戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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白と黒

「貴様ァッ!」

 

「終わりだ」

 

リ級に向けて、全力の右ストレート

「アマイ!私トテ格闘ヲ知ラヌワケデハ無イ!」

「ほう…ナらば…」

 

帽子を外して、放り投げる

全く気の入っていないその動作に

無反応のリ級

 

そして、落ちてきた帽子が互いの視線を遮った瞬間に、状況は動いた

 

「っ!」「ッ!」

 

リ級は魚雷発射管を

装弾し、構えて、狙い、撃つ

この4ステップを今までの生涯最速で、完璧に成し遂げ

 

ある種の達成感すら感じながら

右腕を爆砕された

 

「グッガァァアッ!」

 

「島風の雷装を甘く見たな」

俺は笑いながら右腕を振り

札式の九九艦爆を解放

 

同時に榛名の監視任務から解放されて、俺の帽子に戻ってきた白タコヤキが

先陣を切って飛翔する

 

「ぴっぎぎぃいっ!」

 

「ぴぢぃ!」「ぴききぃっ」「びぐぅ」

「びむぴむ」「ぴっぎぃ!」「ぷぎゃー」

 

次々に分身する白タコヤキ

オリジナル以外の6匹がさらに分身して12機編隊を組み、先頭にオリジナルが付く

 

種別は艦爆であるため

攻撃性能は高いが、空対空の戦闘は想定していないようだ、多少のアドリブを効かせた程度の教科書通りの回避運動にすれ違いざまの吶喊爆撃

 

それくらいしか攻撃手段はない

…上をとってから対艦魚雷での狙い撃ちも出来るといえば出来るらしいが

それが費用に見合った効果を出せるかといえば…あくまで緊急的手段といった所だ

 

「…まぁ、今回は対艦戦闘」

 

俺の意思に関係なく動くこいつらは

操作系統が一本化されていないという辺りがポイントとなる、

俺の認識外の領域でも平然と動ける上に、予想外の動きを取ることができる

という利点ばかりが出てくるだろう

 

「砕ケ散れ」

 

俺が親指を立てた右手を突き下ろすのと同時に、爆撃が開始される

 

「対空ハ不利…ッ!ダガッ!」

 

副砲をうまく利用して空中で誘爆させ

九九の落とす爆弾の大部分を処理して見せたリ級、流石の達人だが

 

「ぴっぎぃ!」

その瞬間、爆風から飛び出した白タコヤキが急降下爆撃を敢行

 

副砲をリ級の足装甲ごと破壊する

 

「ッ!クソッ!」

「まだまだ…簡単に殺すワケねぇだろ」

 

俺は加速して接近し

再び装填を済ませた魚雷発射管を携えた脚で、オーバーヘッドキック

 

同時にその下を潜り抜けた零戦八機が機銃掃射を行い、ただでさえ装甲の薄い

リ級の腹に打撃を加えて

 

「死に晒せ」

オーバーヘッドキックが命中すると同時に、魚雷の接触信管が起動

 

俺はそれと同時に魚雷を投下してそのまま足を振り抜き、リ級の首を蹴り飛ばして

反動で離脱する

 

爆発、胸に捻じ込まれた魚雷をどうこうという暇は流石になかったようで

素直に爆発してくれたようだ

 

「…フッ…死んだか…」

 

俺は爆死を確信して、艦隊に戻るべく

反転し…

「マダダァッ!」

血を吐くような叫び声と共に

背後から砲撃された

 

砲撃自体は左腕で受け止める

「…ッ…クソ…」

 

本当に最後の一撃だったのだろう

見る間にリ級の艤装は自壊していく

 

「フラグシップの意地、とでも言うつもりか?」

 

だが、黙って沈む様子を眺めるというのも格好がつかない、なにより

「俺の艦隊に手を出して…ゆっくり沈めルなんて思うなよ」

 

この激情は収まらない

 

「はぁっ!」

左腕のオーラを具現化させ、骨まで砕かれた状態から一気に再生を終える

そしてそのまま

白く染まった左腕で

 

リ級の首を掴み、締め上げる

「グゥァ……ゥ……」

 

「死ね」

 

ゴキリ、とあっけなく、首を折る

目から光が消えたリ級を

そのまま投げ飛ばし、

 

人形のように無様に着水したリ級を

リ級自身から奪った高速深海魚雷で爆砕する

 

「雷撃処分…完了」

 

さて、俺が向こうの一体を引っ張ってきたとは言え、向こうには戦艦がいた

苦戦してしまっているだろうか

 

少し心配だ…

 

[い、く…ていとく…提督っ!]

[ん?なんだ?]

 

慌てたような川内の声

 

[なんだじゃ無い!急に全然答えなくなって!何があったの?!]

[……別に、何もなかったよ]

 

あぁ、別に

どうということはなかった、

何がしかの問題があったわけでも無い

ただ粛々と、敵を殺した

それだけだ

 

「おーい!鈴谷ー!暁ー!」

「ていとくっ!?」

 

どうやら夜戦を終えたらしい艦隊を迎える…いや、今回の場合は

俺が合流する、というべきかな?

[そうだねぇ、それが妥当だと思う]

 

[ていとく…怖い…]

[ん?どうした、島風]

 

頭の中で、自慢の足を畳んで座り込んでいる島風に声をかける

 

[さっきの提督…とっても冷たい目だった、アレは嫌な提督…]

[…そうか]

 

それっきり黙ってしまったので

島風との会話を打ち切る

 

「急にリ級と艦隊抜けてった時はどうする事かと思ったよー?心配させてーこの!」

 

「背を叩くな…この儀装はちょっとバランスがピーキーなんだ、それにドラム缶には鋼材とか詰んでるんだぞ]

 

貴重な資源なんだぞ、言いながら

鈴谷の元を離れ、最後尾へと戻る

 

「提督、顔色がすぐれませんが

お体に障りはありませんか?」

 

そっと近づいてきた愛宕は

俺の手を取る

「提督はただでさえ防御面に不安があるんです、大型艦相手に一人で突出なんて

もうしないでくださいね?」

 

手を胸元に寄せてからの上目遣い

これは必殺のコンボだな…

 

[提督〜?おっぱいエロ魔人〜]

「なんだその不名誉すぎる呼び名!?それは愛宕につけてやれ!]

 

エロサキュバスとばかりにさぞ似合うだろう…いや、彼女のあだ名は

おっぱい怪獣アタゴンで固定だが

 

「いや、とにかく問題はない、大型艦相手でも小型艦相手でも変わりはしないさ」

 

どうせ紙装甲なんだから、食らったら終わりの戦い、オワタ式そのもの

ならむしろ

理論的に行動する大型艦の方が

行動が予測しやすい分やりやすい

 

「…………提督………」

 

心配そうな表情は変えられなかったか

…すまないな

 

「大丈夫だよ、俺はまだ」

 

ならせめて、と俺は笑顔を作る

この作戦は失敗するわけにはいかない

 

一刻も早く成果を上げなくては

大本営に難癖をつけられる可能性もある

…急がなくては

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……

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