戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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グラデーション

「家族…ねぇ」

 

「蒼龍!?」

後ろからじとーっとした視線

 

「私達の練度限界も近いし、提督もそろそろご家庭を持っても良い歳だと思うんだ

ねぇ提督?聞いてる?」

 

「そうだよ提督、

ぼくはもう届だって用意してるよ」

「何故時雨が居るっ!?」

 

突然くっついてきた蒼龍と時雨

特に時雨に驚きながら叫ぶ

 

「提督への愛の賜物だよ…自分で言って恥ずかしくなるね、これ」

「恥ずかしくなるなら言うな!」

 

さっきまでの空気とは打って変わって

ぎゃあぎゃあと騒ぐ艦娘+提督に

ぽけっとしていた空母棲鬼も

良い話されてるな〜な空気出していたレ級も

 

「「クスッ」」

 

「あ、やっと笑ってくれた!」

 

どこに隠れていたのかわからない

皐月がレ級に歩み寄る

 

「うん、やっぱり笑ってたほうが可愛いね」

「んにゃっ!?」

 

海域でうっかり遭遇すれば死を覚悟する脅威であるレ級も、突然すぎる言葉に慌てふためいていたようだ

 

…言葉になっていない謎の音は

たしかに可愛い

 

「か、可愛いなんて言うなよ!」

「ボクと張り合う気なの?」

 

幼女達(なお、片方は戦艦)によるかわいい可愛くない合戦が始まる

 

空母棲鬼は娘の友達を見るような視線で

ニコニコして居るのだが……

 

「何一人で傍観者気分してんのさ

ほら、空母棲鬼…白タコヤキ頼むよ」

 

俺はぐったりしたままの白タコヤキを空母棲鬼に渡す

 

はい、と差し出されたモノを

反射的に受け取ってしまった空母棲鬼は

そのまま滑るように胸の谷間へと翔ける白タコヤキを捕捉できず

 

「きゃぁぁっ!提督!セクハラよ!」

「…俺じゃない、俺のせいじゃない」

 

視線をさぁっと逸らしながら

ニヤリと笑う提督

 

「騒ぐのも良いが、明日の祝勝会に備えて元気はとっとけよ!…明日遅刻しても待ってやらないぞ」

「えぇーっ!」

 

耳聡く聞きつけたか、皐月が一人だけ叫ぶ

「そんなー!」

「…そりゃそうだろ…」

 

レ級はちゃんと節度を守って遊ぶ気だったようで、自分は起きる前提のセリフである

「祝勝会…ね、連続出撃の後にパーティ料理の仕込みなんて、あきつ丸も間宮さんも忙しそうね」

「資材管理に青い顔になってる大淀の説得もしないとな…」

 

正直に言えば、今思いついた

というだけのモノである為、

なんの計画もない…一応、深海棲艦の艤装を回収、分解できたから

そのパーツや艤装そのものを資料、実験材料として大本営に売りつける事もできるだろうし、

戦闘中にもこっそりと深海棲艦が蓄積してきたらしい、前線資材集積場?が見つかってはいる為、

 

資材収支はプラスの方向だが、

それが資金には直接影響しないというのが問題ではある、そもそも日本国内では鉄が高価なのだが

それは鋼材で賄うことができないため

資材を売って金にすることも出来ない

 

ボーキも似たようなものだし

燃料なんて水である

エコ化社会に於いては管理されているが

それでも日本はもともと水の国

水源は多いし、金にならない

 

「…どうするかぁ…」

そもそもこの前中佐に上がった時は

鎮守府への給付金も上がるという話であったために、ある程度の許容範囲が用意できたのだが…

 

「そうだ…!」

金が用意できない?そんな訳ないだろ

 

鎮守府の予算から支出出来ないなら

俺個人の口座の金を使えばいい

 

艦娘達を労うという名目なら

公私混同には取られない…と思う!

