戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

226 / 649
対話:翼

「さて、鳳翔さん、単刀直入に言う

俺は貴女をこれ以上戦線に出せはしない

 

退役勧告は出している筈だが

答えを頂こうか」

 

鳳翔さんは、まっすぐ俺の目を見つめて

 

「はい、退役自体に異論はありません

ですが、条件が二つ」

 

「…言ってくれ」

 

「はい、まず一つ目は退役後に、

私の艤装を残しておいて欲しいのです」

 

鳳翔さんは、先程とは打って変わって

悲しげな目を下向ける

「…私の艤装は、未だ艦娘の邂逅が稀だった頃から、戦って来たものです

そして、傷つき倒れていった戦友たちの部品を、流用している

ですから、彼女たちの形見を

残しておいて欲しいのです」

 

「わかりました、そういう理由なら

否やはありません」

「ありがとうございます

二つ目に入ります…私はもう

鎮守府以外に生きる場所がありません

ですから」

 

「!」

殺せとでもいうつもりか、と身構える俺に、鳳翔さんは微笑む

「居酒屋の方に残らせて頂きたいのです」

「………ふぅ……」

 

長い溜息をつく俺を、

微笑ましいものを見る目で眺める鳳翔さん

 

「わかりました、いえ、むしろそれは

こちらから頼みたかった事です

今後とも、よろしくお願いします」

「こちらこそ、再雇用ありがとうございます…うふふっ」

 

鳳翔さんの笑顔を見ながら

俺は頭の中で今日話すべき内容の評価を上方修正しつつ、全体の構想を見直し始めた

 

「ええっと〜、軽巡棲姫と

鳳翔さんと、あと俺と…なんだっけ、あぁ出向組が帰還した報告だったな」

 

最近なにかと色々あり過ぎて

細かな話を詰めるのが難しいなぁ

 

「……よし」

 

原稿を書き上げて頭の中で一読する

無論、こんなものをいちいち読んでいる余裕はないため、全てを暗記することになるが

仕方ないし、そのくらいならば問題にもならない

 

そして、19:40を過ぎた頃

俺は講堂に移動して、

頭の中に写した原稿の内容を確認する

 

「20:00…時間です」

 

大淀の声に促され、俺は

講壇に登る

 

「艦娘のみんな、予定もあっただろうけど、急に集合させてすまない

今回の緊急集会は説明することが三つある、一つは」

 

ゆっくりと全員を見回して

俺は先を続ける

「他でもない、鳳翔さんの事、

日本最初の設計型を持つ彼女だ

……鳳翔さんこちらへ」

「…はい」

 

ゆっくり歩いて来た鳳翔さんに

そっとマイクを渡す

 

「ただいまご紹介に与りました

軽空母、鳳翔です

このような場を設けていただき

ありがとうございます」

 

優美に一礼する鳳翔さん

[なに見惚れてんの、ほら

もっと男らしくシャキッとする!]

 

おお、川内にどやされてしまった

[大丈夫だよ]

[ならよろしい]

 

川内に応えながら鳳翔さんの方へ

視線を戻す

「この場を借りて、

お話しさせていただきますのは

私の、退役についてです」

 

その言葉は、周囲全てを混乱に陥れた

「鳳翔さん、退役するのか!?」

「ほーしょーさん!」

 

ざわめく艦娘たちに、しかし

鳳翔さんは落ち着いた雰囲気で

 

「皆さん、落ち着いてください

私の退役は提督の提案です…

 

正直に言えば、

とうに私の体は限界を超えていますから、提督の退役勧告も当然の判断であると思います」

 

鳳翔さんは一旦言葉を切り

 

「……ご安心下さい、私は退役しますが、それはあくまで一線を退くというだけの話です、今後も

居酒屋の方には残りますし

大本営の方からも名誉職という形で留居するように指示されていますから」

 

さらにざわめく艦娘たち

「名誉職…」

「つまりどういう事っぽい?」

「戦わないけど鎮守府には残ってくれるって事だよ」

「大本営ね〜」

 

 

「もともと、私が転任してきたのは

退役する為のものでもありました

この度の退役勧告、否やはありません

…皆さん、今まで戦友として

ありがとうございましたら、これからはいきつけの居酒屋店員としてよろしくお願いします」

 

深々と一礼する鳳翔さん

そして、袖側に戻ってきた

 

そののちにマイクを返される

 

「ありがとうございました」

「こちらこそ、

ありがとうございました…さて、次だ」

 

鳳翔さんと交代して

再び俺が講壇に登る

「はい、静かに……よし、さて

鳳翔の退役の話は今聞いた通りだ

次の話に行くぞ…次の話題は

出向組の帰還についてだ、みんな

拍手で迎えてやってくれ…

といっても

天龍、扶桑、白露、五月雨の四人だけ

………五月雨がどうかしたか?」

 

みんな五月雨について

疑問を抱いたようであるが

俺はあえてそれをスルーした

 

「五月雨は、別の鎮守府に出向していた白露が連れて帰ってきた、今日から

正式に所属することになるから

みんなもよろしくな」

 

俺は講壇に五月雨を呼び

挨拶を促す

 

「ほら、五月雨…頑張って見て」

「ふぇっ!?」

 

テンパってんなぁ…

まぁそんなところも可愛いんだけど

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。