戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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フリッパー

「ねぇ、提督?私たちは分かり合えると思うの、だからその、剣を納めて話し合いましょ」

「うるさい、もはや問答は無用だ!」

 

突然裏切りにあい、

信頼していたはずの鈴谷に罠に嵌められた俺は、しかし

 

危険を顧みずに罠ゾーンに突入してきた時雨の遺品となったナイフで

罠からの脱出を成功させ

急に猫なで声になった鈴谷に

怒りのままにナイフを突きつける

 

「おおっ!」

「きゃぁぁっ!」

 

俺はそのままナイフを突き刺して

心臓を貫かれた鈴谷は

 

ポリゴンのカケラになった

 

「あぁーあ、鈴谷のキャラ死んじゃった、せっかくレベル47まで行ったのに」

「ええい!俺の経験値奪って

強引なレベル上げなんてするからだ

報いを受けろ報いを」

 

[ゲームに時間かけるくらいなら夜戦しようよー提督ー?]

[今は鈴谷にお説教の時間だ

すまないが後にしてくれ]

 

川内の言葉を切って捨て

まずは寝落ちしている時雨を起こす

 

「おい、時雨、お前の遺してくれたナイフでそこの裏切り者を討伐出来たぞ」

 

すこし揺する、

「んぅ」

 

強めに揺する

「ん、らめ…まだぁ…」

さらに揺する

 

「あぁん」

「起きてるだろテメェ」

「バレていたのかい?いつから?」

 

手を離して声をかけると、すぐに目を開く時雨

 

「お前が謎の声を上げ始めた辺りからだ」

「最初からじゃないか、もっとゆっくり観察しても良かったんだよ?」

「いらねぇよ、それよりまず

鈴谷への仕返しタイムだ!」

 

ぱっと体を起こした時雨とともに

コントローラーを握り

明石が作ったシュミレーターに視線を戻す

 

「鈴谷もう経験値すっからかんだし、別に責められる要素なくない?」

 

震える声であらぬことを言い出す鈴谷だが

 

「お前なぁ、お前が俺から奪って行ったアイテム…ちゃんと返してもらうぞ」

 

俺が装備品やアイテムとして持っていたアレらにはちゃんとしたエピソードと、各々の記憶があるんだからな

 

「え?消えちゃってるよ?

だった鈴谷死んだし」

「プレイヤーキャラクター死亡時、アイテムはランダムに一定個数ドロップする

かつ、ドロップしなかったアイテムは完全消滅する、らしいよ

僕はナイフとポーションだけドロップしたね、提督が使ってるそれだけだよ」

 

時雨が冷たーい目でこちらを見る

 

「マジ?俺一回も死んでなかったから

所持アイテム全ドロップだと思ってた…マジか、って事は!」

 

俺は慌ててメニュー画面から

所持アイテムを確認して

 

「棒×2、ナイフ、鉄延棒×17、

木の長杖(ウッドスタッフ)に、戦鎌ヴァリオス、完全復活薬(エリクサー)戦乙女の祝福(ブレスオブザワルキューレ)

グリフォンの羽………大淀…お前の取ってくれた魔杖グシギ・バギン無くなっちまったよ」

 

幸いな事に、五月雨が合成アイテムを間違えて変異の長杖(ヴァリアブルワンド)の代わりに作ってしまった木の長杖(ウッドスタッフ)と大和がノーミス格闘乱戦の果てに獲得したエリクサーと

夕張が死神ロールで使っていたヴァリオスはドロップしてくれたようだが、

大淀が(明石の用意した)クッソ難しい論理パズルのダンジョンをサラッと突破して獲得した魔法の杖、グシギ・バギンはロスト、

 

同じく如月がスキル『魅了(チャーム)』の底上げに使っていた衣装アイテム『乙女の薄衣(ヴァージン・ヴェール)』もロストだ

 

ついでに鈴谷が高速移動に使っていた脚装備、グリフォンの羽はドロップした

「…また獲得か………」

 

