戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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デザイニング

一週間ほどののち、

もともと貫通こそすれど、切り口が綺麗だったために塞ぎやすかった傷も治り、

 

川内とのギクシャクした雰囲気も薄れて、元に近い距離感へ戻りつつあった

 

「……はぁ………」

 

相変わらずの暇さえどうにかなれば

理想的な環境なんだがなぁ

 

「暇………」

「と聞いて!」

「デッサンさせてぇ!」

 

飛び込んできたのは…陽炎と秋雲?

 

「陽炎お前は何しにきた、秋雲、デッサンするのはなんだ?」

「もち!提督の肖像!」

「却下」

 

「提督、最近ずっと居ないから、心配で来たら夕張さんに追い返されちゃって」

「……夕張………」

 

俺のデッサンなんて何に使うんだ?

という疑問はさて置き、まずは

こっそり侵入してきたらしい秋雲と陽炎を監視カメラが捉えたという

現実を教えてやるべきだろうか

 

[伝えた方がいいと思う

…多分来るから、里見さん]

[やっぱりかぁ…足早いなぁ…]

 

定期的に見舞いに来る他の艦娘達もみんな謝絶されてるらしいしなぁ

 

伝書鳩という古すぎて対策されない手段であきつ丸が伝えてくれた所によると

龍田と夕張が里見君の手先にされているらしい…が、まぁ実際に俺の方も

一時期は危険だったのだし

完全に治るまでは寝かせておきたいというのも分かる

 

「…早く離れろ

もうじきに来るぞ」

「え?何が?」

 

無邪気に聞き返して来る秋雲を哀れに思いながら、俺は口を開く

 

「さ…「そこまで」

 

その瞬間、ぼけっとしていた陽炎と秋雲が、俊足を活かして走り出し

「はい捕まえた」

 

二人とも捕まった

一瞬でだ

 

「なっ!?」「私がっ!?」

「はいそうです、二人ともです…まったく、提督を餌にすると艦娘は入れ食いですねぇ…」

 

「その物言いは良くないぞ」

不穏なことを言い出した里見君を止める

 

流石に艦娘を獲物呼ばわりはさせられないからな

 

「艦娘はあくまでも旧軍艦、その名誉を貶めることは鎮守府を貶すことと同じだ

魚のような扱いはよしてもらおう」

「えぇ、まぁね

そんなに気にすることでもなさそうですけど」

 

 

里見君は苦笑いと共に

足元でジタバタしている秋雲と

全てを諦めた目になっている陽炎に視線をやる

 

「陽炎大丈夫かお前」

「大丈夫に見える…?」

 

ハイライト大破!応急修理急げ!

 

(無理です!)

(われわれには荷が重すぎます!)

(ブリッジへいさできません!)

 

目が死んでる……

 

「あはは…はははは……」

 

「ひいっ」

 

突如笑い始めた陽炎に恐怖する秋雲

 

 

「陽炎さん、壊れてしまったようですね…こういう時は…ふっ!」

 

指が一閃した瞬間

全てを諦めた目だった陽炎が

ビクン!と痙攣して

 

「っ!?」

 

目に光が戻る

「陽炎!」

 

さっきまでの絶望的な様子から復帰してきた陽炎を慌てて抱き寄せる

「よく戻ってきた!」

「え?どういうこと?」

 

混乱している陽炎…説明は

「しないほうがいいでしょう」

 

里見君に止められたので、そのまま抱きしめてごまかすことにした

 

(おあついですね〜!)

(ひゅー!)

 

「どういうことなの〜?」

「………」

 

死んだ目から復帰したタイミングでつい抱き寄せてしまったが

かなり恥ずかしいな

 

「絵になるわ〜…」

 

探照灯つけるなよ?つけるなよ?

 

「で、まぁお二人とも

罰則規定はちゃんと適用しますからね?」

「「えぇ〜っ!?」」

 

二人はあえなく龍田に連行(ドナドナ)されていった

 

「さぁ提督、ついでに定期検診…といってももうすることなんて無いんですよね

寝てても起きてても良いですし

もう傷も癒合しているから

運動だってできる」

 

「なら退院で良いんじゃないのか?」

「ダメですよ、肝心の侵食率が下がってないんです」

 

「侵食率?」

「はい、深海や艦娘の艤装を用いるたびに、そのエネルギーは提督自身の体へと逆流し、提督の体を艦娘や深海棲艦と同様の物質へと置き換えている、その『どれだけ置き換えられているか』の値が侵食率です

 

提督の侵食率は現在27%

歴戦の英雄と称された呉第一先代の提督でも、調べたところ12.8%ですから

あきらかに異常です

 

普通は一旦艦娘と強くシンクロして、値が上がっても時間経過で徐々に低下し

艦娘の数、質に応じた値に収まるようですが

提督の場合は殆ど下がっていません」

 

「50%とかになったら?」

俺の言葉に、返事はなかった

 

 

 

つまり、死ぬか

 

「30%を超えたら、もう戻れないものとみてください、この侵食率が

高ければ高いほど

人間から逸脱して、艦娘同様の戦いの器に近づいていく、提督はいま

その階に足をかけているんです」

 

いつになく真剣な声音で

その宣告はなされた

 

「提督の今後のために、提督の、艤装を用いた戦闘を禁止します」

 

「………はぁ……」

 

「ただし、提督が戦力として有力であることは証明されているので

10%まで侵食率が下がったら

艤装の使用を解禁します」

 

「よっし、じゃあ下げないとなぁ」

「急にやる気出しましたね」

「そりゃぁな、前線に戻れる可能性があるんだから、そりゃやる気も出るさ」

 

艤装関係なく使える汎用武装みたいなのも考えてみるかな

 

輝那は通常仕様なら威力は足りないの一言だが、殆ど侵食率に影響しないらしいし、あくまで陽動、牽制と割り切ってショットガンみたいな拡散弾とか、NXをダウングレードして車載砲みたいにしつつ

装甲車かなんかに積み込んで

資材エネルギー突っ込んだ砲弾で深海棲艦撃破とかもありかもしれない

 

「やれるかな…」

 

テンション上がってきた!

ちゃんと計画は残しておかないとな

 

「里見君!」

「なんですか?」

 

返事が聞こえると同時に俺は告げた

「メモを用意してくれたまえ!できればA4のノート一冊!」

 

「一冊って、まぁいいですけど」

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……

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