戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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メロンの香り

「…….いよし、これで!」

 

「いやダメですからね?」

 

20:00、飛び起きた俺はそのまま執務室に向かおうとして…廊下で夕張に捕まった

 

「なぜだメロン、ちゃんと俺は時間通りに行動制限解除まで待ったぞ?」

「だから、最後の検査がありますから、朝まで待ってくださいって言われたじゃないですか、聞いてなかったんですか?」

 

「聞いてなかった」(真顔)

 

退屈にすぎる生活は思考能力すらも奪うのだろうか、あいにく聞いた覚えがない

 

「もう、そう言うと思って待機してたんですけど…もう!」

 

ペチペチ叩かれる…いや、割と痛い

 

「ちなみに夜間の鎮守府の方は、深海組の皆さんが哨戒任務をしてくれていますから、仮にここを抜けても捕まるだけですよ?」

 

「…ご丁寧な俺対策をどうも」

 

憮然とした表情で返すと

夕張は笑顔でピースサインを向けてくる

 

「そりゃぁまぁ、ほら、アフターサービスに余念がないと評判の夕張ちゃんですから」

 

「そんな評判は聞いた事がないぞ?幻聴でも聞いてるんじゃないか?」

「ひどいです!ちょっとくらい盛ってもいいじゃないですか…そんなに大きく盛ってる訳でもないんですし」

 

「身長と比すると十分に大きいと思うぞ?」

 

 

「……提督!?なんの話ですか!」

「?パッド」

「誰が胸の話なんてしましたか!評判ですよ評判!仕事が早い、うまい、細かいとは言われますが、アフターサービスを褒められたことは

あんまりないって話なんですけど」

 

「あぁ…まぁ、でもほら、各所から聞く話では結構大きく、触り心地も良いのだとか」

「すれ違った話をそのまま進めないでくださいっ!各所ってどこなんですかぁ!それに私だから良いけどほかの人に言ってたらセクハラですよ!」

 

「そんな事をお前以外に言うわけないだろ?ネジやるからさっさと帰れ」

「帰れですって!?今何時だと思ってるんですか!もうやめてください

大人しく寝てくださいよぉ…」

 

いじり過ぎたか、

ついに夕張の声が震え始めた

 

「わかったわかった、ほらこっち来い」

「……」

 

涙目のまま無言でついてくる夕張

やはりチョロい

 

「…はい、おやすみ」

さっきまで寝ていたベッドにさっさと潜り込み、目を閉じる

 

「おやすみなさい…です、提督」

 

ようやく声が落ち着いた夕張が、枕元に座ってくる

 

「…おやすみなさい」

 

そっと、頭を撫でられる

「ふふっ……」

 

一定のリズムで、静かに上下する手は

さながら寄せては返す波のように

密やかなる眠気を誘う

 

「………」

 

さっきまで話し合っていたような俺が、即、眠ったのは多分、その手が

あまりにも気持ちよかったからではなく、時間的にそろそろ夜だったからであろう

 

[それは強がりだよ!]

[ウルセェ強がりで何が悪い]

 

 

「あ、おはようございます、提督」

「…おはよう…って夕張?」

 

枕元に座っているのは、夕張

昨日眠った時のまま、

ずっと座っていたらしい

 

「同じ姿勢ずっと続けるのは腰に悪いっていうぜ…?」

「私の腰の心配ですか?胸の次は腰とは、提督も好きですなぁ…」

 

「お前寝ぼけてるだろ」

「寝ぼけてなんかませんよ

ただちょっと完徹しただけですから…まぁ、徹夜明けテンションなのは

否定しませんけど」

 

「なお悪いわ」

 

夕張を一言で制しながら

さっさと立ち上がる

 

「さぁて、今何時?」

「午前5:00です、随分早いお目覚めでしたね」

「今日は待ちに待った退院だからな…ってお前、ずっと座ってたって

見回りとかはどうしたんだよ」

 

急に頭が回った事をそのまま聞くと、夕張は笑いながら

 

「大丈夫ですって、ちゃんと全部私が担当の日でしたし、ちゃんとやりましたから」

 

安心できる答えを返してくれた

 

「なるほど…ってもアレだな

二時間くらい暇だな…」

 

「そうですね、提督…

暇ならお話ししませんか?」

夕張は俺のベッドから、近くに据えられた椅子に移って、話題を出してきた

 

「提督、ドックにゲーム機とか導入して、規律が緩むとかは考えてなかったんですか?」

「考えたよ?でもそれで拒否してたら結局環境の改善はできないからな

大胆に進む必要もあると決断した、尤も、それで本当に規律が緩むようなら

本体ごと撤去する考えはあった、現状緩んでないからそのままってだけだ」

 

指摘されたのは、やはり

例を見ない電子ゲーム機設置か

 

「なるほど…一応の考えはあったんですね…じゃあ、提督もプレイしてるのはなんでですか?しかも結構やり込んでますよね?」

「やり込んではいるよ?実際俺のデータは現状最強に近いし、レベルも高い

でも、そもそも始めた原因は

ゲーム操作とかが苦手な艦娘にゲームの上手いプレイングや有効なスキル、美味しい狩場とかを教えてあげるためなんだ」

 

万能であるがゆえに経験値を大量に要求する『司令官(コマンダー)』はそれにうってつけだったし、

 

どんなスキルなのか、どんな動きができるのか、それら全てを真似できる利便性は、後進の艦娘達に自分の職業の『あるべき姿』を見せることが出来る最高の職だった

 

「なるほどぉ〜…格好いいですね〜俺は戦う!みんなのために!ですかぁ〜」

「何言ってんだ?それにアレだろグリザイユってお前だろ?現レベル三位のくせに何言ってんだよ」

 

「ふにゃっ!?私はあの、アレですよ!その、工房に引きこもってる事が多いので…結局熱が入って、つい」

 

言い訳のつもりなのかそれ?

[言い訳になってないね]

 

「一緒にレベリングしようぜ」

「しません!」

 

夕張の言葉と同時に、時計が鳴り

「はーい、最後の定期検診ですよ」

 

里見君が入ってきた

「やぁ、おはよう里見君」

「……おはようございます」

 

夕張も里見君に挨拶している

……若干震えているのは俺の気のせいだろうか?

 

侵食率は相変わらずの25.0%

下がってはいるものの、まだ高い

 

「こりゃ当面戦えないぞ…まぁ、メンテも執務もできるしいいかな」

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……

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