戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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フォールダウン

「死になさい」

 

その声は、ひどく冷徹で、それ単独で死の気配を振りまいていた

 

同時に、顕現が強制解除されてはじき出される陸奥と川内

 

「っ!」「提督っ!」

 

炎を失い、焼けた腕は

しかし、力までも失いはしなかった

 

「手駒を失い、武器を失い、腕も失った貴方に…おまえに何ができる!」

 

凄まじい声が響く

 

「ただの抵抗、悪あがきだな」

 

川内がおいていった大和撫子を握り直し

再び盾を取り、正眼に構える

 

「死になさい、魂を!肉体ごと焼いてあげるわ!」

 

「ローストされんのはお前ダァッ!」

 

全力で盾を突き出し、同時に深化解放

全身ガ白く染まっテ行ク

 

「…ハァァッ!」

 

出現した艤装は姫の四肢に絡みつき、それを締め上げるように纏わり付き

しかし、装甲としての役目を果たす

 

同時に俺も、深化解放によって魂に深海の力を呼び込み、自我を犠牲にして装甲を召喚する

 

守るべきものを失った盾がひび割れ、砕け散り、その破片から編み上げられたのは、悍ましい深海棲艦の艤装

 

リ級の腕甲、タ級の砲、レ級の尾

様々な深海棲艦の艤装のパーツを組み合わせた…いや無理やりに繋いだ継ぎ接ぎ(パッチワーク)の艤装が、白く染まった俺の肉体に喰らいつく

 

「ゔぉぁぁぁっ!」

 

姫の嗤い声は

俺の絶叫に掻き消され

 

「らぁぁっ!」

「はぁぁっ!」

 

二人は激突する

艤装によって身長の差は埋められ

戦艦、駆逐艦、軽巡艦、重巡艦、空母艦、海防艦、様々な艤装の武装を持つ姫は、その圧倒的な物量で押しつぶしにかかる

 

機関銃や小口径砲を囮に

確実に大口径砲を当てに来ている

 

だが無駄だ

 

「ギュゥゥッ!」

背中を通り越して伸びた尾が、その先端から砲門を展開し、発砲

同時に腕甲がスライド展開して盾になり機関銃弾をシャットアウトする

 

ル級の左腕のような巨大プレート型艤装が出現した直後に、今まさに放たれた敵の主砲を()()()()()

 

様々な深海棲艦の艤装が同時に蠢き、千差万別の機能を以って、攻撃し、防御する、そこに敗北の気配はない

 

奇怪な機械が、憎悪を纏った肉質が

悲鳴のような絶叫が

様々に歪んだ艤装を加速させる

二つの怪物は、まさに正面衝突を起こしたのだ

 

「「ぁぁっ!」」

 

異形の艤装は徐々に最適化され

いかなる理由か、

その形を似通わせていく

 

巨大な主砲、連装の副砲、巨大な相手に特化した機銃、相手の攻撃を防ぐための装甲

 

その構造は、対自身を想定しているかのように、鏡合わせに成長していく

 

「はっ!」「撃てっ!」

 

だが、ここで

使用者のスペックの差が表面化した

 

「ぐぅっ…」

「ははっ!死ネ!」

 

もともと、ここは(コア)の中

その主人である離島鬼姫が圧倒的に有利

 

弾き飛ばされるのは、当然俺

 

だが

 

「そうはならん!」

()()()()()()()()()()()のだから

 

主砲を弾き飛ばし、

反撃の一発と同時に防御を固め

続く機銃を盾で防ぎ、それを貫いて来る副砲は大和撫子で切り払っていく

 

「…ぜらぁぁぁぁっ!」

機動力のために、重い装備を投棄し

爆発させて…推力に変える!

 

瞬間加速による高速移動で飛翔して…同時に対地魚雷を解放、投下する

 

着弾確認もしないままに爆撃を続けて、生産され続ける艤装を武器にもせずに魚雷を増産し、そのまま爆撃で押しつぶす

 

「お前ごと潰してやるっ!」

「できるものなら…ねっ!」

 

爆撃を対空砲火で相殺し、離島鬼姫は笑うが…その中に、異物が混ざったことに気付けなかった

 

そう、一部を投棄したとはいえ、未だに巨大な艤装体、その全てを放り捨て

空中に身を投げたのだ

 

侵食率が急激に上がった代償として、両目は青く染まり、四肢は未だ白いままだが

それでも、深海棲艦としての戦いではなく、提督として、艦娘のために展開される戦いの様相を示した

 

「やっぱ俺にはぁ…これで十分だ!」

 

深海の艤装を捨て、再び提督に戻った俺の身に与えられたのは

『輝那』『大和撫子』『Aive』の三つのみ、しかし、それこそ俺にとって

もっとも長く使っていた装備

そして、艦娘たちとの絆の証

 

「陸奥…力を寄越せ!」

[これで最後よ!]

 

その名の通りに光を放ちながら、

輝那は長大な狙撃銃へと姿を変え

 

[「ネクスエッジ!」]

 

「舐めるなぁっ!」

 

副砲+高射砲+機銃の濃密な弾幕が展開されるが、降下してくるのは機械で構築された巨城のごとき艤装ではなく、矮小な人なのだ

 

そして、黒鉄の城ではなく人が故に、自由に動くことができる

 

大和撫子で切り払い、輝那の連射で弾き飛ばし、ときには足場がわりに蹴りつけて

さらに加速しつつ落下していく

 

「…うぉぉっ!」

「!」

 

振り下ろされた剣は…たしかに

艤装のコアを貫いた

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……

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