戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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暗幕のこちら側

「………で、ドヤ顔はいいが、何故腿を叩く」

「分からないかしら?膝枕よ」

 

「わからねぇよ!いくつだと思ってるんだよ!」

「25でしょ?」

 

「だったら何故膝枕なんて要求してくるんですかねぇ!?」

俺の叫びに、冷静な表情で

姉さんは返して来た

 

「姉弟に歳なんて関係ないわ

ただでさえ私達は会えていなかったもの、その空白を埋めようと言うのは自然な事ではなくって?」

 

「………?」

一瞬納得しかけたがその理屈はおかしい

「いや待て姉さん、姉弟で膝枕は多分小学生までが限界だ、それ以降は

ウザいだのキモいだのと互いに近づかなくなる…と思う」

 

少なくとも俺の知る限り

男女での子供は姉弟、兄妹に関わらずそんな感じに拒絶されるはず

 

「まさか、そんな訳ないでしょう?誰が貴方を拒絶しても私は貴方を愛し続けるわ」

 

微笑みながら、そっと

こちらに手を伸ばす姉さん

その姿はあまりにも美しく

 

灯火に惹かれる虫のように

フラフラと近寄りそうになる

 

「さぁ、いらっしゃい、甘やかしてあげるわ」

 

「………」

[屈しちゃダメぇっ!」

 

引き寄せられる俺に、声が届く

 

「チッ…邪魔者か……」

「いくら姉だからっていけない事はいけないの!加賀さんだってわかるでしょ!」

 

俺の中から弾かれるように出てきた川内は、そのまま俺の腕を取り、引っ張る

 

「うぉっと…」

「川内さん!風紀を乱してるのはどちらかしら?」

 

「膝枕を要求するブラコン姉よりずっとマシよ!そんなの不健全じゃない!」

「その割には随分と密着するのね

男を惹きつける手段をそれしか知らないのかしら?浅ましいこと」

 

あっやばい…そう思った時には手遅れだった

 

今起こったことをありのまま説明するぜ(混乱)

何が起こったのか俺にもわからない(錯乱)

 

ただわかるのは、修羅場が展開されているという事実だけだ

 

「加賀さんはすぐにそうやっていやらしい方向に結びつけるんだから!

加賀さんは卑しい女ズイ!って言われるだけあるわね!」

「何ですって?貴女こそ人の事を卑しいと蔑む前に身を振り返って見なさい

蒼羅の事を四六時中監視して挙句に夜戦夜戦と騒ぎ立てて蒼羅の生活の邪魔をする

それに姉弟の関係に割り込んでくるなんて迷惑を悪びれもなく行うような女こそ

卑しいという言葉が似合うのではなくって?」

 

「話を逸らそうとしないで!」

 

凄まじい勢いでの口論が

俺の両腕から肩越しに行われている

 

「…………」

「蒼羅はどう思う?!」

「提督はどう思う!?」

 

「…………………」

 

気絶したい、この時ほど純粋に

ただ気絶したいと願った時は今までになかった

 

「蒼羅?」「提督?」

 

視線がバチバチ言ってんのがわかる、それがどれほどの恐怖を生み出すことか

 

「あ〜…えっと…」

 

「「…………」」

「どっちも卑しくは感じないや」

「ダウト!」「反則!」

 

なん……だと…?

 

「ダメ?」

「「ダメ!」」

 

「はぁ、…迷惑だというなら………まず両腕をガチガチに固めないでほしい」

 

「こ、これは提督が逃げないようにするための処置だから!」

「弟を奪われないように確保しているだけよ?何が行けないのかしら」

 

どっちも腐ってんなぁ

などという言葉が頭に浮かぶが

流石にいうことはできない

そもそも姉さんはともかく

川内は俺の思考を読むくらいできただろう、と思念を送ってみても

 

こっちの目を見つめながら可愛く首をかしげるだけだった

 

…お前絶対わかってるだろ

 

「で、蒼羅、結局のところ、どっちが好きかになるんだけど…お姉ちゃんの事

嫌い?」

 

「あ!ズルい!それはズルいよ!」

「なにかしら?川内さん?

