戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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グルーミング

「っぽ〜い♪」

 

ご機嫌な夕立を見ると

僕も楽しくなってくる

 

やっぱり提督は天然テクニシャンなのかな?それともいっぱい練習して上手くなったのかな

 

提督のトリミングは夕立がご機嫌になる程上手いのは見ればわかる

 

夕立が髪をさわらせる人は少ない

頭を撫でさせる人はいるかもしれないが、髪に触れるとなると、そのハードルは大きく上がる

 

「…ふふっ」

 

不覚にも笑ってしまった

 

「どうかしたっぽい?」

「いや、ちょっと、ね」

 

さらっと流して夕立をごまかし

「さぁ、行こうよ

提督も朝ごはんは食べ終えた頃だよ」

 

一言だして誘導する

ごめんね、夕立

 

ちょっとだけ利用させてもらうよ

 

「……可愛い妹を利用するなんて、僕は歪んでるのかな…」

 

でも、良いよね

提督は、

それでも受け入れてくれるよね

 

「待っててね、提督」

 

歪んでしまった僕だけど

それでもこの胸の想いだけは変わらない

提督と、()()()()()()居たい

 

「大好きだよ、提督」

 

最後は特別小さな声で

誰にも聞こえないように、呟く

 

そのあと、一緒に執務室に行って

まだ来ていなかった提督を待つ事にして、20分51秒ほど待ったところ…

 

 

「うぉ、お前らもういたのか」

「いたよ、結構前から」

 

提督が帰って来た

「さぁ、提督 約束通りにトリミングしてもらいに来たっぽい!」

「僕も一緒に、髪を梳いて」

 

「お前は随分グイグイ来るようになったな…まぁいいけど」

開口一番にトリミングを頼む夕立と、それに便乗する僕

 

提督は少し呆れたような表情になりながらも、受け入れてくれた

「じゃあ道具とか用意するから、お前たちはそこの椅子に座って待ってな」

 

「わかったっぽい!」

「うん」

 

僕たちもそれに従い、執務室を出ていく提督を見送る

 

「楽しみっぽい?」

「それはまぁ、ね

夕立がそんなに楽しそうにしているんだから、僕も楽しみになるさ」

 

そして僕はまた少し、嘘をつく

 

「……ほいよ、っと

まずは夕立だ、さ、こっち来て」

 

提督が夕立を手招きして

夕立はそれに吸い寄せられるように椅子にすわる

「いいか時雨?」

 

夕立が椅子に座った直後、僕に向けて

提督の言葉が放たれる

 

「トリミングってのは、本来の定義的にはいわば散髪なんだが、艦娘の髪型は基本的に変わらない。だから髪を切ろうが染めようが

すぐに元の形に戻ってしまう」

 

言いながら提督はハサミを取り出し

櫛とスプレーで夕立の髪を整え

 

「くすぐったいっぽ〜い」

楽しそうな夕立の髪を、少しずつ切っていく

 

「だが、艦娘の髪とて完全に固定されているわけでもなければ、汚れないわけでもない」

 

提督は口と手を同時に

しかし正確に動かしながら

夕立の髪を切る

 

「だからこうやって、傷んでしまっている枝毛などを揃えてやるんだ」

 

「へぇ………」

 

僕が声を漏らすと、提督は

笑いながら教えてくれた

 

トリミングとは

除去を意味する単語であり

 

犬などの毛を処理する事で

結果的に清潔を維持する処置らしい

 

「正確には髪を梳くのは『グルーミング』という、まぁ、知らなくてもいい事だけど」

 

提督は手早く、しかし丁寧に(夕立の楽しそうな表情が証拠)毛先や箇所の傷みを見極めて、切るべき部分を切っていく…全体的に短くなった髪は

しかし夕立自身の修復能力で徐々に伸びていき、半日と経たずに元の髪型に戻るらしい

 

髪染めも試してみたが、

約二時間で消えてしまったとのこと

「僕も金髪とか出来るのかと思ったけど、やっぱりすぐに戻っちゃうんだね」

「残念ながら、な」

 

提督は夕立の髪を切り終わると

次に僕の方に手招きした

 

「ほれ、お前も来な、

お望み通り髪切ってやるよ…夕立、寝るな」

 

頭をカクカクしている夕立に声をかけて、起きなさそうだと思ったのか

提督は執務用の机とセットの椅子を動かして、夕立のとなりに据える

 

「これでいいかな?座って」

「うん」

 

僕もいちいち考えずに、提督の指示に従う

 

「よろしくお願いします」

「ははっ、すぐ終わるよ」

 

柄にもなく、少し緊張してしまった僕の声に、笑って返しながら

提督は支度を始める

 

提督は仕事をするときと、

普段で動きが違う

 

普段は気が抜けている、とかそういう意味ではなく、なんというか、仕事の時は

『自分の体を完璧に操っている』ような感じがするのだ

 

機械のように正確に、自分の体を扱って、稼働率や速度を完璧に引き出している

 

それはとても難しいことだ

 

「それじゃあ髪、触っていくよ

まずは水気を付けて、髪を整えやすくしてから、状態を見極めるから」

 

「うん、提督」

 

提督が僕の後ろから囁く

その声はとても優しく、甘やかで、吐息に乗って提督の(コトバ)が伝わってくる

 

「それじゃ、始めるよ」

 

キャビネットに置かれたスプレーやハサミが、妖しく輝いた

 

提督の手が、指が、僕の髪に触れる

その瞬間、全身にピリッと

電気が流れる

 

「んっ」

 

わずかに声が出てしまったらしい

「どうした?」

「なんでもないよ」

慌てて取り繕う

 

「そうか」

提督は短い一言で問答を切り上げて

ふたたび手を動かし始めた

 

「あっ…ふぁぁっ…」

ゆっくりと、素早く

強弱をつけて、絶妙なタイミングで

欲しいところを責めてくる

 

僕は耐えきれずに何度も震えて、声を漏らしかけて、その度に必死で誤魔化す

 

そして、やがて

その指遣いは残酷なほどに正確に

僕の一番弱いところを責め始めた

 

「んぁ…んくっ」

ダメ、耐えないと…声は…

反応を返しちゃダメ!

 

必死で耐える僕に、

提督はふたたび囁いて来た

「ふふっ、気持ちいいかな?時雨」

「ぁ……」

 

もうダメだ、その問いは、

もう欺けない

 

僕にとって、もっとも有効な(こえ)

僕の思考力を一瞬にして奪い去って

 

「きもち…いい、ていとく…

もっと…シて…」

「承った」

 

僕は…自ら望んで、絶対に逃れられない場所へと堕ちた

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
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