戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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ベッド上海戦

「あと一日…24時間…」

 

特に昨日、あれだけの事があった直後だ、何もない時間は殊更に暇になる

 

「………」

 

目を閉じて、

イメージトレーニングを始める

 

対象は扶桑、

最大火力の主砲連撃を想定する

 

時刻は8:00、朝と表現される時刻

環境は海上、至近に島影は無し

波は0.5m、遠洋の波としては穏やか

 

風は北東より2m、弾道に影響なし

被害は双方なし、補給万全の状態

戦況は一対一、向かい合った決闘形式

 

「…開!」

 

一言とともに、

イマジナリーな環境に没入する

 

俺はその瞬間、海上で扶桑さんと

正面から向かい合っていた

 

双方の距離は100メートルほど

扶桑さんの装備する主砲はすでに装弾が為され、41センチ三連装砲改二が重厚な金属音と共にこちらに向けられる

 

「始めましょうか」

「望むところです!」

 

俺が応じた瞬間、砲撃が始まった

 

 

「…っ!」

主砲右砲身、発砲

炎が吹き上がった瞬間に

海面へ足を踏み込む

 

そのままアイヴィを停止

ザバン!という音と共に海中に沈み

 

上半身のあったところを通り過ぎる砲弾を見上げ…そして即座に迫ってくる第2撃を

アイヴィ再起動による飛び上がりで躱す

 

空中に出た俺に、さらなる第3撃が襲いかかり…俺は足を伸ばして空を掴み…

 

「赤心少林拳…梅花の型!」

例の構えを持って砲弾を受ける

 

「やぁぁぁっ!」

 

回し受けにも似た、力を受けずに逸らす技術でもって、飛び込んでくる質量体を受け…

 

ねじきれるほどに上半身を(たわ)めながらも砲弾を受け流すことに成功

 

そのままの勢いで体を押し込み

海面へ飛び込んで擬似三角飛びを披露し、海面を平行に滑走

重力を利用した加速で扶桑さんの懐に飛び込み…次の瞬間

扶桑さんの姿が長門へと変わる

 

「罠っ?!」

「その通りだ!」

 

既につきすぎている勢いは止めることもできず…加速した拳を止めるつもりもなく

一撃で仕留める覚悟でとどめの一撃を打ち込み…かわされる

 

「甘いな」

「でぇやっ!」

 

カウンターの投げ技が掛かる瞬間、俺は足を海面から離して跳躍

伸びた腕を芯にして

足を跳ね上げ、背中からの体当たりを仕掛ける

 

「ながぁあっ!」

体ごとぶつかるせいで少なからぬダメージを負ったが、しかし長門の体勢を崩すことに成功した俺は、姿勢を立て直すお、そのまま背後からの絞め技に移行

 

「送り襟締めくらえやぁっ!」

「ぬぅぅっ!」

 

綺麗に決まれば振りほどくような真似は不可能な形なのだが、強引極まるパワー任せな肘打ちを喰らい、逆に一本背負いを掛けられる

 

「甘いと言ったはずだ!」

「ぐおぅぁっ?!」

 

「これで終わりだ!」

長門が取り出した41センチ三連装砲が装弾され…その瞬間、俺は切り札を切った

 

「撫子!」

 

至近距離の砲撃を弾き返し、長門の砲を破壊したのは…白く輝く大和刀

 

「大和撫子、抜刀!」

「応!って…私もやるんですか?」

 

ポン、という気の抜けた音と共に刀から出てきたのは、艦娘の方の大和

 

「ほう…戦艦同士の殴り合いか!気が利くじゃないか!」

「えっ!?えっ?」

 

混乱しっぱなしの大和に

長門が砲を向け…発砲、その瞬間に大和も艤装を展開するが

 

「うぉらっ!」

 

俺が割り込んで大和撫子で連射された砲弾を切り捨てる

 

しかし、

その反対側では大和本人も

応射のための方を構えていた

 

「主砲一斉射!」

「なにぃっ!?」

 

ドゴォン!と鳴る爆音とともに

俺の背中に砲撃が届き

 

俺、爆死

 

「まさか後ろから撃たれて死ぬたぁな…おおこわ…」

 

現実に戻って呟きながら目を開く

「何言ってるんですか提督?」

「イメトレだよ里見医務官」

 

「ちなみに内容は?」

「扶桑さん相手の砲撃戦、接近したら長門との格闘」

 

「どんな地獄ですかそれ…戦艦二人の得意分野で真っ向から戦うなんて…」

「だからこそだよ、二人の得意分野の能力を真っ向から超えられるくらいになれば

少なくともそこらの深海棲艦なら余裕の敵だからな」

 

「だからといって無茶ですよそんなの…あれ?でも、後ろから撃たれてって」

「後半は大和との共闘だったのだがな?間に割り込んで砲撃を弾き返したところに応射されてな…背中から弾けて死んだ」

 

遠距離は制したわけですか…

と呆れながら去っていく里見君、頭の検査とかされないか心配だ

 

「っぽーい!面会に来たっぽい!」

「て、提督?怪我は大丈夫ですか?」

 

面会時間に入って来たのは

夕立と如月の二人組み

流石にふざける余裕もないようで、如月の言葉遣いはいたって普通だ

 

「提督さん、如月ったら睦月に遠征押し付けて面会に駆けつけてるっぽい」

「言わないで!お願いだからそれは言わないでっていったじゃない…」

 

「あ、ごめんっぽい」

 

なにやら致命的な一言を聞いてしまった気がするが、まぁ構わない

戦艦や重巡を惜しみなく出した作戦の後、資材の状況確認すら満足にできていないのだ…潜水艦や駆逐艦のみんなが頑張ってくれていると思うから、そう枯渇することはないと思うが

 

「し、司令官…」

「なに?遠征ほっぽり出したって怒りゃしないよ?ちゃんと睦月が代行してるっていうし…穴埋めもなしに放り出せばそりゃ怒るけどさ

リカバリーをちゃんとしておけば結果的には変動もないんだからそれで良いじゃない

 

それに、むしろそれくらい気にしてくれてるってのは、提督として嬉しいんだぜ?」

 

「…司令官ったら…ありがとう…好きよ」

 

「俺も好きだよ」

もちろん駆逐艦だけじゃなく

艦娘みんな好きだけど

 

「ぁ……」

 

謎の音と共に顔を隠す如月…

「どうかしたか?如月」

「…ん、なんでもないわ…ただ、

嬉しいだけよ」

 

「そうか」

 

なんだもないならそれで良いや

「もちろん、艦娘だけじゃなく、

深海のみんなもね」

 

「ぴっ?!」

 

こっそり窓の外からこちらを見ていた白タコヤキを手招きする

 

「榛名の監視任務で慣れたってか?窓外は寒いだろう、はやく空母棲鬼のところに行きなさい」

「ぴっぎい!」

 

白タコヤキは俺の指をかじって去っていった…

 

「あいつ、俺の肉を食わなきゃ飛べないって訳でもないだろうに…」

 

「司令官!?大丈夫!?」

「大丈夫だ…問題ない、食われたのも左手だし、すぐに再生するさ」

 

あぁ、でも深海の力を使うと

侵食が進むんだったな…

面倒な……




サブタイは間違っちゃいない…

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……

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