戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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御影

「さぁ、時刻は8:00、忙しくなってまいります…」

 

言ってる暇もなく、俺は

艦娘とともに高高度偵察に励んでいた

 

時刻は朝だが、体感はすでに狂っていてあてにならない、それくらい急いでいるのだ

 

「気配が強くなっている

間違いない…ヤツは、成長している!」

 

自己進化する怪物なぞ、相手にするだけ無駄な敵の筆頭なのだが、それだけの怪物であるならともかく、ヤツは深海棲艦なのだ、

 

そう、『深海棲艦』である

 

敵であり、こちらを探して

攻めてくるのだ、それは回避できるようなものではない

 

方角だけを定めた嵐のようなもの

嵐とちがうのは、絶望しか残らない事と、自由に動きまわる事、そして自然消滅しない事だ

 

「…彩雲は増槽のせいで機動力が落ちてる、一旦近くの出島鎮守府で給油させてもらって、そこで増槽を外そう」

 

「「「「了解」」」」

 

 

俺は赤城、蒼龍、飛龍、翔鶴の四人の正規空母に力を借りて、彩雲による超遠距離からの偵察を試みていた

 

「…よし、現地の提督に話は付いているから、直ちに処置を施してもらおう」

 

駆け寄って来た妖精に指示を出して、空っぽになった燃料タンクを取り外してもらう

 

《…》

「…」

 

「よし、着陸誘導が来た、このまま

滑走路に降りるぞ」

()()()

 

正規空母を引き連れて俺が彩雲を飛ばす…なんて、二年前には思いもよらなかった

 

「だというのに、これだからな」

 

「どうかしましたか?」

「いや、なんでもないよ」

 

左隣で目をつぶっていた翔鶴が

尋ねてくるが、笑ってごまかす

 

「…悪いな」

 

目を閉じて、彩雲に集中する

5機編隊の彩雲なら、誰か一機くらいなら情報を取れる可能性はある、最悪、全機未帰還としても、それだけの密度の高射砲を備える

という情報は残る

 

「犠牲を前提にしたような作戦など、立てたくはないんだが…それでも、やらねば」

 

「はい、彩雲の妖精さんたちも、立候補してくださった方からの選抜で、一番熟練度が高い五人を選んでいます、全機未帰還だとしても

情報だけは届けてみせる、と」

 

「彼女らにも覚悟はある、あとはそれにどう結果が出るか、出た結果に、どう報いるかだ」

 

「…はい」

 

翔鶴が答えると同時に、

蒼龍が警句を発する

 

「みんな、換装終わったよ」

 

「了解」

「いけます!」

「行くぞ」

「発進!」

 

その言葉に応じて、飛龍、赤城、俺、翔鶴が彩雲を一斉に始動させる

 

慌てて蒼龍も始動して…離陸

 

ここからはばらけたコースを取り、俺、赤城、翔鶴の三人と

飛龍、蒼龍の二人で別行動する

 

別角度からの同時突入を試みて…あわよくば情報を取って離脱するためだ

陽動のために正面から派手に突っ込むコースを取る俺と翔鶴と、その後ろから撮影を担当する赤城でさらに別れるが、残るニ航戦二人は背後から忍び寄る予定

 

「……よし、突入するぞ…赤城!」

「了解、編隊を離脱します」

 

「やれ!翔鶴!」

「はい!」

 

翔鶴所属の彩雲と、俺の直轄する彩雲が直進コース、赤城は海面近くの低高度から

直接接近するコースを取り…

 

「来た!」

 

戦闘距離に入ったらしく、機銃が飛んでくる

 

「回避行動」「!」

 

もはや口に出すまでもない

妖精が直接入って操作している艦載機は、戦闘機動のレベルでまで、細かく指示を出すことはできない、せいぜい飛行コース、速度を変える程度の指示が限界だ

 

無論直接操作すれば、レバーの調節やスロットル開度の調整まで自分でやる代わりに、自分で全てを操作できるのだが、それはそれで

数機程度しか同時操作できないという問題がある、それに慣れの問題もあるため

 

今回は熟練艦載機妖精を直接つけて、戦闘距離に入ったら操作を任せる事にしている

 

帰って来られるかどうかは彼女ら次第、という酷な話だが、彼女たちもそれは納得済み

 

「…!」

翔鶴機、左翼被弾

途端に飛行が不安定になるが、それでもとばかりに飛び続ける

 

(わたしが撃たれてるうちに!)

(突撃します!)

(くっ!後輩!)

 

翔鶴機は身を挺して俺の機体を隠し

赤城機がコース変更、上昇して

「なにっ!?」

(よくも可愛い後輩をぉ…お返しにぃぃっ!やってやりますよォォオオッ!!)

 

弾幕の中に突入、

 

「赤城!」

「呼び戻しますぅっ!」

 

(止めるなぁぁっ!)

濃密な弾雨の中、突進した赤城機は

鋼の矢となって空を貫き

 

(突入成功!)

(こちらも撮影可能圏に入った!)

 

翔鶴機が不時着し、同時に俺の機体がポジションを取る

 

(映像を送ります!)

(こちら赤城機!高射砲を抜けました!しかしこれは…山です!島の地形そのものが深海棲艦になってます!理解不能です!)

 

(こちら翔鶴機…ベイルアウトします)

(こちら提督機、離脱する!)

 

(こちら蒼龍機!気づかれました!)

まずい!蒼龍側も気づかれた!?

 

(こちら飛龍機、主機がやられました!このままではっ)

(我々とて意地があります!さぁ!こちらに引きつけているうちに!出来るだけ映像を取ってください!)

 

(こちら提督機、翔鶴機のパイロットを回収しつつ離脱します、赤城機もお早く!)

(島の全景を撮りたいところですが…撮影機材の性能が足りません、

赤城機、全速力で離脱します!)

 

俺、赤城機が離脱を開始、蒼龍機は不時着した飛龍機のパイロットを回収するべく

突入を断念、大人しく離脱した

 

どうも去る者は追われないようだが

突入に対する防衛の機銃弾幕は空恐ろしい程のものだった

 

「撮影を終えた機体は全機帰投してくれ」

《了解!》

 

俺、赤城機、蒼龍機が帰還、翔鶴機、飛龍機は不時着により未回収となったが

パイロットは回収された

 

「想定していたよりマシ…か?」

 

途中、俺機がエンジン不調を起こすというアクシデントはあったものの、ソロルに無事到着した3機の彩雲は、映像データをソロルに渡して…

 

それはFAXで送られてきた

 

「…島、そのものだな」

「一言で言えば、鎮守府、と言いますか」

「というかこれ、周辺の地形ごと深海棲艦なの?巨大だねぇ…」

 

「この山…林があったのかな?今は砲塔が突きたってるけど…」

「ヤバいよこれ…どうするのよ…」

 

取れ高は十分、あとは画像を大本営に送らなくては…

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……

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