戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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両面鏡

「頼まれたからには…死なせない

 

俺の鎮守府では俺が法だ!」

 

駆け回りながら艤装の構造解析、把握と

修理用の素材の準備を進める

 

軽巡棲(じんつう)姫のちりょう始めましたー)

 

了解、その一言を返す時間すら惜しい

 

「よ…し、艤装の方も治ってきている…」

抉られている肉質の方は治りが遅いが

外郭の金属部分や装甲については十分に稼動可能な領域に回復しつつある

 

「よし、よし!」

 

引き締めた表情が綻ぶのも気にせず

俺は艤装の修理を続ける

完璧に治してみせる、そう思って

 

「……傷つけば治す、近寄れば癒す

空の鳥達に止まり木を」

 

口ずさみながら、

勢いを増す修理の手は進んで行き

「っし!これで仕事完了!」

 

「………」

[ていとく、神通は?]

[俺にいうな、俺はあくまで艤装を治しただけだ、体の方は俺の管轄じゃない

それは俺にはどうにもできない]

 

[………]

「黙りこまれても仕方ないんだよ」

 

キュッ!とネジを回して固定し、角レンチを掛けてトントンと押して

ネジ山を潰さないように加圧させる

「留まったね、よし」

 

機能停止している状態の艤装を軽く磨き

表面の汚れを取る、

 

装甲の崩壊している部分以外はそのままにしていたから、結構洗うのにも時間がかかってしまった

 

各種資材を置いてみたら勝手にかじっていたので、おそらく肉質の方も回復しているのだろう

「そこだけは生物的アプローチが必須だから、俺にはどうしようもないからなぁ」

 

元気になってくれた艤装を安置して

今度は入渠中の軽巡棲姫の方へ行く

 

(ていとくさん、目隠しです)

「何故目隠し?」

 

突然渡されたタオルに困惑する俺に

妖精の声がぶつかる

(全裸かんさつでもする気ですか?)

(それはへんたーい?)

 

「しねぇわ!はいはいわかりましたよ

目隠しすりゃ良いんでしょ?」

 

ぱっとタオルを巻いて、視界を削る

完全に視界を閉じるのはダメだ

それは良くない、仮にも提督として

潜在敵性を否定できない深海棲艦に隙を見せすぎるわけには行かない

 

「…よし、行こうか)

通い慣れたドック故に、もはや

視界が無い程度では壁にぶつかったりはしない

「…失礼するよ」

「……アナタ…ハ…?」

 

もう意識を取り戻していたようだな

「俺は神巫蒼羅、中佐としてここの提督をやっているものだ」

「提督…!」

急に身を起こして、逃げようとする軽巡棲姫

「なぜ逃げる、おい、軽巡…いや、神通」

 

「!」

 

軽巡棲姫の動きが止まる

それは抵抗を諦めた者の逃げでは無く

脱出の隙を伺う為の姿勢

 

「私ハ…貴様二ハ屈シナイ!」

「……は?」

 

「貴様等ハ…艦娘ヲ虐ゲ、艦娘ニ無理ヲ強イテ我欲ヲ満タス、ソノヨウナ穢レタ輩ニハ

決シテ…負ケハ…シナイ!」

 

「…あー、なんか勘違いして無いか?」

「煩イ!最早問答ノ要ハ無シ!」

 

艤装無しでも凄まじい膂力を発揮して

俺へと拳を向ける軽巡棲姫…しかし

 

(ちがうのでーす!)

(ちょっとすとーっぷ!)

 

妖精が割って入る

「「!」」

 

振るわれる拳の軌道に割り込んできた妖精を避けるために、無理やりにねじ曲げられた腕は

当然、十分な治療も無しでの

無理な動きに悲鳴をあげて

 

「っ、と大丈夫か?」

 

再び折れ掛けた寸前のところで

俺が受け止めて衝撃を流す

「よし、これで…ゆっくり下ろそうか」

 

出来るだけゆっくりと、軽巡棲姫の腕を下ろす

「これで良いかな?痛い?」

「イ、イエ…」

 

「ならよかった」

 

笑顔を向けられた軽巡棲姫は

混乱したような表情になる

「何故…妖精ガ自主的ニ庇ウナド…」

 

(我々はていとくに助けられているのだ)

(提督がいなかったらいまもダメダメのままだったと思うよー)

(ていとく〜うでだいじょうぶ〜?)

 

「あぁ、大丈夫だよ、それより

軽巡棲姫の方を心配してあげて」

 

妖精達と対話している俺に、困惑した表情のまま、軽巡棲姫が口を開く

「…貴様ハ…何ダ…?

私ガシッテイル提督トハ違ウノカ…?」

 

「………うぅ〜ん、違うと言えば違うんだけど、同じとも言えるんだよね〜」

 

俺は軽く頭を擦りながら答える

「結局ドチラナノ!?」

 

イライラとした様子で叫ぶ軽巡棲姫

「あのね、生物的には同じ『人間』で

けど、年齢、性別、身分、門地と色々違うんだ、だから同じであり、違う存在

それに、俺は…いや、何でも無いよ」

 

「貴方ハ…妖精ニ守ラレタノ?」

「あぁ、多分そうなる、俺を守って

助けてくれたみたいだね、ありがとう」

 

妖精達の頭を撫でたりしながら

声をかける、もちろん言葉は

『ありがとう』

 

(いーってことよ!)

(それより、良いの?)

 

「何がだ?」

(せんだいさーん〜)

 

[うん…出てきてるよ、ごめんね提督、ちょっとだけでいいから、軽巡棲姫と二人でお話しさせて]

 

川内の真面目な声に、なんらかの譲れない理由を察して、俺はさっさと肉体を渡すことにした

 

「好きなだけどうぞ、俺はすることも終わったし、出来ることも何も無い、あとは姉妹水入らずだ]

[ありがとう提督、いつかこの恩は必ず返すよ」

 

笑顔で入れ替わる川内

そして、意識が…暗転した




軽巡棲姫は女騎士ではありませんよ

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
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