「大本営からの連絡が来た」
翌朝、俺達は講堂に集まっていた
「みんな、落ち着いて見てほしい」
俺は着任後に導入したプロジェクターを起動、画像を壁に表示する
「大規模作戦の参加要請だ、今作戦の攻略対象は、仮称『離島鬼姫』
強力な敵だが、これを正面から迎え撃つ訳ではない、我々はまず
出島鎮守府の一つ、南下の孤島
ソロル鎮守府へ移動、
現地の提督、および他の作戦参加者と共同して、水際で迎え撃つ」
「しかし、昨日見た写真のような怪物がくるとしたら、水際防衛作戦では
質量任せの突入を許す可能性すらある、提督はそのあたりをどう考える?」
長門の問いに、俺は首を振り
「現地の提督による防衛作戦だ
俺の立てた作戦ではないし、無論大本営からの増援部隊や他の鎮守府の提督たちの作戦ともバッティングする可能性がある、そこは切れ者と知られるソロルの提督を信じるしかないだろう」
「…あまりにも不安定だな…」
「感情任せになった突撃、それは単なる特攻に過ぎない、もっとも忌み嫌われる攻撃方法だが、それでも選択肢の一つにはあるだろう
それをさせないために
施設型の深海棲艦の弱点を突く」
「弱点…?」
俺の横にいた大淀が呟く
俺の知っていた艦隊これくしょんの情報によると、陸上型深海棲艦は雷撃を意に介さない代わりに、三式弾による広域焼灼や揚陸艇による強襲に弱い
無論、それをそのまま言うわけにもいかないので、少しぼかしながら艦隊に告げる
「こいつは島の地形そのままの深海棲艦であり、その関係上、魚雷なんかでは
下の方にまで存在する岩の装甲を、たとえ破砕してもその中に深海棲艦の肉質や艤装コアはない、という事で、ダメージを与えられない可能性が高い
だが、逆に島の地形を破壊して影響を与えることができるのなら、滑走路や高射砲を破壊できる三式弾、対地用焼夷弾で表層に集中した施設を破壊、またはあきつ丸、長門の持つ大発動艇で直接揚陸強襲し、施設を制圧することが出来れば?」
その瞬間、我が鎮守府の艦娘達に衝撃走る
北方棲姫などの基地型とは
二、三回程度の戦闘経験があるものは実はいるので、(北上や球磨が代表)
雷装自慢組は雷撃が効くかどうか…と言う顔をしていたのだが、砲に装備を載せ替える事を真剣に検討し始めているようだ
「私たちが三式弾デ制圧すればいいんデスカー?」
「まぁ、そうなるな、有り体に言えば施設破壊を任せるのは大型砲に三式弾、徹甲弾を積んだ戦艦だ、その補助として摩耶、霞、愛宕の三人に支援を要請する」
俺が編成を言い切ると、
全体がどよめく
「なぜその三人が?」
空母棲鬼が尋ねて来たところに
俺は笑って答える
「あの三人は881帰り、感覚改造による超精密照準が使用可能だ、島相手というなら
どこかに司令塔がある、それを狙った超遠隔射撃も可能だし、摩耶と霞は照準補正技能も持っているから、施設破壊の砲撃の精度も上げられる」
本人には嫌な過去かもしれないが、使えるものは使う、他には出来ない特技なのだから、遠慮なく使わせてもらうつもりだ
「なるほど…、了解よ
なら、私たち空母隊はどうすればいいの?」
「…出撃するつもりなのか?」
「もちろん、そのための艤装なんだから」
微笑みを浮かべながら軽く手を振る空母棲鬼
「了解だ、それじゃあ空母艦娘が出撃する場合の対応を決めてお…いや、それは
出撃前に作戦を伝えるよ、
いまは全体の説明だ
残念ながら、駆逐および軽巡艦娘は装甲能力が不足するため、今作戦には参加できない、作戦には参加できるのは、重巡、空母、戦艦の重量級艦だけだ、それを踏まえて聞いてほしい」
軽巡の一部や、駆逐の何人かから
落胆の声が聞こえるが
「軽巡、駆逐には鼠輸送と移動支援を行ってもらいたい、島風のような速度は必要ない
駆逐艦は大破、中破艦娘を護衛退避する役、軽巡艦は補給艦、工作艦とともにドラム缶を活用した資材現地補給を頼みたい」
俺は、それも重要な仕事だ
と言い切った
「やることは数多い、強大な敵の前に飛び出して、傷ついた艦娘や深海棲艦を引きずり出し、敵の攻撃圏から護衛退避をせねばならない駆逐艦
大量の資材、武装を現地にまで運び、敵の攻撃をかわしながら補給、修理をせねばならない輸送部隊、求められる仕事は大きく、難しいものだ、だが俺は信じている、作戦を成功させるためには
信じなくてはならない
それが出来ると、俺の指揮する艦娘たちは!作戦を確実に遂行できると!」
徐々に徐々、身振りを入れながら
声を大きくしていく
「たしかに、華々しい戦果とは言えないだろう、だがその二つの部隊は、二つの舞台は!戦いの要であるとも言える、いかに被害を抑え、轟沈者を出さずに戦うことが我々の至上命題だ
そして、戦うにしても、膨大な資源が必要になる、弾、鋼材、燃料、それらを使い尽くせば、待っているのは緩慢な死だ、
決して砲火を放つだけが戦いではない、背を支える者がいるから、前線は戦い続けられるんだ!」
なんとか言葉を尽くして士気をあげようとしているのがバレバレなのはこちらもわかっている、だがその上で、やらざるを得ないのだ
しかし、それを知った上で
立ってくれる者がいた
「よおし!提督!
オレ達がそれ、やってやるよ!」
「護衛任務なら、不知火にお任せを」
最前列にいた二人に続けとばかりに駆逐、軽巡艦娘の声が上がる
「絶望的な相手、土地勘のない戦場での上陸防衛、周辺の艦娘との事前連携訓練もなし、正直これでどうやって戦うのよ、って話だけど
それでも私たちはやり遂げる、轟沈は出させないわ…提督
もーっと私に、頼っても良いのよ?」
「対潜が一番自信ありますが、ドラム缶輸送もできると自負しております、
提督、この大淀にご命令を」
「…深海組トシテ、私モ参加シヨウ、鬼姫ガドウ、ハ知ラナイケド、私ノ技能ハ
スクナクトモ役ニハ立ツ筈ヨ」
次々に立候補する艦娘達に
感動すら覚えながら、俺は宣言した
「今作戦、参加表明を行う
今まで大規模作戦はスルーしていた俺達だが、やれない訳じゃないってのを見せてやろうぜ!」
《応!》
600話記念番外編は
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テンプレ転生者(ヘイト)
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ストーリーを進めよう
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戦争が終わった後の話を!
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しぐ……しぐ……