戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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第13章 姫ノ島
告知


「歌を信じろ、か」

 

歌ねぇ…歌?

 

深海棲艦の歌の話をしていた直後にこれだ、なんらかの関係性があるのか?

 

「…どう言う事だ…?」

 

とはいえ、ただ考え込んでも仕方はない

とりあえず頭の中で川内に声をかけて、状況を説明して、協力を要請した

 

「ついでに、艦娘達を呼んでくるか?」

[それは止した方がいいかも、さっきまでやってた話の蒸し返しになるし

結局結論は出ないと思うよ

それに、里見さんに止められた後に性懲りも無く同じことやってたらそれはそれで怒られそうだし]

 

[言えてるな…]

 

苦笑した俺は、その直後に

異様な感覚に襲われた

 

「これは!?」

[何かくる、とても良くないものが!]

 

それは悍ましい気配

悲嘆と憎悪が入り混じった感情が溢れるその気配は

 

間違いなく、世界の全員が感じ取った

恐怖の源であった

 

「…何が来るってんだ?…」

 

ザワザワする感覚とともに、

感情が伝わってくる

 

それは、必ずしも負の感情だけでない

煮詰まっただけの心そのもの

 

「…郷愁…後悔?悲嘆…憎悪…憤怒

この声は…一体…」

 

なにかを失った?なにを?

 

悲しみが歪められ、方向性を持たない憎しみとなって全方位に放射されているような

違和感を感じる

 

だが、これほどの圧を持った深海棲艦、極めて高位の姫級、あるいは鬼級であろう

 

日本本土の防衛のために、放置はできない

 

「至急作戦会議を開く、わかっているだろうが、今の圧の源の深海棲艦に対しての攻撃作戦だ、他の鎮守府にも連絡して、共同で対処に当たる

 

繰り返す、攻撃作戦のために会議を開く、今回は大規模な共同作戦となる」

 

俺は執務室から飛び出し、すでに日の落ちた夜にも関係なく、電報を打った

 

「まずは…横須賀か?」

 

とりあえずまだ時間的に余裕はありそうなので、全国の大規模鎮守府に連絡を送ることを前提として、権力者とのパイプのある横須賀に電報を送る

 

「よし!」

 

横須賀から話がいく事を前提として

謎の超強力な深海棲艦を察知したこと

攻撃方法や外観は不明であること

それが日本本土に向けて進行中である事

 

事細かとは言えないが、簡潔に打てるだけの文に収めながら、その脅威を示す情報を盛り込んでいく

 

「やることは多いぞ…」

 

信頼性に欠ける

 

「…大本営にでも協力を仰ぐか…」

 

大本営の主力艦隊は強力だ

全員が練度99の艦隊を目的ごとに別編成で八つ同時に運用できる、といえば

どのくらいかわかるだろうか?

 

それはもちろん一般鎮守府とは比べものにならないような規模と資金、膨大に貯蓄された資材がなせる強引な技なのだが、本土防衛…の名を借りた要人のお守りに忙しいので、普段は出撃できない

 

防衛の優先度が低い出島の鎮守府が出撃、壊滅、といった程度で腰を上げられる程

要人のビビリは甘くない

 

「……信頼できんか…」

 

来ないことを前提にしておこう

大本営の五十鈴かヴェールヌイ、その辺の話がわかる艦娘に頑張って話を通して…

いや、まず、ヤツのことをどう伝えるか、それが問題になるな

 

「夜中ですまないが、集合をかけさせてもらった、まず、今回の招集の理由を説明させてもらう」

 

俺は放送室から移動して

講堂に来ていた

 

「…未確認情報だが、『強大な深海棲艦』が出現した、これは…先程、海図と照合したところ、本土直撃とは言わないが、いくつかの出島鎮守府を蹂躙するコースで進行中であることがわかった」

 

ここで息を吐き、艦娘たちの顔を見る

 

既存の姫のような具体的な名前が出ないことを訝しむもの、深海棲艦との戦いに備えるもの、強大な、という部分に恐怖を示すもの

 

さまざまな反応が出て来ている

「この深海棲艦の出現を感知した者も少なくはないだろう、我々の居る本土に来ないのなら放置しても良いのではないかと思うもの自由だ、だが

我々はこの怪物を、撃滅せねばならない、これを見逃せば複数の鎮守府が襲撃されるだろう

 

未知の深海棲艦を撃滅するのには、大いなる犠牲を伴うと思われる

 

大破する者、轟沈する者も出るだろう、この作戦について、参加、不参加は自由とするが、必ずやって欲しいことがある」

 

「どうせ生きて帰ってこいとかだろ?」

 

天龍がいつもの調子で吐き捨てるが、それはハズレだ、いつもの俺なら確かに

そう言っていただろう

だが今回はより具体的な指示を出す

 

「出撃する全員に、応急修理要員を積んでほしい、女神は数がないため、各艦隊旗艦のみの4個体分だが、要員については12個体分用意している」

 

おお…と全体がどよめく

こんな時に俺が具体的な指示を出すとは、ましてや応急修理要員の確保なんて

資材度外視の大盤振る舞いを繰り出すとは思っていなかったのだろう

 

「俺が出来る支援はこの程度だ、作戦については、偵察の完了次第、各鎮守府の提督と会議に入るので、追って通達する、以上!」

 

敢えて大声で言い切り、終了を宣言する

 

日が昇るのを待ってから、各鎮守府に電報を打っていては間に合わないので

夜中に打たせてもらったが

夜番中の艦娘は気づいただろうか

 

…それは朝になってみないとわからない

 

[明朝から作戦会議、夜もずっと準備だね]

[夜を徹するのはお前の特技だろ?]

[もっちろん!夜戦だぁ♪]

 

波乱の気配を感じながら、それでも表面上だけは取り繕って、俺は講堂を離れた

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……

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