戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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里見先生急患です!

「……はぁ、まったく

急に何をするかと思えば脱走してまで技術継承ですか、そうですか

 

まったく、提督もお忙しい」

 

小一時間、新人の翔鶴相手に語り、挙句に夕張を代理にベッドに放り込んで

交代で脱走とは恐れ入る

 

……彼には少し痛い目を見てもらわなければならないな

 

「さて、彼が一番嫌がるのはなんだろうなぁ…」

 

正直、彼の嫌がる事と言えば

艦娘関連なのだが

艤装のメンテナンスをさせないというのは職務にさし障るし、艦娘のコンディションにもかかわる話になってしまう

 

できるだけ小規模で…何か

 

……艦娘関連で…そうだ

艦娘の出入りを禁止にしよう

そうすれば鎮守府にいる艦娘たちとの密通を断つことが出来るだろう

 

「ふ、こうさせるのは提督ですよ?」

 

笑いながら計画を練る

…………

 

そうだな、こうすれば

当面の間は大人しくしているだろう

 

メディカルは脱走者を決して許さない

提督には覚悟してもらおう

 

「…龍田さん、すこしいいですか?」

「?…はい、構いませんけど?」

 

鎮守府の中には、何人か

特殊な技能待ちがいる

その内の一人、龍田は、僕自身が直々に教えて医療知識、技術を与えた艦娘だ

 

「医務室の応対と来診の診察をお願いします、僕はすこし…提督を追うので」

「あら〜?脱走かしら〜?

…分かったわ〜、里見さん」

 

いつもながらに恐ろしい笑顔だ…

 

怖いなぁ

 

「それじゃあ行ってきます」

「は〜い、行ってらっしゃい」

 

龍田に送り出されて

僕は医務室に入り…奥のベットで提督の身代わりに寝ていた夕張を起こす

 

「…んにゅ…ふやぁっ?!」

「随分と気持ちよく寝られたようですね、夕張さん?」

 

にっこりと微笑みかけると

夕張は

 

「こ、これはちなうんねす…

これは違うんです!そのえっと!」

 

急に逃げ腰になった夕張はそのまま走り出そうとしたため

「まぁまぁ落ち着いて、ゆっくりと話し合いましょう、ねぇ、夕張さん」

 

そっと膝裏を持って背中を捉え

 

そのままゆっくりと抱え上げる

いわゆる横抱き、お姫様抱っこだ

 

「ふぇえっ!?」

「幼女ですか?」

 

慌てる夕張は足をバタバタさせるが

その程度の抵抗で振り解けるような抱き方なら、そもそも移動に耐えられない

お姫様抱っことは、以外に

運搬性に優れた抱き方なのだから

 

「ちょっと里見さん!やめてぇ!」

「やめません、このまま鎮守府一周コースでも回りますか?

それが嫌なら提督の居場所を吐きなさい」

「あ…えっと〜〜…」

「よし、鎮守府外周一周コースから各寮前通過コースに変えますね」

 

「やっ!まってやめて!

そんな事されたら恥ずかしいから!」

「楽になる方法は、教えたでしょう?」

 

抱き上げた姿勢の関係上

顔は近いのだが、

夕張の視界は大幅に制限できる

 

壁の裏に立って、僕自身の体の反対側にできる視界を壁で塞げば

どこにいるのかもわからないだろう

 

しかし、いいリアクションだ

もう少し虐めてしまっても、構わんのだろう?

 

「ていとくはぁ…」「このままチャペルでもいいんですよ?」

「ふぇっ!?」

 

驚愕の表情のまま固まる夕張を見つめる、もちろん目を合わせて

真剣な表情で

 

「結婚してください」

「は………ダメです!」

 

言ったよね?今一瞬はいって言ったよね?

「…クスッ…やっぱり、面白すぎる…そんなんだからメロンちゃんはいじり甲斐があるって言われるんですよ」

 

「いじり甲斐がある!?そんな酷いこと誰が言ったんですか!提督ですか?!」

「はい提督です(大嘘)」

 

背中側の手をゆっくりと揺らしつつ歩く、この振動はなぜか落ち着けるらしいし

一度落ち着いてゆっくりと考えれば分かるはずの嘘に気づいてもらおう

 

「提督は工廠です!翔鶴さんに艤装の話を教えるそうです!やっちゃってください里見さん!」

 

足をバタバタしながら叫ぶ夕張

貴女スカートでしょうに

「私もやります!もうこの際提督がどうとかじゃないです!私の名前に関する話は徹底的に!消してもらいます!」

 

バタバタしながら叫ぶもので

一瞬体勢を崩してしまった

「っ!?」

「っ!」

 

夕張は足を止めて、壁を蹴るや

壁面から得た反作用で背中を押し下げ、僕の左腕を支点にして、鉄棒の逆上がりのように一回転してみせた

 

「おお…」

普段の様子を見るに到底運動できそうには見えない夕張がここまで動けたとは…

 

「それじゃ行きますよ!」

「あ!こら夕張さん!医務室の目的外侵入についての話が付いてません!」

 

走り出した夕張を制止すると

 

「そんな事言われて待つ艦娘は居ません!」

一瞬振り返った夕張は、その一言だけを残しな走っていった

 

「傷病者に手荒な真似はさせられませんからね…仕方ない」

 

僕も夕張を追って走り始め…

 

「捕まえた!」

「きゃぁぁあっ!」

 

肩を取ると絶叫されてしまった

………不審者とか痴漢に見えたのか?……僕は悲しい(ポロロン)

 

「里見さん!離してください!」

「離しませんよ?もう一度抱えるつもりですが、お姫様抱っこで抜け出すなら俵抱きになりますけど、これとどっちがいいですか?」

 

「………」

 

夕張は表情をいろいろに変えながら

沈黙してしまった

 

「沈黙は俵抱きと見做す」

「このままで!」

 

どうやら首根っこを掴まれた

猫のポーズの方がマシだったようだ

 

……スカートが大開眼する俵抱きよりは、たしかにマシか

 

「さぁ、行きますよ夕張さん

貴女共々、お説教の時間です」

「ひぃぃっ!?私もぉっ!?」

 

「その通り、貴女とて目的外侵入についての罰則の対象者ですから」

「いやぁ………」

 

あぁ夕張の目から光が消えてゆく…

「まぁ、いいか」

 

僕はそのまま力の抜けた夕張に、一度強めに背中を叩いて文字通り『叩き起こし』

工廠に入った

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……

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