時雨の無事は確認したが、
今度は皐月が危なかった
大和や長門、夕立といった派手な戦果を挙げている艦娘に目を奪われていてはいけない
その影で 失われる寸前に陥っているものだっているのだから
「俺はもう火力が無い!銃も弾切れだ!白タコヤキも撃ち落とされた!」
「了解!提督は補給に戻って!
っ!暁!」
雷が突然背後に向かって爆雷を投擲
その軌道の先には…暁の背中
「はぁっ?!」
驚愕に目を見開いた俺は
「ふっ!」
その直後、
その先にいた潜水級(容姿不明)が爆散したのを見届けた
[どうなってんだよ…]
[多分、姉妹艦同士の擬似リンクね]
[…艦型が同じ艦娘を同時編成した時のボーナスか]
[そう、提督は知ってたみたいだけど、同じ艦型の艦娘同士にも心柱の副作用みたい擬似リンクがあるのよ、その恩恵じゃ無いかしら?]
[それにしてもあんなのおかしいよ!]
[川内、時に姉妹艦は奇跡的なコンビネーションを発揮する時がある、それだろう]
同時カットインとかな
なんど駆逐艦姉妹の連続カットインにお世話になったか…姫がワンパン…は流石に珍しいが
瀕死まで追い込むことも珍しくはなかった
「ふうっ!」
暁はさらにそのまま踏み込み
正面にいた重巡ネ級に掌底を叩きつける
「ワンパン大破…だと」
「心臓を止めに行ってたわね」
霞の解説が入る、さすが感覚器官強化型と言われるだけある霞の知覚能力は
余すことなくネ級の胸骨を粉砕した掌底の音を聞き取っていたようだ
「すごい威力ね、…夜ならもっと強くなるわよ」
「………………」
「もっと私に頼って〜」
ぎゅっ、と俺の服の裾を掴む雷
「はいはい、じゃあ聞かせて…くれないよなぁっ!」
死角から避難艇を沈めようとしていた潜水ヨ級の真っ白な腕を掴み取り
アイヴィを起動、
爆発的た出力を空気に流し込んだアイヴィは一瞬にして空転を起こし
爆音を響かせながら俺の足を跳ね上げる
ムーンサルトキック
頭を起点にして足を振り上げ、
空中で1回転、同時に引きずり上げたヨ級の…鳩尾辺りに直撃、そのまま艇に叩き落として踏み付けまでで1コンボ
ピクピク痙攣しているヨ級を再度海に
[なかなかエグいよ今の!?]
[川内だけに?]
[那珂ネタやめなさい!]
こないだお前がネタにしてた…
なんていう細かい話は聞こえないことになっているらしい、都合のいい耳を頭の中で軽く引っ張りながら
「さぁ!再出撃のために!
アイヴィを持って来たんだ!
適合率が足りない島風でも、純粋に儀装として頑張ってもらう!」
[了解したよ、それじゃ行こっ♪]
島風が顕現、同時に俺の魂に接続され
声が頭の中に響く
「死ぬぞ、さぁ、死ぬぞ!」
避難艇で突進しながらのアイヴィを纏った
的確に深海棲艦の艤装を破壊していく
「その艤装の構造は把握済みだ!」
「流石提督…でもそろそろやめて〜」
急加速急停止は流石に艦娘の身でも堪えるようで、雷がグロッキーだ…
霞はとっくに離れている
「じゃあそろそろ俺は鎮守府に帰投する、負傷者を集めてくれ」「了解!」
先ほどとは打って変わって元気よく返事を返し、飛び出していく雷
「…姉より姉らしいとはなんぞや」
[艦娘の間ではよくあることよ]
陸奥のマジレスが心に刺さる
「仕方ないよね、じゃあ帰投しよう」
俺は艇を反転させて、鎮守府へ向かう
そもそも俺の仕事は今回特にない
…………あるとすれば陣頭指揮で士気の引き上げくらいだし、それも大した意味はない
「
「この戦場で一番多く敵を沈めればオリョクルを好きなだけ回らせてくれるでち!」
「そんなこと誰が言った!?」
ドックに寄っていたらしい
潜水組の二人が交代に言うことによると、どうも情報源は
キャハハハハ!と笑う、小柄な、しっぽつきの、戦艦であるらしい
「おかしいな俺はそれに該当する奴を一人しか知らないぞ…」
「でち!」「なの!」
俺の思考を読んだのか、二人が頷く
どうも後でお話しする必要がありそうだなぁ…「なぁ、そう思わないか?」
「ヒウッ!」
その瞬間、どこかで聞いたような
聞いていなかったような声が聞こえる
「ん?」
「…………、??……ッ!」
そこにいた妙に黒っぽい格好の神通を見つめて…
「あーっ!」
「キャーッ!」
互いに互いを指差して叫ぶ
間違いない、その姿は 艦娘の姿を偽造しているのか、それとも肉体のない霊体のみの状態で投影されているのでもなければ…軽巡棲姫そのものだった
「何故お前がここに!」
「ソレハコチラノセリフヨ!」
砲を向けて来た深海神通、略して深通は
そのまま奇襲失敗とばかりに鮮やかな撤退を見せ、深海棲艦の壁に阻まれて仕切り直しを許してしまった
その瞬間
(爆撃開始ー!)「びぎいいっ!」
(かっかれー!)「ぴっいいいいっ!」
妖精が乗った白タコヤキが飛来して
軽巡棲姫を覆っていた分厚い壁を焼き切った
「ぴぎい!」
雰囲気でドヤ顔しているのがわかる辺り
最近は俺も末期だが、
一応ながらに道はできた
やれる
俺は連装機銃を構えて…集中射撃
「うぉぉぉ!」
「ギャァァァアア!」
駆逐艦や軽巡艦が盾となって身を挺し、必死に軽巡棲姫を助ける辺り
人間を超えた自己犠牲と言えるだろうなぁ
しかし、当の軽巡棲姫といえば
錬金術師のごとく自らの手勢を盾へと交換してしまう
このくらいのものは必要だったのである
「敵を目の前にして…!」
無情にも時間切れ、給弾が止まり…
同時にフィールドが夜になった
600話記念番外編は
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過去編深海勢
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裏山とかの話を
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テンプレ転生者(ヘイト)
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ストーリーを進めよう
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戦争が終わった後の話を!
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しぐ……しぐ……