戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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ビーザハウス

「ようやく帰って来た…マイ鎮守府…」

 

あのあと、室長から逃げながら鳳翔さんを連れて帰って来たのだが

鳳翔さんの退役について、上層部は否定的な意見だったようで、明らかに弁舌で長期戦に持ち込もうとしていたので

強引な理由付けで引っ張って来てしまったような覚えがあるのだが…

何言ったんだっけな…

 

「いとく…ていとく…提督!」

「ふぁいなんでしょう!?」

 

突然耳元で叫ばれた俺は

びくっ!と震えながら隣を振り向き

 

「どうしたんですか?もう」

鳳翔さんに腕をつつかれる

 

「何でもないです、えぇ何でも」

 

息を整えながら、前へと視線を戻し

鎮守府を見つめる

 

「よし」

深呼吸とともに、鎮守府本棟に入る

「!おかえり提督」

「おかえりなさいデース!」

「ようやくか、遅かったな」

「おかえりなさい、提督、鳳翔さん」

「二人ともおかえりっぽい!」

「あはは…みんな来すぎ…まぁいいや

おかえり提督、鳳翔さん」

 

その瞬間、扉の前で待っていた蒼龍以外の艦娘たちが飛び出してくる

 

最速で出て来たのは時雨、

…を飛び越えた金剛

 

 

後ろでは蒼龍と並んだ長門、大和

その間を縫って出て来たぽいぬ

 

「みんな来てるな…はいただいま」

まずは飛びかかってくる金剛のタックルを対空しゃがみジャンプで躱して、

時雨の鋭い視線を無視して

駆けてきた夕立を抱きとめる

 

「っぽーい♪」

「夕立、ただいま」

「おかえりっぽい!」

 

ぎゅーっと抱きついてくる夕立に

冷たい視線が突き刺さる

 

「夕立どいて、そこは僕の席だよ」

 

ついに言葉まで厳しくなってきた

そして険悪な空気が流れ…

 

「時雨?どうしたっぽい?それに

右腕空いてるっぽい」

「じゃあそっちにしとくよ」

 

どうも一瞬で和解したようだ

 

「えっと…」

「仲が良いのは結構だが、金剛も気にしてやってくれよ?臍を曲げられて

延々と恨み言を言われるのは沢山だ」

 

長門が蒼龍を連れてやってくる

「あぁ、わかった…でもパワーが強すぎて俺死にかねないんだけど」

「そこは技術と肉体の鍛え方でカバーだ、艦娘相手にならば負けても恥にならんとは思うなよ?」

 

片目を閉じて薄笑いを浮かべる長門

「いままで余り話してはいなかったが、戦艦も増えてきたところで

今一度存在を喧伝しようと思ってな

差し当たっては…柔道で鍛錬でもどうだ?鍛えてやる

「やめてください死んでしまいます」

 

素でお断りである

「長門さん、扶桑さん、金剛さん、私、ビスマルクさん、数えてみると、たしかに戦艦は増えましたけど、それでも個々が薄れるほど弱いメンツでは無いですよね」

 

ぽいぬと時雨を抱えたままで

移動して、

頭を打っている金剛を起こす

 

仰向けで白雪姫のように手を組んで、心なしか顎を出す姿勢だったのは

おそらく気のせいだろう

 

「提督はいけずデース!」

「意味わかって言ってる?」

「うっ…でもせっかくキス待ちだったノニ、普通に手を引っ張って起こすなんて

酷いと思いマース!」

 

金剛は俺に何を要求しているのだろうか

「どうでも良いことだよ、さぁ提督、早く執務室へ行こうか

仕事が待ってるよ」

「うわ…すっげぇ行きたくない」

 

時雨がくっつきながら言ってくるのは、実質死刑宣告である

 

ただでさて徹夜で式典なんてやってから長時間運転して限界にきているのだ

こんな状態で執務なんて

いつも以上に粗が出るに決まっている

 

「大丈夫だよ提督、

そのために僕達秘書艦がいるのさ

だから安心して、僕に全部を委ねてよ」

 

「あぁ〜いぃっすね〜…出来るかっ!」

 

いくら秘書艦でも流石に怒る…いやまず

昨日の秘書艦は榛名で、今日は蒼龍だ

ローテーションの予定は把握している

 

「そもそもお前、秘書艦じゃ無いだろ

前提から破綻している奴に書類を任せるわけにはいかないな」

軽く頬をつつきながら言い切る

「嘘つきは鎮守府に置けないぞ?時雨」

「提督…捨てないで!」

 

ギュッ!としがみつく力を強くする時雨

「別に捨てはしないから、落ち着け時雨、大丈夫だよ」

 

俺は時雨の頭を撫でて落ち着かせようとするが…

「捨てられる…いや…提督…だめ…」

 

なにかをブツブツと呟くばかりで

目の焦点があっていない

「時雨〜?…ダメっぽい、解体推奨っぽい」

 

「お前妹だろ!?そんなこと言うなよっ!」

「冗談っぽい、でももうすぐ冗談抜きでヤバいっぽい、現状でも刃物は持たせない方がいいっぽい」

 

さっと俺から…いや、()()()()離れる夕立

 

「提督、結論から言うと、修復は難しいっぽい、だからいっそ自分がいなきゃ何もできないくらいにドロドロに溶かすか、自分でなんでも出来るように自立させるかの二択っぽい」

 

急に怖いこと(雷理論)を言い出す夕立に、若干恐怖しながら、俺も時雨から離れる

 

「時雨」

「何提督?」

「いいか?よく聞いてくれ時雨

おまえは今、不安定な状態にあるようだ」

 

時雨に出来るだけゆっくりと声をかける

「お前はゆっくりも目を閉じるんだ…

いいね」

「了解」

 

 

さっとを目を閉じる時雨

の後ろに回り

 

「捕獲《キャプチャー》!」

後ろからキャッチする

 

「っ!?…提督?」

「おう、提督だよ、お前の提督だ

さて、もういいかな?執務室に行くぞ」

 

時雨を引いて執務室へと向かう…

その前に

 

「あっ!私声かけてもらってない!」

蒼龍の声が聞こえた…

 

「蒼龍、少し我慢してくれ

時雨のSAN値回復まで待ってくれ」

「時雨のSAN値?なにそれ」

 

未だ嘗てこんな純粋な反応が怖いなんて思ったことがなかったよ

 

[提督は純粋さとか無いからね〜]

[俺は純粋だオラ!]

[おっやる?いくら軽巡だからって艦娘のパワー相手に勝てると思わないでよね]

 

そのまま脳内戦闘に突入するすんでのところで、時雨と鳳翔さんの存在を思い出し

[…やめよう][…やめようか]

 

時雨を運ぶことを最優先とした

「提督…提督……」

 

震えている時雨を抱えたまま、俺は執務室へと向かった




一時間クオリティですので
内容はありません

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……

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