論理パズルは答えを覚えているからまだなんとかなるかもしれないが

乙女の薄衣の方は、職業踊り子の女性キャラの初期装備、『踊り子の服』を強化した果てに完成する高位のコモンアイテム、それだけにクエストリワードのような獲得方法はない

 

「提督が消したんだよー?ほらそういう時はなんていうの?ほらほら〜

なんて言うの?」

「うるさい、お前が原因だろうが」

 

すかさず煽りにきた鈴谷をはたく

[いっくら入渠中の暇つぶしって言ったって、ファンタジー系のゲームでアイテムロストは辛いよ?ちゃんと謝りなよ?提督]

 

[わかってるよ、これについては

仕様の確認を怠った俺のミスだ

ちゃんと俺から如月なら謝るさ]

 

最近顔を合わせていないが、ゲームのキャラは としては割と協力やアイテムトレードなど、色々していた如月に

どう言って装備ロストを謝るか考えていると、その背後から

時雨が擦り寄ってくる

 

「提督、僕も装備無くなってるんだよ?提督にアイテムの取り直し、手伝ってほしいな」

つぶらな瞳がこちらを見上げる!

 

こうかはばつぐんだ!

 

「くっ、認めるほかあるまい

お前のレア装備って、なんかあったか?」

「僕は量産品のナイフを投擲で使い捨てるスタイルだったから、特にレア装備はないよ、でも資金と錬金スキルは貯め直しかな」

 

時雨は一次職業の暗殺者であり

暗殺者のクラスレベルがマスター前であるため、二つ目の職業は無い

錬金術師を取っていれば保持されるのだが、職業と関係のないスキルはデスペナルティに関係なく消滅してしまうのだとか

 

「ハードだなぁ…」

 

スキルレベル上げの苦行を思い出す

 

ついでに鈴谷は

『狩人』と『暗殺者』の二次職業

猟兵(イェーガー)』を取得しているほか

俺は一次職業『先導者』のレベル上げで解放される『司令官(コマンダー)』を取得している

 

まぁプレイ時間が長いからだが

 

他には『剣士』『槍使い』の『重戦士(ヘビーウォーリア)

『拳士』『射手』の『超能力者(サイキック)

如月が取得している『暗殺者』『伝令』の『密偵(スパイ)

金剛が取得している『拳士』『盾使い』の『番人(ゲートキーパー)

 

俺のもう一つのデータで川内が取得した『暗殺者』『拳士』の『忍者(ニンジャ)

さまざまな職業がある

 

俺の司令官(コマンダー)は特殊で、全ての一次職業のスキルを習得可能だが、二次職業にもかかわらず、ステータスは一次職業並みであり

能力そのものは他の特化型二次職業に比べれば低い

特筆すべき点として、

『指揮』スキルで味方のステータスを底上げできるという、仲間との協力を前提とした職業だ

 

 

突然の裏切りには弱いが

 

「それじゃあ行こっか、まずは僕のキャラのステータス上げだね」

「おう、低レベル帯でも指揮なら問題ないから高圧レベリングな?いざとなったら『奇術師』とか『射手』とかのスキルで支援するから」

「りょーかい、それじゃあ

錬金スキル獲得に向けて頑張ろう

ね♪提督っ」

 

声を弾ませる時雨

……何故俺の肩に首を乗せる?

 

「そこに提督がいるから、じゃあダメ?」

「なら俺は離れるぞ?」

 

「鈴谷もレベル無くなっちゃったし!提督にニーソ取られたんだから!

レベル上げ手伝ってよね!」

「誰がニーソなんか取った!

俺が取ったのはグリフォンの羽だ!」

 

突然後ろから鈴谷が飛びついてきた

「キャラ画像的にはニーソじゃん!ほらほら提督〜鈴谷が今さっきまで履いてたニーソの感触はどうよ?感想を述べよっ!」

 

「ゲームキャラに感触などあるかっ!」

 

叫び声とともに、夜は過ぎていく

 

レベル上げとアイテム獲得に気を取られて夕食に遅刻しかけたのは三人だけの秘密だ

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……

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