戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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ユカナ

「…まさかこうやって

妖精と直接戦闘することになるとは思っても見なかったよ」

 

「私もまさか直接乗り込んでくるような提督がいるなんて思いもしませんでしたよ」

 

探照灯らしき妖精と向かい合いながら、俺は拳銃を、向こうは機銃を

全く異なる銃を向ける

 

「……実体化してる妖精とはなかなか見ないんだけど?」

「特殊な技能持ちの個体は実体化してますよ、精神体では出来ない事も多いですから」

 

「そうか、ありがとう

面白い話だったよ」

 

「冥土の土産には十分でしょう?」

 

言葉を切って、

互いの視線は互いを探り始める

 

「…!」

先に発砲したのは、妖精側

たが、先に被弾したのもまた妖精側

 

「…なんで…」

「増薬型なんだ、初速が違うんだよ」

 

項垂れる妖精に、

拳銃弾のタネを説明する

と言っても薬莢の火薬を特殊なものに変えた程度の話だが

 

初速は実験上25%増し

飛距離も17%ほど向上した

特殊弾を使っていたのだ

と説明した後

 

()()()()()()した機銃を折り

妖精を抱え込む

 

「ほら行くぞ、いつまで座っている」

「ふぇえっ!?」

 

そのまま担ぎ上げて…駆逐艦以下の体格のくせに体重あるじゃねえかこいつ

 

「今何考えたんですかっ!通報しますよ!」

「どこにだ?」

 

「それはもう憲兵…居ないんですねはい」

 

ようやく理解が及んだようで

またしてもガックリとする妖精

「で、お前たちの姫の場所は?」

「いうわけないじゃないですか!」

 

ジタバタしているが、どうせ胴を捕まえている以上、四肢はさしたる力を生まない

ささやかな抵抗程度、まるで意味がないので無視する

 

「早めに言ったほうがいいぞ?」

「逆さにつられても吐きません!」

 

あくまで毅然とした態度を貫く妖精だが、ミスがあったな

 

「じゃあ吊ってやろう」

「ちょっちょっちょっと!

本当に逆さ吊りはダメです!スカートがぁっ!」

 

「お前が吊れと言ったんだろうが」

 

そのまま足をつかんでプラプラと振る

 

体重はそこそこだが

逆さ吊りが維持できないほどではない

…楽しいなこれ

 

「きゃぁぁっ!やめてくださいもうスカートの維持が限界いぃっ!」

 

「逆にどうやって逆さなのに状態を保ってるんだよそのスカート…まさかの反重力とかは想定してなかったわ」

 

「へんたい!バカ!やめてください!」

 

「誰がやめるか!ふははははっ」

 

悪役を演じながら軽く振ってやると、やがて反重力状態を維持できなくなったのかスカートが徐々に…

 

[目、取るよ?]

[はーい]

 

割とエグい一言で逆さ吊りを止めて、妖精に目を合わせる

 

「さぁ、姫の場所はどこだ?」

「ひうっ」

「どこだ?」

 

「い、言えませ」「そうかなら逆さ吊りだ」

 

ニッコリと微笑みながら

優しく手を振ってやると

妖精の顔色は徐々に青ざめていき

 

「…場所は…」

 

背中を撫でてやると吐いた

 

「途中で切るとより辛いからな、ちゃんと全部吐き出してしまえ」

「ふぇぇ…」

 

このあとちゃんとお仲間のところに届けてやろうとしたら銃殺されそうになったので拾った

 

[汚い妖精がいたから虐待してやることにした?]

[なんで猫虐すんだよお前はよぉ]

 

実際のところそんな所なのだが

それを言われると空気もへったくれもないので、俺は一応抵抗感を表明する

 

「….よし、この先の構造は?」

「ここからは一本道ですけど、滑走路を突っ切らなきゃ司令棟にはいけないので、いずれにせよ機銃掃射くらいは覚悟しなきゃいけませんね」

 

拾った妖精…名前があるらしく

『ユカナ』に道を尋ねると

もう隠す意味もなくなったのか

ユカナは簡単に道を教えてくれた

 

「…でも爆撃が来てますよ!」

「知らんし俺には当たらん!」

 

ウチのでなくても艦娘なら俺に当たるようなことはしないし、そもそも地形や建造物を目標にするならともかく山端だった場所を攻撃する意味はない

 

「いくら島の中だと言っても

爆撃が来るなら普通隠れるならなんなりすると思うんですが…」

「知るか、俺の方が良ければいいだけの話だし、最悪、爆弾単体なら迎撃できる」

 

「それもう人間じゃありませんよ」

軽口を叩きながら、爆撃の中

二人で移動し

 

ちょうど滑走路が使用不能に陥ったらしいタイミングで走り出す

 

目標は司令棟…ではなく

それを通り過ぎたあとの

 

焼き払われた夢葛鎮守府の跡

 

「…ここはもう、何もありませんよ?」

「いや、あるのさ

ここに、かつての想いが な」

 

その瞬間、風が吹く

 

-あの子たちを、止めてくれ-

 

「…あぁ、承った」

 

-頼んだよ-

 

揺らぐ白い影に向けて、最後の一言を掛け

 

そして背を向ける

 

「…さぁ、お仕事再開と行こうか」

 

[…うん、向こうの提督にも、頼まれちゃったしね]

[期待には応えてあげないとね]

 

二人の言葉に背を押されて

 

「はい!わっかりました!提督!」

ユカナもやる気を出してくれた

さぁ、いよいよ地下、艤装コアに潜入だ

 

「行くぞ!」

《応!》




この1話彼女のために使ったようなものでしょう

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……

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