戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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ステップアップ

笑いながら、剣を掴み、引き抜く

もちろんそれはへ級の足につながっていて、

 

へ級ごと姿勢を崩させて

 

「ゔぉぉっ!」

凄まじい絶叫と共に、へ級を投げ飛ばす

 

「お前ごときいっ!」

 

提督は、そのまま大顎で噛みつき

片腕を奪うことに成功する

 

「グガァッ…グッ…」

 

弱い声とともに、距離を取ってくるへ級

提督はそれに追撃を仕掛けず

当然のごとく見送る

 

「提督…」

私は動かない体を無理やり動かして

提督の隣に立つ

 

 

「ごふっ…スマん…鈴谷」

「!」

いままで、なんの気負いもなく立っていた提督が急に倒れこむ、そう

 

提督は、刺された傷から血を零しながら、それでも気力で戦っていたのだ

そんな無茶が長く持つはずも無い

 

「む…身体が動かないか…」

 

「提督!何やってんのよ!」

ばか提督!思いっきり罵りながら

傷の状態を確認する

 

貫通した刺し傷、薄く、広い形状

おそらくどこかの動脈を切った

……素人()じゃあ処置できない

 

提督を動かすのは危険すぎる

鎮守府に連絡して避難艇を出してもらう必要がある、

 

でもそのためにも

まずはアイツを倒さなきゃ

 

「…私の提督を…」

 

へ級に向き直り、主砲を向ける

これは戦闘継続の意思表示

 

「私の提督を、傷つけた…」

 

魚雷、主砲、電探、稼働準備よし

装備は万端だ、ただ

私が大破していることを除けば

 

「私の提督を傷つけた、お前だけは許さない!」

 

思考が赤く染まっていく

海も、空も、私自身も

全てが赤く染まって…

 

「鈴谷、ダメだ

お前はこっちには来るな」

「っ!?」

 

赤が消えていく

提督の声が、私の中に反響して

私の中の暗い感情が消えてゆく

 

「…ありがとう、提督

でも、これで、やっと目覚めた」

 

感覚が、変わる

いままでの私に足りなかったものが、私の中に生まれた

 

それはどう形容するべきものなのかもわからないけれど、急速に拡大し、

私の内面を満たしていく

 

「鈴谷…

第二改放 鈴谷改二!」

 

今はただ、この想いを解き放とう

それが、きっと新しい力になる

 

提督を守るための、

提督の隣にあるための

 

新しい力に

 

「これが、私の改二!」

 

大破していたはずの艤装が、枯渇していた燃料が、底を尽き掛けていた弾薬が

全回復する

 

「今の私は…負ける気がしない!」

 

side change

鈴谷side out 蒼羅side in

 

動かない体を、強引に動かして

 

溢れ出すオーラの主人を見つめる

 

鈴谷は今、なにかを掴もうとしている

それは限りなく希少で、そしてどこにでも転がっている何かだ

目覚めのきっかけだ

新たなるステージへの足掛かりだ

 

「私の提督を…」

 

「私の提督を傷つけた…」

 

オーラが暗く、変色していく

赤く、黒く、

それは悍ましい色に

 

「私の提督を傷つけた、お前だけは許さない!」

 

鈴谷の意志が、暗黒面へ傾いていくのを示すように…だが、それはまだ

止めることができる筈だ

 

「鈴谷、ダメだ

お前はこっちには来るな」

 

こっち(深海側)に来たら、

お前は暴走を起こすだろう

それは、せっかくの目覚めを最悪に塗り替えてしまう

 

だからダメだ、

お前は笑顔が一番似合うんだから

そんな顔はしないでくれ

 

「ありがとう、提督

お陰で、やっと目覚めた」

 

俺の想いが伝わってくれたか

鈴谷のオーラは再び光明面へと転向し、今、最高潮を迎えた

 

「鈴谷…第二改解

鈴谷改二!」

 

オーラが物理的な光へと転化し

鈴谷の傷ついた艤装が分解される

 

光に溶けた艤装は、再び、

新たな形に作り直される

 

以前より強く、以前より堅く

鈴谷の求めた力として

 

「これが、私の改二!」

 

鈴谷は新しくなった主砲を構え

力を取り戻した腕で照準を定める

 

「今の私は、負ける気がしない!」

 

高らかな宣言と共に

主砲が放たれた

 

鈴谷は得たのだろう

新しい力を、求めていた力を

 

「頑張れ、鈴谷」

 

俺も、今できることを為そう

 

深海化は既に解けてしまった

刺されたのが腹部なせいで再生も発現しない、動けそうには無い

 

[提督!]

