戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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繋ぐ心

俺の体を支えながら、

回避運動を続ける龍田

 

しかし、もともとガタが来ていた所に

大きな負荷をかけられた艤装がついに限界を超えてしまう

 

「っ!」

 

突然異音をたてて停止した艤装に

視線を送る龍田

 

機動力を失った龍田は、俺を放り投げて

「沈むのは自業自得、私だけでいいわ」

 

そう言って微笑む

 

爆発と轟音が再び爆ぜ

今度は、龍田自身に集中する

 

「さよなら」

 

「龍田!」

神風に受け止められながら、叫ぶ

そして、

 

「おいおい、頼りねぇ提督だなぁ

…約束しただろ?」

 

絶望の中に声が響く

 

「俺が居ない時は、

龍田を守ってくれってよ」

 

その声の主人は…

金と紫の輝きを灯した、天龍改二

 

「まぁ、間に合ったから良かったけどよ」

 

「天龍!」

「おう、天龍様のお帰りだ!」

 

天龍の叫びと共に、艤装の砲が展開する

 

「オレは今、虫の居所が悪いんだ…

殲滅させてもらう!」

 

一気に加速した天龍は少し離れた所に群れていた深海棲艦達に肉薄、雷撃を仕掛ける

 

夜中の雷撃は航跡が見えない

回避は至難であり…しかし

一発の命中も出ない

 

「なぁんてな!」

 

勝ち誇った顔で回避する深海棲艦に

莫大な熱量が叩き込まれる

 

その最初の標的となったタ級は何が起きたかを理解することもなく沈んでいった

 

「…天龍さんが帰ってきたという事は、私もまた、ここに来たという事です」

 

46センチ三連装砲による曲射狙撃

その巨大な砲が故に、本来の持ち主である大戦艦、大和ですら至難の技とする狙撃を

いとも容易く成し遂げる扶桑

 

「私は旧式艦ですが、それでも

赤子に譲るほど腐ってはいません!」

 

深海棲艦を赤子呼ばわりしながら

連続で狙撃を繰り出す扶桑

凄まじいスピードで飛来する砲弾は

次々に爆轟をあげて深海棲艦を海底に叩き返していく

 

「龍田さん、先ほどの声、

解放回線で聞こえていましたよ」

 

蒼羅のどうせ使えないからと

ポケットにねじ込まれていた通信機から

扶桑の声が響く

 

「戦艦棲姫が撃破されたからか…」

「そのようです、長門さんと相討たれた様で、長門さんとドロップ艦のかた?は回収済みです」

 

扶桑さんの声が、今一番聞きたかった事を伝えてくれた

 

「よし!通信復活だ!

各艦隊回線解放を許可する!」

 

《了解!》

 

艦娘たちの声が響く、同時に

各艦隊の旗艦による通信案内が行われ

 

事前に立てた作戦による機械的な挙動とは違う、有機的に互いの状況を確認し把握する

本来のネットワークを取り戻す

 

〈デース!〉

 

これだけで誰だか理解できるあたり

もう英国キメてるなぁ

 

「…扶桑さん…天龍ちゃん…」

 

〈龍田さん、よろしいですか?

まず、私たち旧型艦は性能面では新鋭艦に譲るところがあります…これは変えようのない事実です

 

ですが、古い艦だから悪いわけではありません〉

 

〈私たち旧型艦こそテストベッドであり、当時最も新しい技術を用いた試作艦であり、私たちを礎にして

より強力な新しい艦たちが生まれるのです!〉

 

「で、でも!」

〈礎無くしては館は立ちません!

ご周知の通り私の艦橋、艦体構造は欠陥品です、欠陥戦艦と揶揄される事も多いです、ですが!〉

 

大きく息を吸う音と、一拍開けて

 

〈私たちの欠陥を是正して!日向と伊勢が生まれた!こうして技術は進歩していくんです!〉

 

扶桑は叫ぶ、自分を道半ばに捨てて、先へ先へと進むものたちをこそ見送るのだと

その先にはさらなる進化があると信じて

その礎になる事をこそ誇るべきだと

 

〈私は諦めない!この体に許された

可能性を極め尽くしていないから!

