』だけ…だから
あなたは未来に向かって
過去はわたしが持っていくから」
艤装が砕けた瞬間に手を離す『わたし』
その表情は明るかった
「…ソウ…貴方ハ、この世界にシカいられナイのね…わかったわ」
私は崩れ落ちる艤装から解放された脚で、雪を踏みしめて
「…ありがとう」
「うふふっ♪こちらこそ」
ぎゅぅ、と『わたし』を抱きしめる
「ねえさん!お姉ちゃんもずるい!」
「あぁ蒼羅、ほら来て♪三人ならあったかいわ!」
無邪気な笑顔を見せる幼い蒼羅を『わたし』と一緒に抱きしめる
この、鋼材と怨念でできた躯体に
蒼羅のぬくもりが流れてくる
「お姉ちゃん冷たい!体冷やしちゃだめだよ」
「あら?心配してくれるの?」
「うん!お姉ちゃんはお姉ちゃんだからね!」
笑顔でいいながら、
抱擁を強める蒼羅
全く、成長してよかったというか、このままの方が良かったというか…
「あぁ、もう!わたしの蒼羅なんだから!ゆずらないんだから!」
『わたし』が蒼羅を引き剥がして
今度は自分が抱きついた
……見てるとちょっと妬いてしまう
「あ、そうだ!私にお願いがあるの!」
「…なに?」
「わたしはもう会えないけど、私なら会えるでしょ?だからね、蒼羅にあったら、宜しくね!」
「……ふふっ♪承ったわ
じゃあ、また会えたら良いわね」
「うん、どうぞおかえりを
家の扉に入れば良いわ」
その一言で、ドクン、と動悸がする
そう、私達にとって
あの家はトラウマであり、思い出
そこには
紛れもなく
幸せな思い出も内包する
それが現実との扉、だなんて
なんとも皮肉が効いているわ
「えぇ、わかったわ…鎧袖一触よ」
そう、あの時ではなく、今ならば
流されるままだった暴風に
抗うことができる
「…待っていてね」
私は一息に扉を開き、
色とりどりの光の中へと飛び込んだ
turn up
「…行ったわね、…
でも、ちゃんと伝わってるかしら?」
わたしは私の影ではなく、
わたし自身が私であるということを
ちょっと心配ね
「クス…私が貴方であなたがわたし、
矛盾問題ね…」
笑いながら
蒼羅を愛でようと手を伸ばした瞬間に
「………っ!」
白かった雪が、黒く染まる
それは、世界全てを染め上げて
なお余りある、黒い雪
そして…蒼羅が来た
重く、湿った音が鳴る、骸と化した肉体から伝わる『死』から逃れるために
魂がここに流れ込んで来たのだろう
「でも、死んでしまうなんてまだ早いわ」
そしてわたしは一計を案じた
目の見えてない蒼羅に歩み寄り
声をかける、
「…あら、もうこんなところに
来てしまったの?」
ここからはお姉ちゃんタイム、
いっぱい甘やかしてあげるからね
side change
※ここからは別ストーリー
陽炎の日記
艦こ暦3年4月1日(月)
記:燈
私は今日、士官学校に入学する
国立の学校なのに、
試験が簡単なんて聞いている
…………それもそうか
両親は口減らしをしたいのだから、落ちるような所には受けさせないだろう
4月2日(火)
記:燈
面白い人と知り合った、
名前はかんなぎさん
……席が近かったから、話しかけて見た
話の展開はよく飛ぶが、
話そのものは面白い…不思議な人だ
4月3日(水)
記:燈
基礎科の授業は代わり映えしない
ずっと似たような話ばかり…
つまらない
4月4日(木)
記:燈
ずっと暇、かんなぎさんも最近は
桑嶋さんの事ばかりを考えているようで…女の前で他の女のことを考えるのはよくないと思う
4月5日(金)
記:燈
かんなぎさん…名前は神巫蒼羅と書くらしい、青い空を連想する
良い名前だと思う
日下部さんが骨折したらしい
今度湿布でも差し入れよう
4月6日(土)
記:燈
神巫さんが最近あまり話してくれない
……やっぱりもっとおっぱいが大きい子の方が好みなんだろうか…
最終値が低めだった私はアンダーの細さがあってもD、トップでしか評価されない服の上では
B〜Cあるかないか、くらいだろう
人間の不平等さを感じた
〜〜〜〜
5月7日(火)
記:燈
提督科志望の人たちが騒がしい…私には戦艦適正なんてなかったんだけど、身長170台だからか、嫌味か!
………桑嶋さんにフラれたらしい
いい気味…いや、ご愁傷様です
5月8日(水)
記:燈
明日のお弁当はどうしよう…
神巫さんにも分けてあげよう
料理上手を自認する私の技術は伊達ではない
…ちょっと値は張るけど、生姜焼きとだし巻き卵、ちょっとしたサラダにしよう
5月9日(木)
記:燈
作戦大成功!美味しいって言ってもらえた!
あしたからも作ろうかな?
5月10日(金)
記:燈
やられた、飯島明菜さんがお弁当を先んじて配ってしまっていた….
せっかく多めに作ったのに…一人じゃ食べきれないじゃない
5月11日(土)
記:燈
今日もお弁当渡せなかった…
私一人じゃ食べきれないのに…
5月12日(日)
記:燈
今日はお休みの日…辛い
特にどこに行くでもなく、寮の自室に引きこもっている
5月13日(月)
記:燈
最近ずっと神巫さんのことばかり考えてる…これってもしかして…
考えないことにしよう
まさかこの歳になって恋だなんて…
5月14日(火)
記:燈
どうしよう…本当に学業に身が入らない
ずっと頭の中が占領されっぱなしだ
あぁもう!自覚した!自覚したんだから!
……大胆に攻める方がいいのか、少しずつ寄り添う方がいいのか…初心者の私では分からないのが辛い
5月15(水)
記:燈
雪鳴さんから、スタイルいいから強引に迫ろうとアドバイスをもらった
さしあたっては明日あたり
……距離感を埋めてみよう
仕方ないじゃない!
失敗したくないんだから!
〜〜〜〜
艦こ暦4年 10月1日
記:燈
これが私の最後の日記になると思う
私の適合艦娘は『陽炎』
陽炎型駆逐艦の長女らしい
私の自我や記憶は消えてしまうらしいけど
艤装に適合して、それでもまだ、
この胸に灯る火が消えることなく残るのならば…その時は…
600話記念番外編は
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過去編軍学校
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過去編深海勢
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裏山とかの話を
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テンプレ転生者(ヘイト)
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ストーリーを進めよう
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戦争が終わった後の話を!
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しぐ……しぐ……