戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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微笑みの陰

「……さて、クリスマスも終わり、次は年末と正月か…これはこれでイベントとして

…というか年末年始の一大行事としてあるからなぁ」

 

年末忙しいのはクリスマスやら正月やらの在庫整理に新規入荷にと追われる管理

 

「っぁあ〜〜…クッソ…体調が上がらん…」

 

年末行事の翌日だが、体調が良くない

…まぁ、明確に異常があるわけではないから、これもまた耐えられる

 

 

軽巡棲姫と空母棲鬼から聞くところによると、新年やクリスマスは深海棲艦側も

『そういう気分』らしく

 

出てくる棲艦達も、暇な生活の楽しみとして艦娘と戦っている輩や砲弾をクリスマスプレゼントと言い張るようなやつばかりらしい

 

逆に聖夜を静かに過ごしたい棲艦達は海域の奥に引っ込んで島などのテリトリーで

ゆっくりと過ごしているんだとか

 

血の気の多い奴ばかりが前に出る分、全体的な数は少なくなる

年末年始だからと鎮守府を休めるわけではないが、そういう『波』がある以上

こちら側も休めるときに休むべき

 

「というわけで…

鎮守府営業は終了しました」

 

[ちょっと提督っ!?]

「はは…冗談だよ、流石に冗談だ

体調が悪いとジョークも重くなるんだな…まぁいいや

 

今日はメンテはお休みだ、

執務の方に集中してさっさと終わらせて寝るさ」

 

「そうだね、提督は早く寝たほうがいいよ、僕も一緒に寝てあげるから」

「おっそうだな……時雨っ?!」

 

突然現れた…っ!?不味い!

[さっき提督!私と話してる時声出してたじゃん!バカッ!]

[ヤバイぞ何もないところで突然話し出す変人扱いだぞこれっ!]

 

俺と川内の慌てようも知らずに

疑いの視線を向けてくる時雨

 

「…ねぇ、提督?」「なんだ?」

 

全力で姿を取り繕い、『自然にならない』ことで適度に動揺を見せる

 

不自然を消し過ぎると逆に疑われる

だから敢えて少しだけ不自然さを残す

 

「さっき、誰と話してたの?

僕の目には空気しか映っていなかったんだけど」

 

やはり、声は冷たい

 

「…それはだな………俺の」

「そういうのはいいから、本当のこと言って」

 

このタイミングだ、ここで俺は

トラップカードをオープン!

 

「俺のイマジナリーフレンドだ、名前はコウノ、何か?」

 

「…………提督、僕の目を見て」

じっとこちらを見つめてくる時雨

……その目をまっすぐに見つめる

 

[オラ!催眠!]

[謎の疾走感やめい、さて、しぐしぐの眼孔の奥の感光細胞まで見つめてるが…]

 

今度こそ完璧にステルシーに会話する

 

「提督の目は…なにか、別の感じがするんだ、…なんだろうね、提督

嘘をついているようで、違うような…」

 

そりゃあ半分嘘で半分本当ですから

 

「……提督……」

徐々に近づいてくる時雨

「……」

 

「提督の目……」

こっちの目をガン見しながら徐々に近づいてくるのは何故だろうな時雨?

 

「提督への愛の表現だよ、その程度のことをあんまり気にしちゃいけないよ、提督」

 

徐々にどころか

最接近状態になる時雨

 

「ん、もっとみせて」

 

身長的に俺の胸の前くらいに頭がくるのだが、そこからほぼ真上に見上げてくる

 

「蒼くて、暗くて、静かで…」

 

こちらを見上げながら、呟く時雨

「提督?」

「どうかしたか?」

 

俺が問い返すと、急に黙り込み

顔を正面に戻して、

俺の軍服に顔を埋める

 

「提督って、オッドアイだったんだね」

「…?」

 

「提督の目、左右で虹彩の色が違う、左は少しだけ明るいよ

ずっと見てきたつもりだったのに

こんな事を見落としているなんてね

…やっぱり、温故知新というのは本当だね、提督」

 

「…その四字熟語をここで聞くことになるとは思っていなかったよ」

 

執務室でまで活用される単語だとは思っていなかったのだが…

 

「僕はこの熟語、好きだよ

単語として活用するケースは少ないけど『故きを温めて新しきを知る』これは重要なことだと思う、神風達とかの持っている、いわゆる『古い知恵』は経験から導き出された法則性に則っているから

一見どうって事ない迷信に、誰も知らない真理を内包している事も珍しくない」

 

「随分とまた達観した見方だな、それはそれでか…で?」

 

俺は時雨を引っ張り剥がして

執務に戻る

 

今度は完璧に自然体にだ

「気は済んだか?」

「ううん、まだだよ提督」

 

今度は何を思ったのか

俺の膝に座ってくる時雨

 

「……なぜ膝に乗る」

「提督の監視のため、暁と陽炎と一緒に、提督の監視任務を遂行しているんだ

今日は僕が担当だから

()()()()()()()()()()()()?」

 

尋常ではない角度で首を曲げた時雨に、至近距離から見つめられる

 

「………」

[え?時雨?…怖いよ?]

[諦めろ、結構前から時雨はこんな感じだ、俺はもう諦めた]

 

「仕事が終わるまでは逃げないから、大丈夫だよ」

 

ぎゅっと時雨を抱きしめて

優しく撫でながら

執務を再開する

 

「………よし、午前最初の一ファイル終了っ!時雨」

「ん?どうしたの?提督」

 

腕の中でこちらに身を預けながら

声だけを流す時雨

 

「夕立を呼んでくれ、

以前の約束通りにトリミングだ」

 

こないだはちょっと強引に帰してしまったし、お詫びも兼ねてトリミングといこう

 

「提督……僕もいいかな?」

「別にいいが、お前は直毛だし、そもそもあんまり絡む体質じゃないだろ」

 

俺の指摘に一瞬身を震わせた時雨は

「…いいんだよそんな事、僕は提督に髪を梳いて欲しいんだ」

 

少しだけ拗ねた様子で

こちらを見つめる

 

「……わかったよ俺の負けだ

二人まとめてやるから、ちゃんと呼んできてくれな?朝飯後にやるから」

 

「わかった♪まってるよ」

 

急に上機嫌になる時雨

…ちなみに、朝食は和テイスト

クリスマス会から洋風が続いた分らしい

 

「味噌汁温かいなぁ…」

 

「毎日作ってもいいんですけどね、合う合わないはどうしてもありますし…」

 

味噌汁はうまいが、それより

間宮さんの笑顔は毎日の励みになる

これ見てれば辛い日々も頑張れる

 

 

そんな気分になれる

「ごちそうさまでした、卵焼き美味しかったよ」

 

玉ねぎを刻み込んでくるとは予想外だった、おかげで卵焼きらしからぬ歯応えに一瞬面食らったが、それもまた楽しみだ

 

「お粗末様でした、提督は毎日美味しそうに食べてくださいますから、

こちらとしても楽しみです…うふふっ」

 

微笑む間宮さん

あぁ〜浄化される〜…

 

[はいはい、提督、時雨たちにトリミングするんでしょ?急がなきゃね]

[おうおう、わかってるよ

それじゃあ行こうか]

 

俺は、さっさとトレーを片付けて

執務室に急いだ

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
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