旧式艦だからと諦めはしない!

だから、龍田さん!

あなたも、諦めないでください!〉

 

扶桑の声が龍田を叱咤し、

そして激励する

 

〈それでも、信じられないというのなら

 

お見せします、私の掴んだ可能性」

 

扶桑はいつのまにか直ぐそばに来ていたようで、通信を介さない、生の声が聞こえる

 

「これが、新しい私…扶桑改二!」

 

爆発的な閃光と共に

緋色の柱が天を貫く

 

その光は、粒子となって散っていき

光舞う柱の跡の中央には

 

「扶桑型超弩級戦艦、一番艦、扶桑

推して参ります」

 

頭に着いた艦橋をより巨大化させ

巫女服の袖を分離させて派手に飾った

扶桑改二が立っていた

 

「はは…オレも行くぜ!」

 

すでに損傷した中破状態とは

とても思えない動きで、深海棲艦達に攻撃する天龍、それを狙撃でサポートしつつ

龍田、神風、俺を敵から引き離すように立ち回る扶桑

 

派手に動く天龍を囮として、扶桑は高火力の砲撃を、囮と割り切って無視され始めた天龍は、至近距離をいいことに連続雷撃を

 

それぞれの動きを利用して

互いに得意な戦況を作り出す

 

それはとても高度な連携だった

少しでも動きが狂えば、互いの意図を読み違えれば、互いを邪魔し合う事になる

 

たが、調和が続く限りにおいて

二人の性能は限界以上に引き出される

 

旧型、欠陥、低価値と

レッテルを貼られ続けていた彼女達が、長年の対話が生む連携を以て最新鋭艦を下す為に協力して、努力の果てに編み出された技術であった

 

「すごい…」

 

神風の呟き声は、

風になって天龍に届いた

 

「へっ!こんなの、誰にでも出来る技術だ、龍田!お前も着いて来い!」

 

「………っ!…無理よ」「出来る!」

「無理!」「出来る!」

 

意地の張り合いの様な声のぶつけ合いが戦場に響く

 

そして、何度目の問答か、

ついに均衡が崩れた

 

「龍田はオレの妹だ!だからオレに出来る事が龍田にできない訳がない!」

 

「っ!」

息を詰まらせる龍田に、天龍は叫んだ

 

「オレについて来い!」

 

姉妹の絆、天龍が龍田に示したそれは

絶対の信頼であった

 

「……」

「龍田!自分を信じられないなら

オレを信じろ!

オレが信じるお前を信じろ!」

 

某兄貴なセリフを叫びながら

敵に向かって突進して行く

「オレが信じるお前を信じて、

オレについて来い!」

 

天龍は砲雷撃戦を開始した

そして、龍田もまた

「…私を信じる天龍ちゃんを…信じる!」

 

迷いを振り切って、再び立ち上がる

 

「提督!」「あいよっ」

 

互いに一言、それだけで事足りる

 

「直してっ!」「30秒で終わらせるっ!」

 

神風は俺を放りなげ

俺は同時に道具達を投擲する

 

レンチが、スパナが、パールがドリルが

さまざまな道具が宙を踊り

無残に破壊されていた艤装が修復されて行く

 

「…技師ってのはな、使えないものを使える様にして使う、そんな最高のお仕事なんだ」

 

そして、着水の瞬間には既に

新品の様な輝きを放つ艤装が装備されていた

 

「行くわよ…っ!」

 

「慣らし運転はなくていいのか!?」

「良い!だって…提督を信じてるから!」

 

応えながら加速する龍田

十分な暖気も無しに強引に走らされる主機は、それでも主人に応えて全力を吐き出す

 

「信じ合い、助け合う…やっとわかったわ…これが、私の改二!」

 

龍田の胸に宿った濃紫の光は

黄金に変わることなく

しかし、黄金を超えて紫金に輝く

 

新たなる光の柱が生まれ、

立ち込めていた暗雲を貫いた

 




これって扶桑回?龍田回?

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
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