戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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ストライク

「そういえば提督さん、ソロル鎮守府の提督とは知り合いっぽい?」

 

「いや?俺が提督になる前

一度だけ、ソロル所属の艦娘に会ったことがある、といった程度だ

それ以外に縁と言えば…そうだな、大本営のヴェールヌイさんからは

よくその話が出たし、大本営にいた時に良く話していた憲兵の巻島さんはソロルの提督の同期だったそうだ、というあたりか?」

 

「それって関係ない人っぽい…

要するに他人っぽい?」

「そうだな、有り体に言えばそうなる」

 

夕立の言葉に同意して、

頷きながら扉を開ける

 

現在、俺達は更に改造したクルーザー

ついに名前をつけて『沖津丸』に乗って白波を蹴立てる航路に居た

 

なんかあきつ丸っぽい名前になってしまったが、当のあきつ丸は気にしていない

むしろ輸送型とは言え軽巡級(クルーザー)に兵員輸送が任務である自分(似)の名を付けられるのは名誉だろう

と自分で言っているほどだ

 

陸軍属かつ小型であり、目立つような大型武装もない彼女だからなのだろうが

大型の艦に名を継がせたい、とは言い出さず、笑っていてくれた

 

「それにしても遠いっぽい…」

「そりゃ仕方ない、南の島だからな」

 

俺たちが通るルートは大本営からの支援艦隊とは別ルートだが、一応

道中の深海棲艦にも気を使って

深海組が先行している

 

…甲斐もなく

道中にいた深海棲艦はほとんど鬼姫から逃げていく最中の連中であり

特に何もせずとも勝手に去っていく

 

お陰で戦場にたどり着くまで無駄に弾薬や資材を使わずに済んでいる

 

「このままいきたい所だが…」

 

一応、出撃者全員のメンテナンスは済ませた、艦娘全員の艤装と、俺の儀装全部だ

 

深海組の皆は…軽巡棲姫、レ級、空母棲鬼が参加、というわけで大忙しだったが

他はそうでもなく、特に問題もなくメンテは終わった

 

一級艤装技師が来てくれれば戦場でも修理は出来たのだが、それはそれ

大本営の艦隊同様

そう簡単には動けないので

今回は静観するらしい

 

「…」

白波の先に、島が見えてきたので

艇内の艦娘に無線で連絡する

 

 

[川内、秘策込みで、どのくらいの成功率だと思う?]

[う?〜ん………どうかな?

思いつきは数字じゃ語れないけど、感覚的には6割くらい?かな]

 

[六割か、賭ける価値はあるな]

[でもダメだよ?提督だって危険だし]

[無論、最終手段としておくさ、出来るだけ実行したくない作戦でもあるからな]

 

頭の中で返しながら

俺は手を進める

 

side change

蒼羅side out ビスマルクside in

 

「はぁ……」

 

これで何度目の溜め息かしら?

数える気にもならないわ

 

だいたいなんなのよ鬼姫って

こっちは艦娘になってから一月くらいよ?なんでいきなりそんな大物相手にしなきゃいけないのよ

 

なんて、不満は絶えないけど

今はそんな事を言っている場合じゃないわ、

 

「…はぁ、戦艦はフソウもヤマトもみんな行っちゃうし、私だけ鎮守府で居残りってどういう事なのよ…」

 

私じゃ不足なの?そんな訳ないわ、私の火力は最高水準、ならそれ以外は?

目立った弱点なんて無いわ

 

ならなんで連れていかれなかったの?

…分かんないわよ!

 

「…はぁ……」

 

フラストレーションを溜め込みながら

それでも留守中の鎮守府を任された戦艦として、強く振る舞い続ける

 

そうでもしないと

私としての体面が、

崩れてしまいそうだから

 

「大敵なのはわかるけど、早く帰ってきてよね、admiral…」

 

Monsterと現地で戦う艦隊には悪いけど、出来るだけ早く帰ってきてほしい

艦娘は良い、その損耗は作戦に組み込まれるものだし、死ぬために生まれてきたのだから

でもadmiralは違う

 

あの人は死ぬために生きているわけじゃない、あの人には未来があるのに

そんな所で死ぬべきではない

 

「…無事に、帰ってくれる事を

祈るしかないわね…」

 

私の、鉄と油でできた心では

意味がないと、届きないと知っていても、それでも私は、何度でも

彼のために、祈り続ける

 

side change

ビスマルクside out

蒼羅side in

 

「…何でこうなる」

 

「わかんないっぽい!」

「それでもやるしかない!」

「第一次攻撃隊!発艦!」

 

俺は海上で…鬼姫と対峙していた

正確には、鬼姫の島に対する上陸作戦を挑んでいた

 

なぜかって?

「沖津丸乗っ取られたからだよぉっ!」

 

「…言ってる暇ないデース!やれる事全部やってそれでようやくデース!」

「わかってる!機銃くるぞ!」

「っぽい!」

 

当然ながら機銃掃射による撃ち込みで装甲板は既に傷だらけに成り果て

バイタルパート以外は酷くダメージを負っている沖津丸、しかしその機能はいまだ健在

 

明石搭載の妖精機関による推進が仇となって、機関周りこそ掌握されたが

それ以外は全部普通であるので

もちろん普通に戦闘もできるのだ

 

「上陸トライ…するか?」

「賭ける価値はある!」

 

長門の即決により、俺は

全体に指令を飛ばした

 

「これより、姫の島に対する上陸を開始する!」

《了解!》

 

あまりにも無謀かつ、向こう見ずな作戦が今、幕を開ける

 

「長門!」「応!…長門改二!」

 

長門が突撃しながら大発を展開

それに乗った妖精部隊が次々に上陸していき…

よし!

 

(上陸成功です!)

(やはり、巨大すぎて深海棲艦としての艤装になりきっていないようです!)

(この辺りは普通に岩や土ですな!)

おそらく、深海棲艦としての艤装になっているのは島の中核施設のみ、

それ以外は全部、普通の施設として作成され、使用されているのだろう

 

でもなければ妖精が上陸など

到底できない筈だ

 

「…よし!上陸成功だ!」

 

沖津丸には発信機を仕掛けておき

後で回収するだけにしたので、今は放置

 

「総員!ここからは陸上での白兵戦となる!いいな!」

《了解!》

 

艦娘と人間の十数名、および妖精という極めて小規模な突撃部隊が

強襲制圧を開始した

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……

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