戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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スウィートポイズン

「鳳翔さん…いい加減機嫌なおして」「何も聞こえませんね」

 

ニコニコしてる鳳翔さんは癒されるんだけどその裏側に殺意じみた何かを感じているから余計怖いんだよ

 

具体的には『女怖い』と

『怒った母親怖い』の二倍濃縮で怖い

 

「どうかしましたか?時間の管理も自力ではできない提督さん?」

「あの、それは、その」

 

言い訳を試みるが、どうせその内容は時雨と金剛に指輪をねだられた程度の話である

聴いているうちに鳳翔さんの顔がどんどん暗くなっていき、最終的には怒りマークが目に見えてきた為

話は中断になった

 

「ほ」「聞きません」

まだ何も言っていない、

どころか名前すら言い切っていない

 

「お艦」「雷ちゃんに頼りなさい」

「もっと私に頼って良いのよ?」

 

鳳翔と呼べないならと代名詞を出した瞬間に、同じ声帯の妖精を持つ少女へと誘導されてしまった

 

そして、そこに雷改の放置セリフ

「…雷?!」

「ほら、司令官、今度こそ私に頼ってね」

 

目をそらした一瞬の隙に懐に入られてあせる俺に、目にも留まらぬ、しかし衝撃を伝えない謎の動きで抱きついてきた雷

 

「ずっと、ずーっと一緒にいましょ?」

ぎゅうっ、と抱きしめられながら

優しく、蕩かすような声が聞こえる

 

「ダメになっても良いの、司令官はどうなっても私の司令官だもの、」

 

声はあくまで静かに、優しい

 

「ずっと一緒にいれば、ずっと平和に、同じ景色を見て居られるわ、ね、

必要なことは全部私がやってあげる

だから、全部を私に委ねて」

 

それは決意を溶かす甘い毒

それに心を呑まれれば、待っているのは無尽蔵の愛という最悪の地獄

 

「……っ!ダメだ!」

 

無理やり起き上がって、雷から離れる

「俺は司令官だ、俺は艤装技師で提督だ、だから、俺の仕事を任せるわけにはいかない

俺にはほかに出来ない技術がある」

 

「司令官…」

「だから雷、俺はお前に頼るわけにはいかない、俺自身のためにも、他の艦娘みんなのためにも」

「…………」

 

黙り込んだ雷を見つめる

「…いや」

「え?」

 

「嫌、いやよ…司令官…!」

「な、どうした雷!?」

 

雷は突然泣き始めて、慌てた俺の腕を掴み

「ずっと、頑張ってるのに、全然頼ってくれないの…このままじゃだめ…いやなの!もっと私を頼ってよ!」

 

「……」

「司令官は私に頼らなくても大丈夫でも

私は頼ってくれなきゃダメなの!私を頼ってよ!私をみてよ!」

 

突然涙を零しながらヘタリ込む雷

普段の彼女からは想像もできないほどに弱々しいその姿は、甘えん坊と言われる電より、背伸びをしている暁よりも幼く、子供らしかった

 

「ド派手な癇癪だこと…」

「司令官!」

 

俺の制服の袖を掴んで、引っ張る雷

しかし、艤装の無い彼女では力が足りない

 

「私を使ってよ、私を頼ってよ

そうじゃ無いと…寂しいの…」

 

突然泣き出した雷に有効な一手を考え出すことが出来ずに、ただ立っているだけの俺に代わって

俺の後ろにいた鳳翔さんが出てきた

 

「ほら提督、女の子を泣かせてはいけませんよ?泣かせてしまったらちゃんと謝ってあげる事です

好きなだけ構って、頼ってあげなさい」

 

「…えっと」

「!たよって〜」

 

先ほどの涙はどこへやら

両手を伸ばして、幼子が抱っこを要求するような姿勢になる

 

「ママ…だよ」

「ぐっっ!」

 

一瞬にして、雷の魅力が爆発した

「…しかし俺は」

「…(ウルウル)」

 

「(察し)仕方ないか…」

 

手を伸ばした雷に、自ら歩み寄る

「司令官♪」

 

ぎゅっ、と抱きしめられる

「可愛い〜」

 

その間、ずっと死んだ表情をしている俺は

[ねぇねぇ、今どんな気持ち?雷ママに抱っこさせちゃってどんな気持ち?]

 

[うるさい…うざい…]

全力で煽られていた

 

「雷ちゃんもなかなかの母力を…」

 

鳳翔さんが何やら感心しているところだが

そんな事には気付かない

 

というより、司令官を抱きしめるのに夢中の雷も、頭の中で弄られるのに必死に対応している提督も、それに気づく余裕がないのだった

 

ぎゅうぎゅうと抱きしめられる俺だが

しばらくはその状況に甘んじて

 

1分ほど待った、その時だった

 

Guten Tag(グーテンターク) 私はビスマルク 型戦艦のネームシップ、ビスマルク。

よおく覚えておくの……よ?」

 

突然食堂に入ってきて自己紹介を始めるビスマルクは、着任早々目の当たりにするにはふさわしくないだろう光景を直視してしまい…

 

「…ぁ、あ貴方の鎮守府なんだから

とやかくは言わないけど…

その、ずいぶん進んだ特殊な関係性を構築してるのね」

 

「違うんだビスマル!これは誤解だ!」

 

俺の口走った言葉は、完全に

テンプレート通りのセリフをなぞった

しかし現実において伝えるべきことを端的に伝える一言だった

 

「何が違うのよ!その、駆逐艦と

そんな…イチャイチャしてるんでしょ!」

「イチャッ!…鳳翔さん!せめて貴女の方から違うと」「何も違いませんよ」

「鳳翔さん!!」

 

 

その後、誤解を解こうと試みるものの

明確に否定すると、くっついたままの雷が泣き顔をするために言葉を選ばざるを得ず

 

結局話がこじれてしまうのだった、

 

「あと、私の名前はビス丸じゃなくてビスマルクよ!ちゃんと最後まで言いなさい!」

 

「あっそこは主張するんですね」

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
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