 

「…よし、残高…は…」

 

「どうかした〜?」

鎮守府の廊下で呟く俺に、

甘やかな声が掛けられる

 

「龍田?」

「は〜い、提督?」

 

上着をひらひらさせながら俺に歩み寄り

「で?何考えてたの〜?」

「…資金管理について少し…」

 

「資金管理?苦しい訳じゃないんでしょ?」

「現状ね、ただ資材の消費が多いし

祝勝会もやろうとなると、 正直経済が厳しいからね」

「なるほどね〜」

 

笑って俺の手を取る龍田は

そのまま俺の腕に抱きつき…

 

「で、金策はあるの〜?」

「…ない、一応俺個人の個人口座から

支出すれば問題ないと判断した」

 

「ダメよ〜?個人口座を仕事に使っちゃ

…まぁ提督のために?少しくらい手伝ってあげても良いのよ〜?」

 

俺の腕を引っ張りながら軽く上目遣いでこちらを見てくる龍田に、せめて言い訳でも

とばかりに口を開くが

 

「……俺が出したくて出してる金なんだからそれで良いんだけど」

「で?提督の経済事情は?」

 

すかさず龍田の質問が入る

 

「………苦しいです」

 

「でしょ〜?ということで、ここに〜」

 

龍田が何処からか取り出したのは

いわゆる金一封のような封筒

「大本営からの報奨金が来てるのよ〜」

 

「何故お前がそれを持っている!?」

ツッコミは正確かつ迅速だった

 

「…なんででしょーね〜」

ニコニコとした笑顔を崩さない龍田が何故か怖く見えるのだが、龍田が怖すぎるために表情すら変えずに小揺らぎもしない風を装う

 

「…まぁ、泡銭か……」

「まぁ、実際的には隠してる物とかもあるし〜…予算としては十分な枠は確保してるのよ〜?」

 

龍田と一緒に歩きながら

一言、言わせてもらう

 

「今、隠し予算って言「言ってないわ〜」

 

目がすごく怖いです

「さて、金策のアテもついたし

後は食材の方か…最近宴会が多いし、カロリー引き締めないとなぁ…」

 

一部艦娘からすでに太っちゃーうとばかりの文句を聞いていたりもするのだ

これ以上肥えさせるわけには行かない

 

[てーいーとーくー?]

[殺気!]

 

今までしばらくの間、ずっと黙っていたとは思えないほどの元気さでゴリゴリと説教された

 

[女の子にそんな話をしちゃダメなんだよ!たとえ頭の中でも!ダメなのはダメ!」

[やめて待って怒鳴らないで俺の頭壊れちゃーう]

 

ただでさえ鳳翔さんの退役勧告やら龍田のKYO-HAKUやらと考え事が多いのである

ここでさらに頭の中で怒鳴られたりしたらそれこそパンクしてしまう…!

 

[はぁ…、仕方ない提督だなぁ…]

[もうなんでもいいよ…]

 

俺は話を打ち切って食道に向かい

やはり食堂で待っていた間宮さんに

今回の祝勝会の説明をしようとした

 

のだが

「まぁ、提督、手が冷え切ってますよ

ずっと寒いところにいたのでしょう?

今、温かい物を用意しますよ」

 

「え?いや先に説明を」

「すぐですから、その後にしましょう」

 

なぜか刻みベーコン入りのオニオンコンソメスープを一杯頂いていた

 

「…あったかい」

 

一口飲めば間宮さんの優しさが、気づかぬうちに凍えていた体を温めてくれる

 

「んふふ、いつもお勤めご苦労様です」

 

笑顔の間宮さんに見つめられた俺は

どうにも恥ずかしくなって

スープの方に集中し、

殊更にゆっくりとそれを味わった

 

「で、だよ…今回の鎮守府侵攻に対する祝勝会かいをやりたいんだ、予算は…だいたいこれくらいを目安に」

 

龍田さんから渡された見積もりを出して、予算の範囲を伝える

 

「わかりました、頑張ります」

 

間宮さんの即答はとても頼り甲斐があった

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……

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