[どうした?川内]

[返事してよ!急に寒くなって暗くてずっと提督は返事くれないし怖かったんだよ!]

[…お、おう]

 

凄まじい早口と怒り心頭と言わんばかりの勢いに押し切られる

 

なぜだ

 

[夜戦とは違う暗さでさ…寒くて、重くて…本当に、怖かったんだから…!]

 

泣き出してしまった川内に

脳内で声をかけ…

 

[それより、なにがあったの?]

機先を制された

 

[ヘ級が進化した、ヤベェヘ級になった、鈴谷が大破した、一人で捨て石ムーブ、俺迎えに来た、戦闘…終わった←イマココ]

[お…おぅ…超展開…]

 

困惑する川内の声と、同時に爆音

……勝ったな、風呂入って来る(入渠)

 

別に入渠しても意味はないんだが

…どころか女子風呂に侵入する大問題をやらかしているのだが…

 

[でも、本当に刺されちゃったね、提督]

[普通刺されるなら背中からだが、その辺りの様式美は無視するのか?]

 

激痛は止まっていないが

それとこれとは別の問題

 

話が違うのである

 

「ていとく!勝った、勝ったよ!」

鈴谷が飛びついて来る

同時に赤く染まった海が晴れて行き

俺の中に鳴り響く潮騒も薄れていく

 

「鈴谷…飛びつくのはいいが…今は」

「提督!」

 

ぴょんぴょんしないで…

俺死んじゃうから

 

「バカ提督!」

 

ごりごりに揺すらないで下さい死んでしまいます

 

「鈴谷…揺するのは…止めてくれ…死ぬぞ…」

 

出せる限界の声で囁く

「え?…死なないで、嫌だよ提督、せっかくわかったのに、

急にいなくならないでよ…」

 

今度は俺にすがりついてくる鈴谷

 

「…ていとくーっ!」

 

遥か向こうから、声が聞こえる

「みんな戻って来ちゃったね、提督…じゃあ、これだけ」小声で、耳元に囁いてくる鈴谷

 

 

ふと、柔らかな感触を頬に…

 

それがなんだったのか理解する前に、俺の意識は暗転した

 

「で」

「結局入院…しかも絶対安静になっちゃったんだね」

 

「時雨ぇ…」

「そんは声出しても無駄だよ?

お腹の刺し傷はまだ塞がってないんだから、しばらくは食事も点滴だけ

リハビリは辛くなるだろうね」

 

時雨に見守られながら、片腕で書類を片付ける、もう片腕ではスマホ(私物)の文章作成アプリで長文を組み立て、淀みなくプリンターに飛ばして

書類を作っていく

 

「少しは休みなよ?」

「安静にはしている、これに問題はない」

 

時雨を制して、書類を渡す

「これ、大淀に渡してくれ」

「うん」

 

時雨が病室を出ていって…再びガラッと扉が開く

 

「提督ー?大丈夫?」

入って来たのは………鈴谷だ

(時の王者感)

 

「あのあと急に気絶しちゃうし、みんな困ってたんだからね?

もう無茶しないでね?」

 

(無茶)できますねぇ!

しますします!

 

俺がふざけていると、

鈴谷は近づいてきて

 

今しがた時雨が離れたばかりの椅子に座る

 

「…ねぇ、提督」

「なんだ?」

 

「私、さ」

「………」

 

鈴谷は、顔をわずかに伏せて

語り始めた

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
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