戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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二航戦襲来

「如月、顔赤かったけど、体調は大丈夫だろうか…いや、まぁ艦娘だし?

自己管理くらいできてると思うけどさ…まぁ、それでも心配にはなるわけで」

 

「僕を呼んだ、と?

呆れますね、自分ではなく他人の体調のために医者を呼ぶ患者とは聞いたことがない」

 

「患者って言いかたも少し違うけどね〜…うーむ、おかしいかな?

まぁ、良いや、俺がおかしいのは昔から言われている事だし」

 

「昔から言われてるなら直しましょうよその癖、まぁ、今となっては

慣れてもしまいましたが」

 

今日は入院最終日…なのだが

あれから誰も訪れてくれない

 

時刻は14:00

以前なら秘書艦が時報を聞かせてくれた頃だが、今は枕元の時計を頼るばかりである

 

「失礼しまーす…」

 

そっと扉が開かれ、入って来たのは

蒼龍と飛龍

 

「提督!もう立てるようになったんだって?」

「怪我治ったの?」

 

「治ってはいるんだが、前線はまたしばらく出られないな、やっと体が安定した所で無理をしたせいだという…まぁ

本職のメンテと指揮は出来るから

問題はないよ」

 

笑顔を作って蒼龍に応える

 

「でも、提督…また無理したって事は、前にも無理してたって事でしょ?

里見さん!提督は大丈夫なの?」

 

蒼龍は横で座って我関せずの空気を醸していた里見君に突っかかり

 

「全く問題ありません、今の提督は至って健康であると言えます…肉体的には」

「それって精神的にはダメってことじゃん!」

 

飛龍が突っ込んだ、いいぞ!重要な所だからしっかり考えて欲しいんだ

そのツッコミはナイス!

 

「はい、精神的に重大な問題がありますね…はい、自分の命をカウントに入れないという重大極まる問題と共に、少々鈍感が過ぎることと

語彙は十分にあるのにその選択が少々以上にエキセントリックであるという問題が」

 

「それは大問題ですね!しっかり()してもらわないと!ね、飛龍!?」

 

「う、うん」

 

蒼龍が急に身を乗り出してきて、その勢いに押された飛龍がカクカクと頷く

 

「提督の事!しっかり治せるなら、私!なんでもしますから!」

「あ、こら蒼龍!」

 

さすがにその言葉には口を挟ませてもらう

 

「仮にが付かないくらい綺麗な女の子なんだから、安易に『なんでもする』なんて言っちゃいけないよ?そこらの男にそれ言ったりしたら襲われるからね?」

 

なぜか里見君がげんなりした顔になっているのを見届けながら注意を掛ける

 

「そんな事、言うのは提督だけだもん」

 

スカートを押されながら俯いた蒼龍のつぶやきは、俺には届かなかった…(事にした)

 

「蒼龍、返事は?」

「はい、提督、蒼龍、了解しました」

 

あからさまに不承不承、なのだが

まぁ、仕方もないか

 

襲われる、なんてストレートな物言いをした自分も悪いし、

 

「…俺は蒼龍の身を案じているんだけどなぁ…」

 

俺に案じられるような甘さはない

とでも考えているのだろうな

 

「さて、ここで一つ、寓話がある、譬えて語ろう…1組の母と子、二人の話だ」

 

俺が話し始めたのは、軽くアレンジした『親不知』の物語

 

子を想えどもその心は子に疎まれ、子は親を支えんとても空回る、というすれ違いのお話である

 

「わかってくれたかな?」

「…うぅ…ん、蒼龍わかった?」

「多少は、親と子はそれぞれの視点が違いすぎて見えてる場所が違うってのは分かるよ、でもそれがなんですれ違っちゃうのかな…」

 

蒼龍は艦娘だからわからないかもしれないなぁ

 

「親と子の視点は、それぞれ重要視する場所が違う、親から見えない、子にとっての重要点は、親にとって『気にする必要はない』とわかっている物であり、しかしそれを知らない子には重く映る

翻って親の重要点は子供に終始し、子供に干渉し過ぎている、が故に

子は自身の尊厳を蔑ろにされている、自らの能力を軽んじられている、と思い込んでしまったわけだ」

 

まぁ、歌の通りには

二人は結局死んでしまうのだが…

そこまでは語らない

 

「さて、俺と蒼龍にも、このすれ違いがあるのだと思う、俺は蒼龍のことを大切に思っているが、蒼龍は俺の方を重視している

結果、重要点の相違が起こっている訳だ…違うか?」

 

「ううん、違わない、でもさ

私は提督のことが大事なの、

私なんて換えが利く艦娘だから、そうじゃない提督のことを大事に思うよ」

 

「そこに相違がある、換えが利く利かないとかじゃなく、命の価値に区別はない」

 

「…うぅ…でも…」

 

わかってないようだな…

まぁ、仕方もないか

 

「俺にとって、俺自身の命はもちろん重要だ、だがそれ以上に、

蒼龍のほうが大切なんだ

それは、覚えておいてほしい」

 

真摯に向き合い、目を合わせて

しっかりと想いを伝える

 

対話において、

これは重要なプロセスだと思う

 

「…ぁ…あぅ…」

 

固まった空気の中で、黙り込んでいる飛龍と、小さくなにかをつぶやいている蒼龍

 

「…あ、面会時間終わりです」

そこに、空気を全く読まない里見君が割り込んできた、

 

「ええっ!?」

「もう?!」

 

「規定ですから」

 

つれない一言であった

 

「さぁ、提督も体力使ったでしょう、お休みですよ」

 

「おう…しっかし良いのかねぇ

面会時間、まだ残ってたと思うが」

「あれ以上甘ったるい空気出されたら医療どころじゃありませんよ、これは

必要な処置ですから」

 

里見君の笑顔を見ながら

俺は意識を捨てた

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
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