戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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姫君に

「さぁ、話を再開するぞ」

 

「いきなり出現とは、ご挨拶だな」

「提督下がれ、コイツは敵だ!」

 

レ級が即座に前に出て

機関長に砲を向ける

 

「艦砲外交とはこのことかの?」

「うまいがちがう、それは違う

 

…レ級、よせ、お前じゃ勝てない」

 

「なんだと!提督!」

「何度でも言うぞ、お前では勝てない…そして、機関長に攻撃意志は無い」

 

「お分かりいただけたなら光栄、とでも言わせてもらおう」

 

手を広げながら笑う機関長

妖精にここまでの体格はなかったと思うが、深海棲艦の妖精にも

艦娘の常識が通じるとは限らない

と言うことであえて無視した

 

「さて、細部を詰めるが、まず要求をまとめると、この島の姫の撃破、というより鎮魂だな、これを達成、あるいは誘導すること」

 

「うむ」

「…でも無理だろ?実際に深海棲艦を撃破するには、艤装コアを破壊するか、艤装を完全停止まで破壊してから本体を殺すしか無い、そこは艦娘も同じだから

提督にだってわかるだろ?」

「わかるよ、でも無理じゃ無いんだ」

 

意地を張るレ級の頭をそっと押して、後ろに下げると、機関長が口を開く

 

「第三の方法、それは艤装コア本体にアクセスして、艤装を強制停止させる方法

…無論、限りなく危険な上に

コアに取り込まれる可能性もある難易度の高い方法であるが、それなら

艤装を破壊せずとも深海棲艦としての機能を停止できる、わかったかな?」

 

その口調は穏やかで、

子供に聞かせるような言い方

 

「ガキじゃねぇんだから一言で済ませろ、提督、本当か?」

「一応、理論上可能ではある

だが、これは人間の技師が必要な方法だから、事実上不可能とされている

言われるまで浮かばないような方法だ」

 

俺はその案を肯定する

しかし、それが不可能であるとも

言外には仄めかして

 

「姫の艤装コアに干渉するのは

所詮同一の深海棲艦である我々では不可能なのだ、故に提督にご足労願った」

「これは脅迫と拉致じゃないのかね?」

 

皮肉めいた口調でレ級が口を挟んでくる

 

「そうとも言うだろうが、真っ当な手段ではこの島を訪れる人などあるまい

…苦渋の決断なのだ、わかってくれるな?」

 

「味方殺しは感心出来ないが、

仕方ない、か」

「いいのかよ!?」

 

レ級が俺の服の裾を引っ張って止めるが、優しく解く

 

「奴は妖精の群体の主、故に提督として妖精を指揮できる俺が、艤装コアにアクセスできる技師としての俺が、必要になる」

 

「了承いただけたならば、急ぐぞ

時間をかければそれだけ感知される確率が上がる」

「おう、コアはどこにある?」

 

俺が応じると、機関長は軽く手を上げ

 

「開け」

 

一言、命じる

その瞬間、何もなかったはずの地面が揺れて、防空壕のような鉄扉が現れる

 

「扉!?」

「…直通の通路、ってか?

なるほど、高位の妖精なら構造の一部程度は操れるのか」

「いや、違いますぞ?

これはもともと用意していた避難道、その出口側に過ぎません、そもそも

この辺りは艤装化されていないのです」

 

扉を引き上げながら笑う機関長

 

「さぁ、この先は

我々の元職場にして、今の墓標

深海棲艦に滅ぼされ、骸だけが残る夢の跡『離島172号鎮守府』

 

別称を『夢葛(ユメカズラ)鎮守府』と言う」

 

階段を下り、地下道へと降りながら

口を開く

 

「…葛夢、物事の中心点を意味する

 

なるほど、この災厄の中心点

それに相応しい名前、と言うわけか」

 

カツ、カツ、カツ

静かに、しかし確かに、足音を立てながら進む、この先には間違いなく

深海棲艦と成り果てた島の

いや、島に流れる怨念のその(コア)がある

 

カツ、カツ、カツ

 

長く、暗い道を進む

そして、ついに

 

「…鎮守府本棟の基礎と同じ構造

…2013年建立か」

「まさしく、2013年6月5日に建築され、2016年11月20日までの時間、離島172号鎮守府として、北から日本本土、ひいては樺太を守っておりました」

 

「…北から来たのか、この島は」

レ級が呟く

 

「遥か彼方から、我らが国を守るために、戦っていたのです」

「…今の敵も、かつての同輩

深海棲艦と艦娘、ひいては人間の戦いとは、因果なものだ」

 

カツ、カツ、カツ

 

通路は複雑に曲がりながら続き

それをたどって進む

 

所々にある扉をいくつか開けて

過ぎてきたところで、機関長が言う

 

「…この先です」

「行かせるわけないでしょ?」

 

その瞬間、衝撃が走る

 

「っ!?」「何故ここに!」

「敵か!」

 

三者三様の反応とともに

戦闘態勢に入る

 

その相手は、扉の陰から姿を現した

 

「……瑞…鶴…?」

「いや違う!奴は夜間作戦航空要員

夜の航空戦を得意とする妖精!」

「えぇ、私は管制局主任、夜間作戦航空要員のエル、はじめましてね

提督さん…ついでに死んで」

 

さらに後ろから出てきた艤装管理妖精らしき影に指令を下す夜間作戦航空要員、エル

 

「やっちゃえ」

 

そして、闇から炎が溢れた

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……

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