戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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語らう者達

「ふっ、ふふっ…」

 

「何を笑ってるんですか?」

 

「いやなに、色々と面白い改造や運用法が思い浮かんでいるだけだよ、

まさか車載砲が資材エネルギー突っ込んだ砲弾使って深海棲艦を撃破

なんて誰が考えるんだか」

 

「提督だけですよ、そんなの考えるのも、実現できるのも」

「いや?」

 

里見君の言葉を聞いたその時

俺の頭に浮かび上がったのは

881研の輩と、771の先輩、そして他の一級艤装技師の皆さんであった

 

「そうでもない、むしろ結構な人数考えると思うし、作るんじゃないかな?」

 

マッドな連中は…もしかしたら

艦娘を生体ユニットとして組み込んだ兵器、とかやりかねない…

ノーペインマリオネットが良い例…いや、悪い例だ

 

あんな非人道的兵器を平然と運用するような輩は放置することもできないが

それはそれ、陸奥課長やほかの憲兵連中に情報を流してあるから

大分前に引っ越したらしい艦娘人権派筆頭『ソロルの提督』

ラバウルに居を構えたらしい鯉住君

大空襲で壊滅し、基地が消滅した大阪に新鎮守府を作って着任したという吉野大佐

 

やたら物々しい面々だが、皆さんが本気を出してくれるだろう

出してくれると信じる

 

俺もまぁ(体面的には対応に困るが)努力はするし、機会があれば相応の姿勢で対処するだろう

 

「必要があれば…な」

 

「そうですねぇ…まぁ、人間が効果も疑わしいような砲を担いで出てこざるを得ないような状況にならないことを祈りますよ」

 

艦娘の支援のために高速艇の据付機銃だけで深海棲艦の艦隊の目の前を塞ぐ、なんて連中もいるし、既に手遅れな気がするが

 

「艦娘に限らず、鎮守府勤めは殉職率の高い職業の筆頭だし

資材の流れの関係上、提督が出撃することもままあるからな…いつかは

里見君も無反動砲片手に深海棲艦と戦うかもしれんぞ?」

「僕は遠慮しますよ、やるんなら波動砲の試作品とかの運用テストくらいでしょう」

 

「まず波動砲というバケモノが出てきてるんだが?大和にでも積む気か?」

「大規模な改造が必要でしょうね」

 

里見君も苦笑である

流石にそんな(非科学的)砲を積むとは思えないのだが、艦娘とてオカルトじみた存在であることに違いはない

 

……いや、そんなまさかな…

 

「イカレた口径の砲なんてデッドウェイトにしかならないってのはよく言われるが

それを運用できる大型艦に言わせれば大口径であればあるほど良いんだとよ

その延長線にはビームガンもあるんじゃないか?」

 

ビームライフルはSFチックな服装している長門型にも拒否されるんだがな…

艤装側が武装を弾くのは根本的に運用できないって事だし、諦めるべきな気がするが、

 

深海棲艦登場以後、石油類の海上輸送は現実的に不可能となり、エネルギー枯渇や輸入品類の問題が湧き上がったが、その解決として日本は『徹底的なリサイクルにより、廃棄を減らし、現状の資源を維持することで地産地消でバランスを保つ』ことを選びはした

 

もともと技術屋が多い日本であることも相まって、国外技術の解明が進み、輸入品類は一応の落ち着きを見せた

 

だが、エネルギーは石油類を使う火力発電に頼りすぎていた

 

その対策として日本は一部のお偉い方が推進していた、核分裂炉の再起動に踏み切り、原子力と風力と太陽光でエネルギーを補ったわけだ

 

「その一環として研究されていたリアクターを兵器転用したのが、ビームガンなんだから、もともと兵器として作られてる艦娘とは相性が悪いのかもしれんな」

 

「兵器転用は結果として全然意味を成しませんでしたし、対人にしか使えない兵器、なんて言われちゃう有様でしたからね」

 

原理的にはレーザー切削と似たようなものだし、結局のところ兵器として力不足

深海棲艦には犠牲装甲(サクリファイスガード)のせいで通じない、

時代に即さない兵器として

失敗作扱いになってしまったわけだ

 

「まぁ、ビームライフルはあくまでロマンなんだよなぁ、結局」

 

「ビームライフルほど衝撃的なカッコ良さの兵器はなかなか無いですよね

それにまぁ、結局アニメとかだと、どこに行ってもビーム兵装はあるものですし」

 

二人して笑いながら談義しているのだが、時間は容赦なく過ぎていく…

 

「おっと、もう17:00、定時ですね」

「退社できるとおもうなよ?」

「思いませんよ、医務官ですし、そろそろ帰って来る遠征組を出迎えに行かないと」

 

「俺も出迎えに行きたいんだけど?」

ダメ元で一応言ってみる

どうせ期待はしていないが

 

「良いですよ?」

「だよなぁ流石に…いいのか」

「だから、言ったじゃないですか、提督の傷自体は治ってるって」

 

一瞬聞き違えたかと思ったが

本当に良いらしい

…よし、久しぶりに出迎えに行ける

 

「よし、行くぞ里見君!」

「うわ、またテンション上がった」

 

「引いてんじゃねえよ、俺だってヒマだったんだぞ久しぶりの出迎えにテンション上げない方がおかしいだろ」

 

息継ぎなしで言い切って

一気に立ち上がる

 

「ドッグ側には本当に久しぶりに行くなぁ…明石死んでないかな?あいつ徹底的に自己管理できないタイプだからなぁ」

「むしろ甘やかし過ぎでしょう、自分一人でならなんでもやる人ですから」

「え?それどこ情報?ちょっと明石にお話が出来たんだけど」

 

「間違いないですよ、僕自身の体感ですから」

「よし、生活は自己管理しろって言ってやる」

 

俺達は二人揃って医務室を出て

俺は制服を取りに本棟、提督室へ

里見君は白衣を置きに自分の部屋へ向かった




何気に2000文字以上書いてて艦娘が一切出てこないって久しぶりな気がします

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……

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