戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

300 / 649
決着

「なぜ…私じゃなく…艤装を壊したの?」

 

「そりゃお前、この空間を作ってるのはお前じゃなくて、その艤装の…怨念だからだよ、最初は姫であるお前自身の空間なんだと思ってたけど、途中でどうも違うって気づいた

 

それに、お前が、悲しそうな顔をしていたから」

「表情なんかを理由に!」「それ以外に理由なんてあるのか?」

 

「……っ…」

 

押し黙った離島鬼姫、いや

力を失い、自身を定義するものを失い、そして自身を支えてくれる他者(機関長)すらも失った

ただの少女に

 

「…もう終わりだよ、外も決着がつくだろう?」

 

ただの一言で、トドメを刺す

 

「そうね…この島は初撃の時点でもう、致命的ダメージを受けた、機関部が全滅すれば行動不能は免れないわ

それに、最重要区画であるコアも今、機能を制圧されてしまった

…もう妖精達にも、復讐の輩としての(偶像)なんて、必要とされていない

終わりよ、全部」

 

目を閉じて、膝をつく少女

 

「…でも、私は諦めない

諦められない、だってそれ(復讐)以外を何も知らないのだもの…私は深海棲艦

鎮守府に着任し、そして死んでいったもの達の怨念を受けて、それを晴らすために

鎮守府そのものを依代として生まれた深海棲艦!だから私は、我々は!復讐以外のものを何ひとつ持ちはしないわ!」

 

語調を徐々に強めて

立ち上がるが、その手に

もはや復讐の炎はない

 

既に燃え尽き、焼け果てた灰に

再びの炎はあり得ない

 

「…なんで…?」

 

「君はやりすぎたからだよ、自分を、他人を、全てを傷つけて

結局何も成していない

何もできていないじゃないか」

 

呆然とした表情で自分の手を見つめる少女に、ただ真実を叩きつける

 

…この世界において

精神論こそ真実である以上

強烈なイメージは現実を侵食する

 

そして、彼女は一時的にイメージ力を使い果たした状態であり、俺は彼女に

燃え尽きた、火のない灰をこそイメージした、彼女の『自分だけの現実』を上書きしたのだ

 

「…この深海棲艦は、今日終焉を迎え、消滅する、それが君の末路だよ」

 

微笑みを浮かべながら

俺は彼女に、大和撫子を突きつけ

 

「…終わりだ」

 

その首を…斬りとばすわけもなく

 

空だけを斬った刀は

その奇跡に沿って空間を切り開き

世界を裂いた

 

「自我と世界の維持もできていない、こんな有様じゃあ何もできないのも道理」

 

「っ!貴様ぁっ!」

 

掴みかかってくる少女だが、その手が俺に到達する寸前でガクンと力を失う

 

「ぁ……」

 

「…どうも、ソロル提督達の艦隊は役目を果たしたようだ…それじゃあ

俺はこれで」

 

先程世界を切った、その裂け目に手をかけて、そこから飛び降りる

その先はもちろん…

 

反転

 

外の…いや、元の世界だ

 

「よし!これで機能停止したはず!」

 

艤装核の機能は著しく低下し、その色は金色から鈍色に堕ちた、そして

「ぴっひびぃ!ぴぎしぴいっ!」

 

白タコヤキが状況を教えてくれた

…深海棲艦の一団が、敵司令室に乗り込んで…決死の自爆作戦に出たらしい

 

「無茶をしやがって…」

もともと、そのつもりだったのだろう

全員に手榴弾が渡されていたそうだ

 

「…最初から、自爆狙いの特攻隊

…戦術として、あってはならないものだからな、厳重に秘匿されていたか

そもそも、あの提督が支持するわけがないから、部隊単位での独断なのか」

 

前者だとしたら、俺はソロルの提督を問い詰めなくちゃならない

後者だとしたら

俺は深海棲艦のみんなを、

止められなかったことになる

艤装コア内で戦闘して、艤装の処理能力を削ぎ、結果として『島全体が艤装の深海棲艦』である離島鬼姫の能力を大きく削る

 

俺の戦術が

直接乗り込んだの自爆作戦を誘発してしまったのだとしたら…それは

 

「ぴぎぴっひびぃ!!」

 

今はいい、そんな事は気にするな

って?お前の方が俺よりよっぽど落ち着いているな…全く

 

「艦娘達の様子を見に行かなきゃ

…最悪、轟沈者が出ている可能性もある」

 

「ぴっ!」

 

俺は

半壊し、それでも崩壊を続けている島から出るために、鎮守府の外を目指した

 

……

 

「クソッ!」

 

何度目かの轟音と共に目の前で崩落が起こり、最後の脱出ルートが埋まってしまった

 

「…どうする…どこの脱出ルートも死んだぞ」

「それでも諦めないでください!」

 

ユカナが俺の腕の中で叫ぶ

 

「…提督!妖精門(フェアリードライブ)を使います!」「なんだそれ!?」

 

「妖精の長距離移動に使われる転移手段です!詳しく説明している暇はありませんが、私に掴まってください!」

 

「了解!」

「フェアリードライブ!フルオープン!目標地点は…目視対象 甲!」

 

ユカナが、いわゆる『妖精』のような4枚の透き通った羽を伸ばして…正面に手をかざす

 

同時に、全力疾走よりも早い

急激な加速!

 

それと同時に、世界が白と黒の紋様に流されて消え、()()()()とはっきりわかる、いわゆる超空間を突っ切る機動に入る

 

「振り落とされないでくださいよぉ!」

「振り落とされたら何が起こる?」

 

俺が呻きながら聞き返すと

「知らんのか?どこかに飛ばされる」

 

当然のように笑顔で返された

…っ!

 

「衝撃に備えて!」「おう!」

 

バン!という空間を叩く音と共に

尋常な物理法則が支配する空間に帰還した俺たちは…当然のように放り飛ばされた

 

「そりゃあんだけ加速してりゃ当然かぁっ!」

 

無論、慣性の法則と重力に則った

美しい放物線であった事は言うまでもないだろう

 

「っ!」「よいしょっ!」

放り出されて着地した俺と、パッと減速できたくせに掛け声だけはあるユカナは

まさに対象的だが

ソロル鎮守府の真正面である砂浜に出現した俺たちが、()()()目立った事に差はなく…

 

「提督っ!?」

 

たまたま航空機部隊の指揮に当たっていた赤城が大声を上げる事態となった

 

「…姫の島はどうなった!?」

「今!壊滅の報が来ました!」

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。