…夜明けから約一時間
俺はドッグで待ち続けていた
龍驤・瑞鳳航空隊の華々しい戦果と同時に、その散り様までを目に焼き付けて
散って行った妖精たちの無念を痛感しながら
「…入渠に来られるなら良いんだが」
その前に轟沈していては仕方がない
俺も全力で直してやるから
どうかここまでたどり着いてくれよ
「……零戦隊、発艦」
先程整備したばかりの零戦隊を召喚して、周辺の偵察と防衛に当たってもらう
「…一応の話だけどな」
こんなのがブンブン飛んでたら流石に姫も攻撃対象にしても損害が大きいと判断すると思うし
「入渠を待つか」
俺は零戦に目を託して、大人しく待つ事にした
「………やられた!」
島全体をトラップにした地形砲撃で姫の機動力を潰した…は良いが、姫はなんと
そのまま突進してきたのだ
地形を破壊しながら驀進してきた姫は、ソロル島両側の壁を突き崩し、入江中央の小島に乗り上げた
それと同時に、Cの字でいう上部に存在していた工廠およびドックを完全破壊したのだ
「…上手いこと埋められちまった…やられたよ」
崩れた岩盤が覆いかぶさって、完全に埋められてしまったドックは
到底入渠に使える状態ではない
槽内の泥ごと土砂を撤去して
綺麗に清掃しなくては…いやそれ以前に
「まず俺が生き延びるために
ここから出ないとな」
そう、俺ごと埋められてしまったのが大問題である
「生きねば…」
土に塞がれた入口、土砂が入って来て役に立たないドック完全に機能を失った工廠側の設備、連絡通路の向こう側は存在すら確認できない
無理を言って改築しておいて正解だった
…よし
「策はできた」
[本当に?]
銃から陸奥が話しかけてくる
「久しぶりじゃないか」
[貴方が深海棲艦なんかを流し込んでくれたからね、もう]
不機嫌そうな声の陸奥に
謝りながら陸奥に(流石に大本営から補充した)陸奥鉄の銃弾を装填する
今度は鉄芯にタングステンをコーティングした特別製徹甲弾だ
「…撃てるな?」
[もちろん、銃身の負荷は想定内よ]
[こっちも行けるよ…よし!]
「…輝那…起動」
ドゥン!という曇った音と共に
…岩が爆砕された
「さぁて!俺を生き埋めにして工作機械をぶっ壊してくれた姫様に…リベンジと行こうじゃないか!」
[おーっ!]
[行きましょうか]
今、暴虐の嵐が再臨する
「死ねやゴラァっ!」
全くもって知性の欠片も感じられない無駄な叫び声を上げて突進する
無論方向は姫の島
[…いま!]
その声に従って跳躍する、その瞬間
零戦が目の前を通り過ぎ…それを足場に二段ジャンプを決めて
「ぴっぎじぃっ!」
さらに飛び出した白タコヤキとその分身体を使って
生身の人間が高度70mまで上昇して
姫の島に上から強襲する
当然のごとく高射砲がこちらを向くが
残念なことに、移動速度に旋回速度が追い付いていないようで、この高度では迎撃能力が足りていない
「…よぉし!爆撃開始だぁっ!」
零戦隊が札に戻り、変わって九九艦爆が出現、連続爆撃を開始する
付近の砲を使用不能にする程度の支援ではあるが、それでも損害にはカウントできるだろう
とにかく少しでも壊せればそれに文句はない
島の方も多少は機銃やら砲やらで追い付いてくるものもいるが、自重を捨てた輝那と大和撫子による
[提督っ!左10時の方向砲弾!]
[こっちで対処するわ!]
川内と陸奥による支援のもと、俺は艦載機の操作に集中して…
「よし!このまま!」
島に上陸した
…のだが、
「ただではやらせないわ…!」
「まさか直接人が来るなんてね…」
そこには妖精組が待ち構えていた
「アンタ、どこの差し金よ」
瑞鶴似妖精が叫ぶが、俺はそれを意に介さずに
「…お前らに用はない」
輝那を向けて、通常弾で発砲
同時にポーチに入れていた
スタングレネードを投擲
そのまま閃光で目潰ししつつ視界不良中に射撃、妖精を撃ち抜く
別に血肉が飛び散る訳ではないが
そこはかとない罪悪感か漂う
[とはいえ敵だからね、倒さなきゃ]
川内のある種残酷な言葉と共に
廃莢して、スライドの戻る拳銃を見る
すると…
「よくも撃ったわねっ!」
光の粒子に分解した妖精が体を再構成したらしい、すぐさま復活して向かってきた
その得物はただの
「撫子…!」
次の瞬間、溢れるばかりの銃弾が飛来し、防御に撫子を抜く
「死ねっ!」
「誰が死ぬかっ!」
叫び合いながら、監視塔の妖精(だったか?)へと徐々に進み、間合いを詰めて
「すりゃあっ!」
一刀両断、アサルトライフルの銃身を切断して使用不能にする
「これで俺の勝ちだあっ!」
妖精の消滅を見届けた後、
俺はさっさと奥へ向かい…
同時に、その気配の消失に気づいた
「…機関長、お前、死んだのか?」
その声に応えるものは、誰もいなかった
600話記念番外編は
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戦争が終わった後の話を!
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