「提督の侵食率も下がって来ていますね…これならなんとか元職復帰もできるかもしれません」
「前線復帰が待ち遠しいねぇ」
時雨と五月雨、最近話していなかった艦娘や深海棲艦のみんな…結局あれからみんなに声かけて回った…と話し合って
執務は軽巡棲姫と大淀と秘書妖精に手伝ってもらって、さっさと終わらせた
「前線復帰はもう時期ですね…多分来週の頭くらいからなら、侵食率も十分に下がってるでしょう」
「…順調に下がってるな」
「はい!」
里見君はどこか嬉しそうだ
「今の侵食率は19.8%、20%を切ってますから、もう時期に一般的な提督の侵食率と同じくらいになるでしょう」
「そりゃあ良かった…俺の寿命も延びるかな」
軽く笑い合いながら
医務室からも見える海を眺める
「あの果てから、声が聞こえた」
「恨みと憎しみと、そして悲しみに満ちた、声が聞こえた」
「優しく、大きい、愛を伴った声が聞こえた」
返答を求めない
ただ、自分に向けられた言葉が
紡がれ積まれ、遂には溢れて零れ出す
「…深海の声、それが俺には聞こえていた、艦娘にも、深海棲艦達にも
聞こえていない声が、俺には聞こえた」
そう、話していなかった艦娘や深海棲艦の皆に、声をかけて、会話しながら
少しずつ情報を抜き取り
その声の正体を探していた
正体不明の、艦娘どころか『深海の裏切り者』である隠海棲艦にも聞こえていないと言う声
しかしそれについて、レ級からの情報でわかった事がある
それは深海棲艦の始まりの声
深海の呪詛をもたらす呪いの言葉を囁き続ける、深海棲艦達の母の歌
母を裏切り、縁を絶った隠海棲艦にも、もとより深海の声を遮断している艦娘にも
決して聞こえることのない声
物理的には観測できない音であり
それそのものが一つの意思を伴うと言う呪詛の元、母なる深海棲艦の声であると言う
『詳しくは私自身にもわからない
でも、それが私たちの艤装を作ってる核である事には間違いないし、それが呪わしい物であることに異論はない』
レ級からはそう言われた
「なら、俺はそれの声を受信しちまった以上、深海の呪詛を受けた可能性が高い
それなのに侵食率は下がってる
……どう言うことなんだろうな」
「…それは僕には分かりませんよ、それこそお得意の分析でもして見たらどうですか?
何かわかるかもしれませんよ?」
「………そうだな」
そんな忌まわしいものを
分析などして、正気でいられるのか
理解できるのか、それは分からない
でもだからこそ
やる価値があるのだろう
「ハッ…俺が大昔の探索者みたいな事するなんてな、艦娘の連中にはどやされるかも知れないが、それはそれだ…やってみるか」
俺なりに、あの声の解析を試みる
何が元となっているのか
いかなる符丁を持つのか
そもそも無秩序にしか思えない音のかたまりに、どんな意味があるのか
一つ一つ解き明かしていては時間がかかり過ぎる、それならば…そう
「みんなの力を借りる」
三人寄らば文殊の知恵とも言う
凄い人は普通の3倍の知恵を出せると言う事なのだが、その叡智にも
数を揃えて時間をかければ対抗できる事をも示している
「艦娘の中の数人…そうだな
神風、鈴谷、大和、明石、それに深海組の軽巡棲姫、空母棲鬼、レ級って所か」
深海と関わりがありそうな艦娘をリストアップした、その数人分の名前に、呼び出しをかける
どうせ定期検診を終えれば暇になる
やる事が多少変わったと言う程度、大和達なら許してくれるだろう、だな
「…大和撫子は使用禁止の代わりに、深海鋼材『怨念鉄』の大刀とか提案したし、ガチギレされたからなぁ…」
大和だけは、その限りではない
面会に来た時に、武装不足を指摘し
さまざまなアイテムの設計案を提案した、その際の一つがこれ、
当然、それでは意味がないとガチギレされ、他の提案とまとめて放り捨てられてしまった
のだが、試作品自体は制作済みである
…試運転すらしていない試作兵器を突然先頭に持ち出すほど愚かでは無いつもりなのだが
などとぼんやり考えていると
数名の艦娘達が執務室に入って来た
「提督、失礼します」
「…おう」
俺は艦娘達を医務室へと招き入れ
「おはよう、みんな」
とりあえず、挨拶を交わして
「みんなの知恵を貸して欲しい
深海の声を解き明かす」
《!?》
一言で、衝撃をぶつけた
「やることは単純だ、ありったけの暗号解読を試す、俺には『深海の声』の囁きがはっきりと残っている、深海棲艦、元深海棲艦の艦娘なら
詞の符丁も分かると思う
力を貸してくれ、みんな」
真ん中にいた大和が微笑む
「提督、そう言う時は…」
「…あぁ、…すぅ…はぁ」
呼吸とともに、内容をまとめ
「横浜第一鎮守府傘下、第1745…創海鎮守府提督として命じる、暗号を解読せよ!」
《了解!》
提督としての、命令を下した
600話記念番外編は
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しぐ……しぐ……