戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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捧ぐ想い

「やっちゃえ」

 

指令と同時に、武装管理妖精らしき数人が己の武器を解き放つ

 

「むん!」

「戦闘なら!」

 

レ級と機関長が飛び出して

砲弾を弾き、機銃を受け止め

閃光弾を放った

 

「っ!」

「今です!」

 

目を焼かれた妖精たちが仰け反る中

レ級が主砲を解放

 

「はぁっ!」

 

撃ち放つ

その砲弾はまっすぐに、正面の妖精へと飛翔し、狙い通りにその妖精を滅却した

 

「くぅ…でも!」

エルは悔しがりながらも

即座に反撃を開「させん!」

 

機関長がどこからか取り出した機銃が連射され

 

撒き散らされた弾丸は

()()()()()()()()()()()()()()

 

「っ!」

これに対してエルは

5.5ミリ機銃を取り出し、

弾に弾をぶつけて防御する

 

並みの艦娘より強い妖精とは一体…

 

「エル!貴様は何故ここにいる!

貴様は何を芯としている!」

「しれたことよ!私たちすべてを襲った理不尽に、理不尽を以って復讐する!それが私の()()()()としての最後の務め!」

 

「復讐に目を曇らせた愚か者が!」

瞬間移動じみた移動で通路を駆け抜けた

 

「翻意を繰返す裏切り者よりマシよ!」

「復讐とはいずれ終わるもの!そしてその先に残るのは火の尽きた灰だけだ!

姫を灰炉の墓守にするつもりか!」

 

互いに銃弾(コトバ)を撃ち合いながら

暗く、狭い通路を駆け回る

 

「姫がそれを望んでいるのよ!烈火のごとき復讐心は姫を突き動かし続けている

私たちが作り上げた火は!この島という炉を以って()()を突き進ませている!」

「貴様自らの妹すらも炉に焚べるのか!?そんな事はごめんだ!姫は我々の復讐心から生まれたのだろう、それは確かだ、だが私たちと同質のものではない、我々の復讐に姫を使うのは間違っている!」

 

機関長は通路の鉄板を分解して

即席の盾を作り上げ、機関銃弾の雨をくぐり抜けて突進し

 

「我々は深海棲艦(かつての敵)に成り果てた!

私たちの守るべきものを見失っているのだ!

私たちが守るべきものは!守りたかったものは!一体なんなのだ!日本という国そのものではないのか?!死せるのならばそれも定め、次の防人の席を整えるのが去るものの務め!貴様はかつてそう言っていた!

だと言うのにその体たらくは何だ!」

 

「定めたはずの心を翻して邪魔者に肩入れする貴方こそ、全てに敵対すると最初に決意した貴方こそ!誰よりも強く燃えていた心はどこへ行ったというの?!」

 

二人の妖精たちは互いに位置を入れ替えながら接近して、ついに銃弾と拳を交差させる

 

「…これで終わりだ!」

「それはこちらのセリフ!」

 

二人は容赦なく、

互いに切り札を切った

 

機関長の振るった短刀が閃き

そのツインテールを切り裂く

その瞬間、ピンが抜ける音がした

 

「バカ!閉鎖された空間で手榴弾など!」

「諸共にでも!」

 

残りの妖精たちは全員消滅したが

妖精とは精神体、つまるところ実態を失うのは致命傷にはならない

 

ここで被害を負うのは…

「提督!」

「レ級っ!」

 

二人だけだ

 

俺はレ級を抱え込んで伏せ

榴弾の炸裂をやり過ごす構えを取る

 

「バカ提督!私の方が頑丈だろ!」

「女の子を盾にするやつがあるか!」

 

 

抱えたレ級に抗議されるが、言い返したその瞬間に爆発、破片を躱すために無言になる

 

「……!」

一流なら爆風より早く跳躍する、なんてこともできるのだろうが

あいにく俺は二流止まり

そんな超人技は持っていないので

二流らしく堅実に防御した

 

「それは?」「さっき拾った装甲板」

 

一応使えるものは使わせてもらう

しかし、このままではまずい

そのぐらいは自覚しているのだろう

深海棲艦の艤装内部に程近い部分での爆発、そのせいで気づかれてしまった

 

「速やかに撤退するぞ

このままでは物量を投入されて押しつぶされる」

「了解!」

 

俺は機関長が生存していることを信じて撤退する

 

コアに細工も出来なかったのは致命的、作戦は失敗と言わざるを得ないが

それでも得たものはある

 

それはこの深海棲艦

離島鬼姫が妖精によって産み出されたこと、復讐心を燃料としていること

そして、全ての妖精が必ずしも復讐を望んでいないこと

 

「内部から自壊を狙えるな…」

「んなこと言ってないで走れ提督!」

 

後ろからペシペシ叩かれながら

やってきた地下通路を走り抜けて逃げ帰り

 

「よし戻ってきた!」

扉を上げる

 

そこには…

(提督っ!)

 

飛びついてくる、秘書妖精がいた

 

「ぬわ、なんだよ」

(提督提督っ!みんなの意識が戻ったんです!)

 

パタパタしながら俺の頭の上に登る

夕立といい秘書妖精といい

なんで俺の頭の上に登りたがるのか

 

「バカ提督、艇の操作が戻ってるわ

こんなところからはさっさとオサラバするわよ、クズ提督」

 

結局潜入できなくてちょっと残念がりながらそれを隠すように俺に当たるツンデレ霞

 

「…応急処置要員の回収も済みました、あとは提督とレ級さんだけです」

扶桑さんが点呼を行っていたらしい

最後に声をかけられる

 

「結局、何一つ解決にならなかったが、貴重な情報を得ることは出来た

…伝えなくてはならない」

「深海棲艦の中にも妖精がいた

ってのは驚きっぽい」

 

「いや、それだけじゃない」

 

夕立の言葉を切って、更に一言

「機関長は深海棲艦としての復讐心を捨てた、持たなかったんじゃなく、

一度深海棲艦になってから

戻ることができたんだ」

 

これは艦娘にも確認されているが

妖精には初の観測だ

 

これはこれで残す価値がある

 

俺がそう言った瞬間、後ろから声が掛かる

 

「…もはや作戦は失敗と言わざるを得ません、かくなる上は、姫自身が

終わりを得る他にない

船の修理は終えております

お行きください」

 

そこには、血塗れになりながらも

しっかり立っている機関長がいた

 

「…あぁ、行かせてもらう

必ず、防衛は成功させる、だから」

「終わりを、お待ちしております」

 

その一言と同時に、

沖津丸のエンジンが起動する

「さぁ、お早く、機銃を止められるのも時間がありません」

「仕方ないか…行くぞみんな!」

《はい!》

 

俺は機関長に敬礼して、

沖津丸に戻り

 

その場を急いで離れるのだった

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……

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