戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

234 / 649
鎮守府サイド

提督がドライブやら説明やらドタバタとしている一方で、鎮守府の方は

 

「榛名は時間が余ってしまいました…」

 

完全に平和だった

 

ずーっとただ執務室の隅の椅子に座っているだけの榛名は、そのまましばらくの時間を過ごして…正午を過ぎたあたりに

金剛が昼食に誘いに来るまで

何も考えていなかったのだが

 

「提督の処理待ち書類、結構溜まってますね、…後で榛名が片付けます」

「榛名?どうかしたノ?」

「いえ、なんでもありません」

 

提督の執務机に放り込まれた書類は

艦娘が訪れるたびに増加して行き

ついには『積み上がっている』と評するべき状態にまでなっていた

 

「……それではお姉様」

「Yes!一緒に行きマショー!」

 

和気藹々としているのは良いが

帰ってきた後も提督には仕事が待っている…

 

「榛名は何にしますカ?」

「はい、…そうですね、今日は

提督が帰ってくるまでは、ずっと待機ですから、軽く、おうどんとかにしようかと」

「oh…そんなトコまで提督を真似ちゃいけないデース!あの生活は体を壊しマース!」

 

金剛が榛名を叱る、

という貴重すぎるシーンを見落としてしまった提督は、きっと知らない方が幸せである

 

しかもその内容が自分の私生活をディスられていたと知った日には発狂である

 

「お昼デスし、プレート系が良いかもしれマセン…間宮サン」

「はいっ」

金剛は榛名のために昼食メニューを考えながら間宮に声をかけ、即座に返事が飛んでくる

 

「今日のオススメは何でショウ?」

「本日のオススメメニューはレタスと生ハムのピザとパングラタン、コーンスープと旬の野菜のサラダです」

 

間宮さんの淀みない声が

質問に答えを返し、それを聴いた金剛は榛名に選択肢を提示する

「さて、おすすめセットにするか

この(ブリティッシュ)お品書きから選ぶか、どっちかにするデース」

 

なぜ(ブリティッシュ)と限定されているのかは全くもって分からないが、とにかく

英国的であることはわかる

 

榛名は日本出身であるため、金剛型の血筋であるとはいえ、あまり英国に馴染みはない

 

よって、ここは

「オススメセットでお願いします」

「承りました」

 

実質一択であった

「ナズェオススメナンディス!?」

「ブリティッシュには馴染みがないので」

 

勢い余って日本語から逸脱し始めた金剛はやはりブリティッシュ品書きから

紅茶とマーマイトブレッド、フィッシュ&チップスを注文…それ昼食か?

などという無粋なツッコミは受け付けていないようだ

 

(榛名は一食なくても問題ないのですが…だめなのでしょうか?)

そんなことを考えてすらいない様子の榛名(いいこ)を尻目に、調理手順的な理由で素早く供されたブリティッシュな昼食に手をつける金剛

 

「お先に頂きます、デース」

「どうぞ」

 

事務的な返答を聴きながら

金剛は(自称)優雅な昼食をスタート

 

とはいえ、食べ方が汚いわけではない

ちゃんと作法の出来た食べ方であり、その辺りはさすが戦艦である

 

「…そういえば、提督の方が心配デース」

「4時間前からいらっしゃいませんから、なかなか帰ってきませんね」

 

実はこの時、提督も昼食をとっているという奇跡的な符号が起きているのだが

そんな事を知る由もなく

榛名も、蒼羅も

違う場所で、同じように穏やかに

昼食をとるのだった

 

side change

榛名side out

時雨side in

 

「はぁ……」

 

「またため息、どうしたの?時雨」

何度目かも数えていないため息をついた僕に声をかけてきたのは、白露型長姉

つまり僕にとっては唯一の姉である

ネームシップ、白露

 

「……提督」

「あぁ、そういえば時雨は提督にお熱なのね…提督は今日、一日中いないわよ?」

「だからだよ、提督の姿も匂いも足音も、感知できない…辛い…」

 

最後の辛いと共に、またため息をつく

「今日出撃がなくてよかったわね、こんな状態の時雨じゃ遠征にも連れ出せないわ」

「それはわかるっぽい、でも

寧ろ出撃中のピリッとした空気に当ててみた方が落ち着きそうでもあるっぽい」

 

独特の語尾と声音で答えながら

部屋に入ってきたのは、妹の夕立

夕立は扉を閉めるとすぐに

自分のベッドにダイブして

 

「最近すぐに髪が絡まるっぽい

提督さんに髪梳いてもらいたいっぽい」

 

「結局僕と同じじゃないか」

なんと、泣き言を言いだした

 

首だけでこちらを見た夕立は

「時雨とは違うっぽい、あくまで実利優先っぽい、提督じゃなくても

絡まらないようにして欲しいっぽい」

 

赤い目でこちらを見つめながら

そんな事を言いだした

「でもみんなトリミングスキルが足りないから、鹿島さんと提督しかできないっぽい」

 

足をバタバタさせる夕立

「はしたないわよ、やめなさい夕立」

「っぽ〜い」

 

辞める気のない返事でだらけている夕立

「提督さんいないっぽい、

やる気でないっぽ〜いっぽい」

 

うだうだと寝返りを打っている夕立

…あぁそうか、そういう事なら

 

「夕立、僕が髪を梳かしてあげる」

「提督…時雨にお願いするっぽい」

 

こちらに視線をちらっと飛ばした白露は知らないふりをしたようだ

「そういえば、五月雨はどうしたの?」

 

もう一人の妹のことを聞いてきた

「五月雨なら鎮守府本棟で研修中っぽい、これから暮らしていく鎮守府()の話だから、真面目に受けてるっぽい」

「五月雨なら研修があるよ」

 

僕らの答えは

白露の質問には十分であったらしく

頷く白露

 

「そうね、研修は重要だわ…」

「普段なら提督がカバーしてくれるけど、何もしないってわけもないか…」

 

久し振りに『五月雨』に会えたのに

遊ぶこそすらできないのか、と

今度は白露自身がため息をつく

 

「まぁ、仕方ないよ、一日中みんなで集まれる日なんて早々無いし」

「っぽ〜い」

 

白露型は性能もビジュアルも性格も水準が高いため、色々なところに駆り出される、そのせいで忙しいのだけど…

 

「……そっか、そうよね」

曇った表情を晴れ明かして、白露は立ち上がる

 

「提督がいなくても…一番で居られるように頑張らなきゃ!」

「…その意気だよ、白露」

「がんばるっぽ〜い」

 

立ち上がった白露に、声をかけたのだが

あまりにやる気のない声に

 

「時雨も夕立も頑張るのよ!」

 

無理やりに引っ張り起こされてしまった

 

「ほら!行きましょ!」

どうやら、やる気が出ないからと

寝て居られる日では無くなってしまったようだ…

 

「早く帰ってきてね、提督」

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。