貴女には聞いていないのだけれど」

 

氷のボイス…

 

「提督提督っ!提督は私のこと嫌いなの?」

 

左腕から素晴らしい感触が…いやまて、想定外の展開すぎてメンテモードが解除されてる

 

一旦精神を平静にするんだ

………「すぅ…はぁ…」

 

ルーティンの深呼吸と共に、ゆっくりと精神の波を消していく

凪の海面のように静かに

 

「愛してるわ」

!?!?!?

 

耳元で囁かれた内容はあまりにも衝撃的で、せっかく消えかけていた波が復活してしまった

 

「姉さん!今集中してたのに!」

「だからよ、心を沈めるなんてさせないわ、それは深海に近づく行為でもあるのよ」

 

へぇ知らなかったよ

…………嘘じゃねえか?

 

「絶対嘘だね」

川内も同意してくれる

つまりこれは多分嘘

 

俺を動揺させて『どっちが好きか』という究極すぎる問いに勢いをつけさせるための

 

「姉さん?嘘は良くないぜ」

「あら、バレてしまうのね、すぐにはバレないと思っていたのだけれど」

 

クスクスと笑いながら

俺の首筋へと顔を寄せて

 

「ここは川内って言ってあげなさい」

 

耳元で囁いてくる

 

つまり、そういうことだ

 

この論争は多分終わらないと判断したのだろう、決着は持ち越し、

という事にしてくれたのだ

 

「あまりこの世界に居続けるのも良くないから、あくまで臨時的に作られた仮の世界だもの、不安定だから、あまり維持していられないわ」

 

「…….わかった」

「聞こえてるんだけど〜?」

 

「俺は川内の方が好きだよ」

「提督ぅ〜っ!」

 

不機嫌そうな声などなかったかのように飛び付いてくる川内

 

「うふふっ、負けちゃった…

まぁいいわ、それじゃ

最初の話はわかってくれたわよね?」

 

その姿に微笑みながら、姉さんは俺から離れ

 

残響を残しながら、消えていった

 

「…あぁ、わかったよ、

ありがとう姉さん」

 

最後の一言と同時に、空間がひび割れ始める

 

「川内!」

「うん!」

 

俺は息を強く吸い込み、力を込めて…自我を顕在意識へ復帰する

 

同時に川内は俺の魂側のつながりを辿って元の場所に戻ったらしい

 

「…みんな俺の意識内にエリア取りすぎだろ…」

 

流石に笑ってしまう

まさかいつのまにか姉さんまで入っていたなんてな

 

家賃払ってくれとでも言ってみようか?…いや、なんとなくだが

深海側についての情報が家賃代わりだ、とか言われそうな気がする

 

「まぁ、それもそれでわかる話だし、仕方ないか…」

 

とりあえず、深海も艦娘の力も使わない、新戦法が必要になってしまった…

自分の肉体というやつを、一つ見直すか

 

 

「提督?」

「ん?なに?」

鈴谷に話しかけられて

素で返答する

 

「だからぁっ!()()()が初めてって言ったの!」

 

?!

 

しばらく混乱したのち

思い…出したっ!(諸葉)

 

なんか鈴谷と話してたら猥談になっちまったんだった……なんで鈴谷と?

俺女子相手にエロトークする趣味はないぜ?

 

「提督〜?結局どうなのー?」

「………嬉しいからどうか、と言われれば、それはまぁ嬉しいよ?」

「なーんか微妙な反応…」

 

「まぁ…ほら、俺が喜ぶってのも、なんか違う気がするからな」

「………じー…」

 

「何故見てくるのか」

「ふん!」

 

鈴谷は鼻息と共に席を立って

さっさと帰ってしまった

 

「……なんだったんだ?」

[さぁ?]

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……

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