戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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企て

「………挙句コレデスカ…」

 

「榛名は悪くないんだよ、大淀が言ってくるのが悪いんだ…」

 

ぐてっと机に伏して言葉を吐き出す

「せっかく感動シーンなのにさ…」

 

「感動ハ兎トモカク、ソレハ提督ガ変ニ慌テルノガ問題ダト思ウワ、提督ガ泰然トシテイレバ、少ナクトモ騒ガレズニ済ンダハズヨ」

「まぁそれはそうかもしれないよ…でもさぁ、それは反応しない方が人間的におかしいんだよ…」

 

ぐええぇ、とやる気のない声と共に上体を起こして、机の上に重なった書類を片付ける事に、再び集中する

 

「神通棲姫ぃ〜お前ちょっと夜付き合えよ〜」

「『パワハラ』トイウ言葉ヲゴ存知?」

 

酒に手を出す覚悟で声をかけてみたら、あっさりお断りされてしまった

 

「これが魅力値不足の末路…イケメンに限るっ!」

 

嘆きながら書類をまとめて

サインを書きつつ思考を巡らせる

 

「金はあるからなぁ…よし、

計画書はこれでよし、企画はもう通してるし、大淀の方にも話がついてる

完璧だ、全てこれでいい」

 

机の上で手を組み、

ゲンドウのポーズをとる

 

[それはキースのセリフだよ…?]

[いいんだよ、それは気にするべき点ではない、そんな事はどうだっていいんだ]

 

俺は言葉を切って立ち上がり

事前に調べていたリストに目を通す

 

「予算は年単位で組んでる、最初から織り込み済みだ、だが……結構嵩む……」

 

「ソレハ…何デショウ?」

 

軽巡棲姫がこちらを覗き込んでくるが、見せる訳にはいかない

必要な場合以外は如何なる状況下においても公開はしないと約束している代物だ

 

「すまんな、これは見せられない

艦娘達との約束があるんだ…おっと、深海棲艦にも聞いたぞ?」

 

首をかしげる軽巡棲姫に

暖かい視線を向けつつ

「大丈夫、これは俺が処理する問題だから、軽巡棲姫はそっちの山を頼むよ」

 

さりげなくカバーする

 

今日は大淀が非番でいないので、(ちゃんと許可を取って)軽巡棲姫に手伝ってもらっている

 

前回ので怒られたので、俺が直接金銭管理を行なっている

 

リストを眺めながら

やるべき事は多いが、一応の目処はついているし、大分前から要望は出しているため

いざとなって手に入らない事はない

 

予算内でなんとかやりくりを進める

 

「…っぽい!提督さーん!」

その時、執務室に訪れたのは

当然ながら夕立、

もはや説明不要のぽいぬである

 

「遊ぼっぽい!」「ごめん、仕事がある」

「むぅ…最近ずっと忙しそうで声かけられなかったっぽい、執務室にもいない時間が多かったっぽい」

 

不服そうな表情になる夕立

「それでもだ、この仕事は大切だからな…忙しいのは当然だ、夕立?」

 

不服そうな表情を消した夕立は

机を回り込んで、

俺の肩に手をかけて背中に登る

 

「おい夕立」

 

肩に登った夕立を抱えて下ろし

腕を下ろしたところ、また登られる

 

「提督さんでアスレチックっぽい」

「よせ」

 

肩に登るな肩に、重いから

「失礼しちゃうっぽい!」

心を読んだ…だと?!

 

「提督さんの考えてる事くらい匂いでわかるっぽい、今は夕立重いって思ってたっぽい!」

「正確だなっ!?」

 

「やっぱり思ってたっぽい!女の子にはそんな事考えちゃいけないっぽい!」

肩によじ登りながら注意してくる夕立

 

[お前そんな動きするやつを女の子とか認めると思ってるのか?]

[それは可哀想じゃん?ちゃんと認知してあげなよ提督〜、貴方の(艦娘)よ?]

[お前なに言ってんだよ、俺の子供はもっとお淑やかな子に育てんだよ]

 

具体的には春雨

 

[うわっ、出たよ子供の性格を親が決められるとか思ってるタイプ…もっと自由にさせてあげなきゃ長所を伸ばせないよ?]

 

[長所を伸ばす方針でお前が出来たのなら俺は間違いなく春雨ルートを推す]

 

「提督、ソノ、夕立チャンガ遂ニ首ニ…」

「っぽ〜い」

 

[………やめよう、この話は]

[そうだね、まずやるべきは…]

 

[[夕立をどかす事]]

 

二人の意見が一致すると共に

体を半々で動かして

 

左手はリストを守り、右手は夕立を捕まえる

 

「っ?!っぽーい!」

空中に浮かぶ経験はあんまりなかったのか、バタバタし始める夕立を

そのまま掴み上げて

強制空中遊泳させつつ

 

引き離して…

 

「サヨナラ!」

落とす

 

「グワーッぽい!」

床に胴体着陸しつつ叫ぶ夕立

全く効いていないようだ

 

「暇があったら散歩に付き合ってやるから、今はよせ、あんまりふざけてると…」

 

夕立は正座を崩した座りに手をついた姿勢で上体を起こして…きょとんとした目でこちらを見上げる

 

俺は答えを明示することなく

ただ立ち上がり、後ろの窓を開ける

 

「提督?風ガ冷タイ…ッテマサカ!」

「その通りだ軽巡棲姫、さぁ夕立、さっきのスカイダイビングをもう一回、

()()()()の場所から体験してみるか?」

 

夕立がちょっと震えているのは

風が冷たいせいだけでは無いだろう

 

「え、遠慮するっぽい!」

「なら良いんだ、さぁ、また後で遊んであげるから、今は静かにね?」

 

パタパタと去っていく夕立…脅しすぎたかな?座った状態じゃあ効かなかったから、今度は立ってからやろうと言っただけなんだが

 

[悪意的なバイアスがかかってる事は否定しないのかな?]

[向こうがそう感じたってだけの話だ、そのくらい認識の誤差だよ誤差]

 

[随分な誤差だと思うけど…嫌われちゃうよ?]

[今はこっちの書類とリスト、あとはアレが先決だ、夕立に嫌われたとしたら…

後でトリミングでもしてやるさ]

 

最近髪が乱れている事が多いから

じっくりとな…

 

「…ハァ、本当ニヤル気カト思ッタワ…怖イ事スルノネ」

「躾は重要だって、鳳翔さんに教わってるんだ、飴ばかりじゃなく、鞭もまた、必要な時はある」

 

努めて平静に答えつつ

()()()()()()()()()を考え出す

さぁ、明日は忙しくなるぞ…

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……

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