戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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問い詰める

「…ふむ、10:15、たしかに休憩にはいい頃だが…」

 

「デース!」「はい」

「せぇんぱい♪」「?」

 

なぜ四人も付いてきた?

金剛、鳳翔、陽炎、速吸の四人が

俺の後ろでドラ○エばりに並んでいる

 

戦艦、空母、駆逐艦、補給艦の並びが微妙にリアルだ…具体的には戦士、魔法、支援役の順で並んでいる辺

 

「…はぁ…」「tea timeデース!」

「お茶でも入れましょう…か?」

 

鳳翔と金剛がぶつかっている…これは修羅場…と言うのだろうか?

 

「ヘーイ鳳翔、空気を読んで

ここは戦艦に譲るべきデース」

「金剛さんこそ連続出撃でお疲れでしょう?引退して以来時間があるので

ここは私が淹れてきますよ」

 

「「…………」」

 

陽炎と速吸は完全に沈黙

黙り込んでいるとかそう言う次元ではなく、存在を消し去ろうとしているレベル

 

「あ」「ここは提督たち聞くのが手っ取り早いデース!テイトクー、紅茶と緑茶どっちが飲みたいデスカ?」

 

ゼロフレーム発生とでも言うのだろうか、予備動作なしに飛びついてきた金剛は

俺を捕まえたまま聞いてくる

 

のだが、この選択肢、

事実上の一択である

 

「…紅茶で」

 

仕方がないんだ…これ、緑茶って言ったら首の骨が砕かれる程のパワーを感じるんだよ

 

「…提督が困っているでしょう?

金剛さんも大人なのですから、その様な破廉恥な行いはよしてください」

「破廉恥な行い?どこがデスカ?

ハグくらいでいちいち離れろだの気にしろだのと騒がれたら愛情表現は出来マセーン」

 

言い合いはあくまで静かに、水面下では電光のごとき殺気がぶつかり合っているのを感じる

 

「…ちょっと怖くなってきたわ」

「速吸もです……」

 

高速戦艦と軽空母、共に装甲や火力に秀でるわけではない二人だが

その戦闘経験から導き出される最適解に拠った、最高効率の戦闘において、

他者を圧倒する能力を有する高位戦力二名でもある

 

「…テイトクは紅茶が良いって言ってるデース」

「…その答えは本心かしら?」

 

ゴゴゴゴ……とばかりの暗雲が…

っておい

 

さっきまで晴れてたのに急に曇りだしたぞ、なんだこの天気

 

「…雨?」

「提督、病み上がりには体を冷やすのは良くありません、今日は工廠の方は

もう行かない方が良いでしょう」

 

鳳翔さんに止められても

メンテが終わっていない艤装もある…いや、それ以前に翌朝の遠征を中止にしておかないと、雨の中で艦隊を送り出すと言うのは、縁起も悪ければ視界も悪い

 

いくら戦闘慣れしていようと

荒天の大波で方角を見失う事はある

 

そのための羅針盤と言われればそれまでだが、艦隊旗艦から逸れてしまえば

その羅針盤にも頼れないのだ

 

落伍の可能性を拭えない以上

MIA、作戦行動中行方不明に陥る艦娘が出る、という危険は避けられない

 

そんな状態の海に、艦娘を送り出すのは俺が嫌なのでしない、と言うわけで

 

「…よし、今日はメンテ休みにしよう」

 

すまんな、もう一日待ってくれ

 

 

「いや、まずは今日(この修羅場)を超えないと俺の身がもたない、か」

 

「せんぱい?」

 

速吸の声には答えず、

ただ前を見据えて…左右の鳳翔と金剛から視線を逃し続けるのだった

 

「あ、テイトク、紅茶淹れてきマース」

急に表情がフラットの笑顔に戻った金剛が、俺から視線を切って

トテトテと軽快な足音と共に離れていく

 

「…談話室より、執務室の方が良かったかな?」

 

「執務室は遠いですし、談話室の方が良いと思いますよ?」

「そうか」

 

鳳翔のフォローに頷き

まずは金剛が戻ってくる前に

速吸と陽炎に話しかける

 

「さて、まずは速吸に…何故きた?」

「え?」

 

パチクリ、と言わんばかりに目を瞬かせる速吸

 

「先輩の鎮守府に速吸が着任して、何かおかしいですか?」

「おかしいよこのっ!任務派遣でもドロップや建造でもなく普通に出てきやがって!」

 

ほっぺたをグイグイ引っ張る

 

「ふぇぇんいふぁいれふ〜!」

「痛いですじゃないんだよ!

正規ルートで着任しろっての!」

 

思っていたよりよく伸びる頬をひたすらにいじり倒していると

「や、やめてあげたら?ほら

速水にも悪気があるわけじゃないし」

 

陽炎に制止される

「…」

「悪気が無かろうと不正ルートでの着任は御法度だ!ちゃんと俺は怒るぞ

危険な真似をさせるわけにはいかないんだ」

 

「先輩…」

 

潤んだ目を向けて来る速吸に

ビシッと NOを突きつける

 

「大方着任した鎮守府の提督に頼み込んで異動してきたんだろうが、それは

軍法にも問題視される事だぞ」

「あうぅ…先輩…」

 

しょぼぉんとした表情の速吸に

しっかりと説教しておく

 

こんなことを二度と繰り返させないために、ちゃんと釘を刺しておく

 

「お前が処分対象とかにされたりしかねないからだよ、いいかい?」

 

再び口を開いた瞬間、

鳳翔さんと金剛が戻ってきた

 

「テートク!どうぞデース」

 

どうやら紅茶に統一されたらしい

 

「さて、いただくよ」

紅茶をゆっくりと一口、

 

「ん、美味しい…さて、キリキリ吐いてもらおう、何をした?」

「ちょっと提督!」

 

庇うような仕草を見せる陽炎を無視して、速吸を問い詰める

後に調書を取るときに使うのだ

 

「…わかりました…」

 

「うん、聞かせてくれ」

 

このあと、きっちり事情聴取した

 

「…tea timeが随分伸びちゃったネー」

「緑茶と紅茶を交互にとは、提督も頑張っていましたね」

 

大人二人の会話が背中に刺さる中

事情聴取を終えて

記録を取り終わった後

 

丁度昼時になった時計を見上げて

 

「よし!みんな、一緒に飯食いに行こう」

《え?》

 

意外とみんな驚いていた

 

「なんで驚くんだ?別におかしくはないだろう、長話に付き合わせた礼に

奢ってやるよ」

 

この後、提督は

艦娘が大食なのを忘れていたせいで、金剛に財布を吸われる事になるのだった

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……

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