フィールドが夜に切り替わった
そう、夜戦だ
防衛戦である以上、これからの選択肢などない
[力を貸せ、川内]
[やぁっとだよ!]
………「すうぅっ」
《我、夜戦に突入す!》
意趣返しのように、明瞭に、宣言した
「火力+雷装÷減衰率の計算式なら!」
今まで、全て瞬間的な起動に抑えて来たアイヴィを全力で吹かす
最速には及ばないが、それでも高速
駆逐艦島風の主機を用いたアイヴィは、たとえ出力を制限されても速いのだ
「タコヤキども!」
白タコヤキを再召喚した俺は
それを放り投げて、
足場にすることで空中から再跳躍した
「ふっ!」
一蹴、ただそれだけで
本体部分は重大な損傷を生じさせ
二蹴、装甲を破砕され
三蹴、逃れ得ぬ爆発に沈む
ただ三度、蹴り飛ばすだけで
戦艦をも沈めてみせた…が、
実際にはただ蹴っているのではなく
雷装を使って爆風を指向させ
爆発で破砕しているので、足云々よりも問題は魚雷発射管である
一瞬でもミスがあれば爆風は足本体を、アイヴィを破壊する
それを完全制御し続けるなど
人間には到底不可能であり、川内のみならず、島風と陸奥の力を借りてようやく為される超絶技巧だった
着弾点によっては一撃で仕留められた
大和撫子も輝那も今は無い
ゆえの自爆に近い近接乱撃
一撃必殺とは言い難いがゆえに、複数回攻撃を行う
単なる足場に甘んじている白タコヤキは不憫と思いはすれど、それをやめはしない
「駆逐艦でよかった!
まだ起動可能時間は残ってる!」
資材エネルギー暴走以来
各艤装にはリミッターが設定されている
輝那はNXの起動時に限って反動ダメージは物理であるため、リミッターの体を成していないが
撫子とアイヴィは起動時間制限が付いた
しかも加速を重ねる度にカウントも加速する
「はぁぁぁっ!」
瞬間的な最速化を繰り返したせいで
すでにカウントは100を切った
あと1分半、駆ける!
side out
「戦艦級で周囲を固めて来たか…」
私の周囲には戦艦棲姫によって統制された戦艦タ級フラグシップ、ル級達がたむろしている
「だが、それでも!
絶望を超えていくのが
私は咆哮をあげながら主砲を旋回させ
長門型の火力を以って
戦艦相手に砲撃戦を開始
その瞬間、視界が暗転した
「我、夜戦に突入す!」
提督の声、その一声が戦場に響き
視界の暗転による動揺を打ち消した
「ふっ!」
私は直前までつけていた狙いのまま
発砲して、
一体が悲鳴とともに爆散したのを見届ける
「さらば!」
「ヨクモオォッ!!」
戦艦タ級が距離を詰めて襲いかかってくる
しかし
「それは悪手だぞ…はぁっ!」
自分でも綺麗だと思っている脚で
回し蹴りを叩き込む
「グボダッ!」
「はぁつ!」
今度は提督から見て取った発勁と貫手
「アベシ!」
「せぇやぁっ!!」
「グワーッ!」
次々に昏倒、沈没していく敵戦艦
それもこれも、深海棲艦の艤装は生物ゆえにだ
直接頭部を攻撃すれば
砲撃などいらないのである
とはいえ、それを実践するには
航空、砲雷という順番で戦闘を狙うパターン行動してくる下級の深海棲艦では不可能だ
ゆえに研究はほとんどされていないはずだが、提督の提唱した説を信じた結果が
今目の前に展開されている、
己の四肢のみでの敵戦艦撃沈である
「マサカアレヲ突破スルナンテネ…」
再度出現した戦艦棲姫がこちらに微笑みかける
「その命、貰い受ける!」
「浅ハカネ…」
私の拳を受けた戦艦棲姫には
まるでダメージが見受けられない
「私モ…格闘タイプナノヨ」
「なんだと…!」
向かい合う二大戦艦はそのまま再度激突し、
拳をぶつける
火花とともに衝撃波が飛び、周囲に近寄りがたい雰囲気が漂う
格闘型として訓練を積んできただろう戦艦棲姫にたいして、私の方はつい先程に格闘を始めたばかり
「…冷静に考えて、付け焼き刃では勝てないな」
「ワカッテルジャナイ…沈ミナサイ!」
一瞬にして、天地がひっくり返る
足払い、そう気づいた時にはすでに致命的に体勢を崩して宙に浮いていた私に
戦艦棲姫の拳が迫り
「せいヤァァァア!」
飛び蹴り、突然飛び込んできた白い影が、戦艦棲姫の首筋を蹴り飛ばしたのなった
「ぐぅっ、なんだ!?」
私は叩きつけられた水面から飛び起きて、未知の敵に備えるが
「長門、怪我はないか?」
「提督、だと!?」
そう、飛んできたのは提督だったのだ
いつか見た記憶のあるようなエンジンを足に、白い煙を上げながら海面に立つ提督の姿は
とても頼もしく見えた
「んで、悪いんだが」
「どうした?」
提督はこちらを振り向いて
「時間が限界だから支えてくれない?」
そう言い放つなりザバァと沈んでいく
「っ!」
提督を慌てて捕まえる
「提督!何をやっている!」
私はそのまま
浮力を完全に失った提督を抱えてその場を離脱した
「ありがと…はぁ…はぁ」
「礼は要らん!私の提督だ!私が助けるのは当然のこと、むしろなぜそんな状態で前線に出てきた!」
「…アイヴィの、稼働限界時間…オーバーだ…」
くったりした提督を抱き締め
そう早くない船速を振り絞って移動し
補給線、艦娘達の移動線である第四艦隊のもとまで提督を輸送する
「大和!提督を任せた!」
「はい!事情は承知しています!」
大和は第四艦隊にいたあきつ丸を呼び出した
「提督殿の輸送でありますな、鼠や土竜とは訳が違うでありますよ」
「うむ、あきつ丸、頼んだ!」
「承知であります!」
私はあきつ丸に提督を預けると
そのまま戦場へと取って返した
side change
長門side out あきつ丸side in
「提督殿、無理のしすぎでありますな、海は我々艦娘の領分であります…自分は陸所属でありますが
提督は上で指揮を執るのが仕事なのです、ゆめお忘れ無きよう」
自分は長門殿から提督を受け取り
鎮守府を目指して移動しながら話しかけて
「ぁぁ、わかってるさ…でも
艦娘のみんなが体張って戦ってんのに、俺が動かないわけには…」
そんな、
「我々には制服艤装の装甲があるであります…そんな誰しもが備えているような基礎的な防御機能が提督にはない、それは大きな問題であります」
「潜水艦や…駆逐艦も…そんなものだ」
「あるかないかでは大きく違うであります!」
我々は体を張れるのだと、強く主張する
傷つくのは私たちだけでいい
どうか、守られていてください
あなたがいるからこそ、
私たちは戦えるのですから
「さぁ、着いたであります!」
「すまない、もう立てるよ…」
よろめきながら立ち上がる提督を支えて、私は提督を執務室へと送った
600話記念番外編は
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過去編軍学校
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過去編深海勢
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裏山とかの話を
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テンプレ転生者(ヘイト)
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ストーリーを進めよう
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戦争が終わった後の話を!
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しぐ……しぐ……