戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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ランナウェイ

「…訳がわからん…何故だ…」

 

鹿島は謎の沈黙ののちに

すごく慌てた表情で帰ってしまった…

どうしたのだろうか

 

「ティーセット置きっ放しだし

…普段のあいつらしくもない」

 

何かあった、とは思うが

その何かが掴めない…いや

掴まなくていいのかも知れない

 

[うんうん、少しは女の子のデリケートな扱いってやつに慣れてきたんじゃない?]

[扱いって言いかたは好きじゃないが

まぁ慣れてきたんなら良かった

ずっと同じ事で詰まっている訳にも行かないからな」

 

俺はさっと立ち上がって

食堂へ向かう…三時間経ってるなら

午後5時半なはず

 

夕食には間に合う

 

「あんまり腹減ってないな…」

[寝てたからだよ、

寝てればそりゃ省エネにもなるよ]

 

[そうか]

 

俺は言葉を切って、廊下に出た

 

「あ、司令官っ!」

「暁?どうした?」

 

ちょうど一歩出たところで暁に呼ばれる

 

「司令官を探してたのよ

ちょっとお話があるんだけど…」

 

爪先立ちになってこちらに手を伸ばす暁…なるほど

「耳を貸せ、と?良いよ」

「ありがとう、えっとね」

 

膝立ちで耳を貸して、

「牛乳飲んでるとおっぱい大きくなるって本当?」

「ぶっっ!お前!お前はいきなり何を言いだすか!」

 

俺は暁から離れて叱りつける

「それを聞くならほら!

もっと別の人にしろ!」

「だって龍田さんが『私は知らないけど〜提督に聞いてみたら〜?』って言ってたし」

 

龍田…お前か…

お前が犯人か…

「仕方ないな、暁

俺は男だから良くわからない、だから戦艦や重巡の人に聞きなさい

例えば…大和、愛宕、扶桑

ビスマルク、鈴谷、あとは…

鳳翔と間宮に聞くのもいいかもな」

 

さらっとキラーパスを投げつつ

方向性を限定しておく

これであらぬ方向に飛ぶことはないだろう

 

「わかったわ!大和さん、扶桑さん、ビスマルクさんに愛宕さん、鈴谷さん、鳳翔さん、間宮さんね!それじゃあ言ってみるわ!」

 

いうが早いか

パタパタと走り去った暁……

 

「あっ、死んだわ俺」

 

暁の状況次第によっては

説明を抜かして質問を始めかねない

 

ないと信じたいのだが…

「…暁の見識に期待する」

 

 

思考を放棄して夕食を取りに向かった

 

翌日

「提督っ!どういうことですか!」

「提督?暁にセクハラされたんだけどさ、提督が聞けって言ったらしいじゃん?」

「提督はその、そういうことに

興味がおありなんですか?」

 

俺は地獄に放り込まれていた

肩を掴んでくる大和、正面に位置取ってニヤニヤ笑いながら上目遣いの鈴谷

斜め後ろから聞いてくる扶桑

おそらく他の艦娘達も

この場にいないだけで似たような怒り方をしてくるだろう

 

「………はぁ」

困った…暁の見識に期待は失敗だったな

 

「その、提督」

「ん?どうした、扶桑さん」

 

「提督は…」

息を詰まらせるように声を止めた

扶桑は、ゆっくりと息を吸い直して

 

「提督は、胸が大きい方が良いんですか?」

「ごぶっ!んなわけ無いだろ!

別段サイズばかりを気にしてるわけじゃ無い!それにそもそもの話

俺は女性云々よりメンテをしていたいんだ、最終的にはどうだって良い」

 

コーヒーを吹き出しそうになりながらもなんとか耐えて、扶桑さんの質問に答える

 

「うっそだ〜提督私のおっぱいチラチラみてるし、絶対巨乳好きじゃん」

「そこっ!うるさいよ!」

取り敢えず鈴谷を黙らせる

 

「とにかく、俺は別段にサイズ間格差を敷いた事は無い、そもそも俺に聞くな!」

 

最後は半ば叫び声と化しているが

それを気にする余裕もない

内々に話を片付けなくてはならないからだ、それが出来なければ

 

外からの評価は、無知な駆逐艦をそそのかして戦艦の体型(婉曲表現)を聞き出そうとしたクズ提督である

 

それは流石に社会的に高評価はつかないだろう、一部社会を除いてはだが

 

「提督!私たちはイエスかノーで

聞いているんです!

大きい方が好きなんですか?それとも小さい方が好きなんですか?その二択です

さぁ、答えを出してください!」

 

大和勢いは凄まじい

さすが大戦艦なのだが、その二択は

いわゆる答えのない質問であり

明確に答えを宣言はできない

 

「…………」

返答に窮した俺の元に

三人の視線が突き刺さり

 

「失礼しま〜す、提督はいらっしゃ…」

 

そんなところに、福音が訪れた

「龍田っ!」

 

俺は叫び声と共に、ガバッと立ち上がると

執務室の机をジャンプで

一息に飛び越えて、龍田を扉と俺で挟んで逃がさない姿勢を取る

 

「壁ドンっていうの〜?」

「そんな事はどうだっていい!

正直に、本当のことを答えてくれ!

俺は、お前の…」

 

《……………》

 

一瞬、執務室の全員が沈黙する

「せいで迷惑してるんだよ!」

「えっ」

 

小さな驚愕の声は、

この場の誰があげたのだろうか

「…提督〜?その、迷惑ってなんの」

「お前が一番わかってるだろう!」

 

具体的には

(社会的な評価を犠牲にするので)

流石に言えないため

お前が思い出すんだよっ!形式をとる

 

「あ…でもあれば冗談で〜」

「その冗談が今この修羅場を作ってるんだよ!暁を利用して

鎮守府を撹乱しおって!

龍田!お前の一言が鎮守府全体に波及してるんだよ!」

 

ゴリゴリに押して無理やり

罪を認めさせる作戦である

 

「で、でも、戦艦とか重巡の『おっきい』人に聞けって言ったのは提督でしょ〜

私の言葉はあくまで提督にしか

対象を定めていないわけだし〜」

 

「提督…やっぱり」

大和呆れたような視線は今だけは

無視させてもらう

 

「俺は大きくなった軌跡について

聞けって言ったの!その過程で牛乳が要因として介在したかどうかを!そのサイズを聞けなんて言っちゃいないんだよ!」

 

………そもそも

暁が俺の言葉の意味を取り違えてる可能性もあるが、今回はそもそもの

原因がはっきりとしているため

それだけを責めることにした

 

「…それ私が悪いのかしら〜

…はぁ、まぁ仕方ないわ〜」

いつも通りのふわふわした笑顔を作り直した龍田は

「じゃあこの件は私が悪いけど

後ろでこわ〜い笑顔になってる戦艦組は提督のせいね〜」

 

するっと拘束(壁ドン)を抜けて逃げて行った

 

「あっ、待てえっ!」

「待つのは提督ですっ!」

 

第n回、鎮守府鬼ごっこ

ここに開幕

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……

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