戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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逃げられない!


オレイカルコスの結界

「…作戦は立ったが、これは一種のギャンブルだな」

 

「はい、そもそも発射自体が成功するかわからない岩盤砲に、効果未確認な砲撃、不確定要素が多すぎます」

 

限りなく小声で扶桑さんと相談しながら、席を立つ、

 

そもそも施設破壊なら外縁部の方の密集地を飛び越えていける攻撃機がないと話にならないし、それを艦砲射撃で無理矢理押し通ると言い出すのだから始末に負えない

 

各地の提督はその辺りを理解していないようだ

 

まぁそれも当然か、鬼姫との戦闘など、それこそ伝説上の話

自分たちのスケールが当てはまるようなものではないと知らないのだろう

 

…いまだに暗い表情を浮かべる

ソロルの提督を除いては

 

あの人はおそらく、

その規模を知っている

 

作戦を幾ら練っても、純粋な存在の差に潰される可能性を否定しきれない事を把握している

 

「これは、成功する公算のある、というだけのギャンブルであることに違いはない

だが、それでも…あの姫を眠らせるためには、戦力の一極集中による乾坤一擲の勝負

すなわち、中心部の破壊による機能停止に賭けるしかない」

 

「……」

 

俺は扶桑さんを呼び寄せて

その手を取った

 

「俺は艦娘達の可能性を信じる

みんなが蒼い海を取り戻すと」

 

「…提督………」

 

ゆっくりと身を寄せてくる扶桑さんと共に、微笑む

 

「俺は賭ける、艦娘達の勝利に」

「私達は、提督の期待に応えてみせます」

 

「……はぁ、お熱いことで、もういっそ結婚しちゃったらどうですか?」

 

「なっ!?」

「結…婚…っ」

 

里見君の突然の爆弾発言

同時に、言葉に詰まる俺と扶桑さん

 

「…?」

首をかしげる里見君に

全力で抗議する

 

今回ばかりは全力で抗議させてもらう

 

「里見君、キミぃ…この決戦前の大事な時期に主力を混乱に陥れるような発言は慎んでくれ!頼むから!あと俺も混乱するから

 

たしかに練度は最高値に達してるからシステム上は可能だけどまだケッコンカッコカリはシステム自体が完全安定していない上に急な性能の変化は却って失敗を招くなんて初歩的な事をわからない訳じゃないだろう!?」

 

詰め寄った俺に

正面からニヤついた視線が

背後から突き刺すような鋭い視線がぶつかってくる

 

「…なんだ?」

「……」

 

振り返っても、そこには相変わらず俺の方を見ている扶桑さんだけだ

 

「………!」

 

正面に向き直ったらまた

背中に鋭い視線が突き刺さる

 

「…はぁ…」

 

「扶桑さん、いいかい?今は決戦前の大事な時期であって、戦いに関係しない事を考えている余裕はない、わかるね?」

 

「……………はい」

 

いつになく歯切れの悪い返事だが

了承ならそれでいい

 

「よし、それじゃあ敵…姫について、情報をおさらいしようか」

「…僕無視されてませんか?」

 

「知らんな」

 

里見君をさらりと無視しつつ

扶桑さんと二人で情報を出し合う

といっても、扶桑さんは外縁部の地形、防備についての情報を、俺は核心部における防衛戦の様子や、構造

その中にあった古き鎮守府の話をそれぞれしあうのだが

 

 

これがなかなか難しい

なにせ二人の実際に体験した情報ゆえに細かく、情報量が多い

これを細かく、完全に理解するのは不可能に近いと言えるだろう

 

「…ということで、俺はあの時

撤退を指示したんだけど…」

「…はい、わかってますよ」

 

とにかく話が終わったころには、俺たちは沖津丸の元まで戻ってきていた

 

「おかえりっぽい?」

「ただいま、夕立」

 

ゆっくりと夕立の頭を撫でる

 

…これが撫で納めになるかもしれないし、いつもより念入りに撫でよう

 

「…提督さん?」

 

「ん?」

 

上目遣いで見上げてくる夕立

可愛い

 

「どうかしたっぽい?いつもより念入りっぽい」

 

「…バカな…見破られた…だと?」

「何いってるっぽい?」

「そのくらい誰にでもわかるよ、提督、僕たちは伊達に君を見てきたわけじゃない」

 

し、しぐれ?!

 

「驚いてるね、僕はこんなにも提督のことを愛しているのに、提督は僕の想いに気づいてくれていなかったようだ」

 

「……ん?なんの話かな?」

「とぼけるのはやめよう提督」

 

徐々に徐々に詰め寄ってくる時雨

その手には…

 

「書類一式…だと…?」

「さぁ、提督、提督はここにサインをしてくれればいいんだ、さぁ」

「ダメです!」

 

突然扶桑さんが時雨との間に飛び込んできて、叫ぶ

 

「扶桑…?」

「提督はケッコンするつもりはありません!強制はダメです!」

「たとえ扶桑でも、提督は譲らないよ」

 

「聞き分けなさい時雨!」

 

扶桑と時雨が何やら剣呑な雰囲気を放ち始め…

 

それを見にきた他の艦娘達もまた

次々におぞましいオーラを放ち始める

 

「…そうよね、ここで死んじゃうかもしれないんだし、憂いはないに越した事はないわ」

「積年の思い…今こそ…」

[さぁ!チャンスですよエリカさん!今こそ突撃です!]

 

湧き上がるオーラが俺に絡みついてくるが…

 

「皆さん何をしてるんですか?提督に絡む暇があったら艤装の整備でもしたらどうですか?」

 

後ろから出てきた都合いい里見君に遮られて消えた

 

「…明朝、撃って出ますから

今から作戦を説明します…提督」

 

「結局俺かよ、まぁいいや

沖津丸の内部屋にあるテーブルを使おう、そっちの方がわかりやすいし」

 

求められた通りに、俺は説明のために艇へと入った

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……

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