戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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悪夢の雨音

「時雨、…今邪魔な連中は

奴らだ、いいね」

「…うん、提督」

 

「俺たちのやるべき事は一つ、

敵を殲滅する事だ」

 

それだけ聴くと

時雨は改二の出力を遺憾なく発揮して

深海棲艦の群れへと突進

 

連続砲撃で一気に制圧にかかる

 

「死んでよ…みんな!」

 

時雨は艤装再構成で取り出した砲を振り

乱雑な狙いのままに砲撃を繰り返す

 

精密性は見る影もないが

連射速度、火力は激増しており

暴走の影響か攻撃に偏った動きをしている

 

「…………!」

 

弾が切れれば即座に格闘に入り、魚雷を投げ、敵の首を引きずり出す

 

全て無言で

 

「…………」

「グガァァアッ!」

 

「……………!」

「ゲボァッ!」

 

確実に仕留める、と言わんばかりの全力攻勢に晒された深海棲艦は一旦離脱して行き…

 

「提督の邪魔になる…お前らも…」

 

狂犬は、時雨を回収するために近づいた金剛にまで牙を剥いた

「時雨っ!?」

「死ねえええっ!」

 

時雨改二の砲撃が金剛を襲い

噴煙を巻き上げる

 

現れたのは、無傷の金剛

 

「やれやれデース、初めての実戦投入が味方からの攻撃対応なんて…」

 

金剛は即座に改二を発動し

目の前に障壁を展開していたのだ

 

「いくら娘が絶対防御(イージス)持ちデモ厳しいものだってあるんデスよ?」

「死ね!」

 

間髪入れずに放たれた雷撃を防御した金剛は…

「そう、あくまでも

話を聞かないつもりデスカ…」

 

「なら、おしおきデース!!」

ガチギレていた

 

金剛は即座に改二で得た火力、

41センチ連装砲を片手に取り…

 

()()()()()

 

時雨がそれに目をそらした瞬間

金剛は突進、体当たり(ボディチャージ)で時雨に激突

戦艦の圧力は改二という優越点を埋めて、肩に砲撃を受けながらも時雨を圧倒し、転倒させる

 

「金剛!じゃまだァッ!」

「shut up!」

 

強引に時雨を押し倒し、

動きを止めることに成功する金剛

 

「今です提督!」

「分かってる!」

 

時雨の暴走、

それは改二発現時に於いて起こり得る

暴走現象のうち一つ、過剰な戦意高揚と攻撃衝動の発露だ

 

しかし、会話が比較的できていたため

まだ、戻ってこられる可能性はある

 

「時雨!戻って来い!時雨!」

「提督…殺さなきゃ…全部…!」

 

みしり、と音が鳴る

 

音は鳴り止まず、機械仕掛けの艦娘(乙女)

限界を超えて…

 

バキン

 

儚く散る

 

金剛の圧力を超える出力を無理矢理に放出した結果、暴走ゆえのリミッター解除で

時雨の自壊しかけていた腕が完全に崩壊、機能停止した

 

「!!っ?!時雨!」

「提督!Noー!」

 

左腕を半ばからヘシ折りながら

金剛を突き飛ばし、

俺の元へとやってくる時雨

 

「ねえ提督、僕…戦艦にも勝ったんだよ

いつもみたいに…褒めてよ…」

 

腕から血を流し、

粉砕骨折じみた状態を晒している時雨の腕を取る

 

「てい、とく」

「馬鹿野郎!」

 

「誰が褒めたりなんかするか!

腕を見てみやがれ!ブッ壊れてんじゃねえか!」

「て、いと、く?」

 

「自分の体を大切にしろよ!艤装なら治してやれるけどよ!俺にはお前らの体までは修理できないんだぞ!」

 

呆然とする時雨に、更に怒鳴りつける

「体を壊すくらいなら作戦失敗して帰ってきた方がマシだ!これは最悪の結果だぞ!」

「僕は戦艦にだって勝ったのに」「勝った負けたじゃねぇんだよ!お前が怪我をしている時点で!俺の負けなんだよ!」

 

時雨の艤装を提督権限で強制停止

無理矢理に機能を停止させる

 

その瞬間、絶叫を上げながら時雨が倒れ

改二が解除される

 

「時雨…お前…無理しすぎなんだよ…」

その腕は肉が裂け、骨が砕けて、腱が千切れている

 

到底無事とは言えない

 

「こんなのは勝ちなんて言わねぇよ時雨…」

 

俺は時雨を回収して鎮守府へ戻り、謹慎処分通告を書き置きにして入渠させる

意識のない艦娘でもちゃんと入渠自体は出来る様に配慮…と言う名前の何かがあり

 

妖精が介助をしてくれるので

俺は時雨をドックに放り込むだけだ

 

「帰ってきたら説教だぞ!」

言い放ちながら、今再出撃、というタイミングで、睦月と如月が帰ってきた

 

「二人とも!どうだった!?」

「全然スカスカにゃし、撃ち漏らしのあと消しくらいが湧いたくらいにゃし、それに

佐世保は遠すぎて除外、呉は周辺観測に専念、横浜は…防衛戦専念の意見表明ありにゃし!」

 

「…仕方ないか…足りない火力は時間で埋めるしか無い、

よし!睦月、如月、アイヴィを返してくれ」

「「了解」にゃし!」

 

 

流石にふざけていられないのか

如月が真面目だ

 

せっかく真面目なのだから

わざわざ崩すことはないだろう

「んじゃ、俺は再出撃してくるよ」

 

輝那と撫子、そして白タコヤキを揃えて

再出撃する

 

今度は完全戦闘形態だ

「止めてみせる!」

 

俺は、自艦隊へ降りかかる被害を

受け止める覚悟を決めて

超速で出撃した

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……

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