戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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何度でも取り戻す

「暁の話か…」

 

艤装完全破壊で艦娘としての能力を失ってしまった暁、とはいえ、艦娘としての能力を失っても記憶や技能を失うわけではない

 

「それで、艤装が壊れても戦える方法が欲しいとか、艤装なしでも海に立てるようになる…とか言い出してるわけじゃないよな?ね

 

「半分くらいは正解よ…」

「おい、本当にどういう事だ」

 

返答次第によっては一度面談する必要があるかもしれない

 

「艤装無しでも、改二なら戦えるって」

「その改二がまず艤装なしじゃ発現できないんだが」

 

俺のツッコミも姉妹艦の間ではすでに行われていた事らしく、即座に淀みない返答が来る

 

「暁が艤装を破壊されたのは改二を使ってた時なんだって、だから、改二解除したら戻るはずの制服も改二のままだし、握力とかは落ちてるけどまだ砲は撃てるらしいわ」

 

「まずどうやって実験した!?」

 

そもそも改二だからといって

犠牲装甲(サクリファイスガード)機能を発現できない制服では防備が足りなすぎるし、そもそも砲の反動に体が耐えられないだろう

それで他人の砲を使って実験したとでもいってみろ、有名な話では艦砲射撃実験で甲板に置かれたラット入り籠の半数がショットブラストで籠ごと吹き飛んだという

 

それを生身で受ければ…当然

俺の輝那のNX(ネクスエッジ)でも大和撫子が無ければ腕が吹き飛ぶのだから、反動は威力に比例するとしても、生身の暁が使うには危険すぎる

 

俺が使っているから大丈夫、とでも考えてしまったのだろうか

だとすれば大きな問題だ

範を示すべき存在である提督が

危険行為を繰り返していた結果、駆逐艦がそれに手を出した、暁が怪我でもすれば大問題である、当然俺の責任が問われる

 

「暁は今どこにいる?」

「えっと、工廠よ!壊れちゃった艤装をずっと見てるわ」

 

「了解、すぐに向かう、お前は付いてくるなよ?」

「えっ……ダメ?」

 

俺の手を引っ張って上目遣いで見てくる雷…お前付いてくる気満々じゃないか

 

「…仕方ない」

 

俺は正面に視線を戻して歩き出し

その横にすかさず雷がくっついてくる

 

「…急ぎましょ」

「あぁ」

 

工廠に着くと、まずは…

 

「暁はいるか?」

視線を巡らせて、視認性の悪い工廠に声を響かせる

 

「こっち、出撃ドック側よ」

 

雷の謎感覚でナビゲートされながら歩き…その先で見つけた

 

「…」

 

体育座りでじっとしたまま

完全破壊され、コアに損傷を受けている暁の艤装、修理不能と判定されたそれを

…ウチで引き取ったのだが

 

どうも暁は沖津丸にいた時もずっと貨物室で艤装を見つめていたらしい

 

「…司令官」「却下だ」

 

「まだ何もいってないのに」

 

唐突に口を開いた暁の言葉にインターセプトすると、やはり視線を艤装に向けたまま、不満の声を上げてきた

 

「何もいっていなかろうと、そういうことをしているやつのアイデアは碌なことにならないと知っているからだ」

 

俺は後ろからそっと近づいて

暁の帽子を取る

 

「ちょっと司令官!」

 

暁がついに腰を上げて、

帽子を追おうと手を伸ばす

 

すかさず俺は暁の頭に帽子を載せる

…提督制服のな

 

「あ…ってこれ違うじゃない!」

「そいつは重かったか?」

 

パッと帽子を交換して、笑う

「その帽子はな、艦娘たちの管理者として、命を預かる責任の重さがあるんだ」

「だからなに?」

 

「わからねえか?俺はお前が危ないんなら守る義務がある、なんかやらかしそうになったら全力で止める必要がある、それだけの責任を負ってるんだ、だからなんかするなら言ってくれ、艤装無しで砲使ったりするなそれだけだ」

 

「上から目線で一方的に…」

「実際、俺は艤装を使ったこともなければ壊されたこともないからな

悪いがお前の感覚は理解できない

…それでも、お前を危険に晒す可能性は、できる限り排除する」

 

ぎゅむ、と頭の上に手を置く

「ここは空気が流れないから、ずっといるのは良くないぞ?ほら、今日はいい天気なんだから、空見に行こうぜ」

「…うん」

 

終始後ろで見ていた雷も連れて

一緒に外へ出る

 

「…晴れてる」

「帰りもずっと曇ったけど、あれから結構経ったしな、雲も流されちゃったよ

なぁ、暁?」

 

「なに?」

 

もうすっかり普段通りの表情になった暁に、視線を向けて問う

 

「気は晴れたか?」

「…そうねぇ〜うん、もう良いわ

色々考えてたこと、全部止められちゃったもの」

 

一歩前に出て、こちらを向いて

「私は艦娘の力を無くしちゃったけど

それでも、提督の艦娘でいられるの?」

 

「あぁ、正式な解体でない以上は、軍籍はそのままになる、だからお前はちゃんと俺の艦娘のままだよ」

 

帽子越しに暁の頭を撫でながら、笑顔で言い切る

 

「それに、解体されたとしても、お前が俺の艦娘であったことに違いはない」

「っ!」

 

なぜか足元を見始める暁に視線を合わせて

「とはいえ、お前が望むのなら俺はお前を解体処分として、鎮守府から除名することで基本的人権を持つ一般人にする事もできる、もしお前が解体を望むのなら」

 

「司令官のばか」

 

膝を曲げて身長を合わせていたので、ちょうど頭をべし、と叩かれる

 

「わたしは、司令官と一緒にいたい

だから、艦娘の力を無くしても

私は司令官の艦娘であり続けるわ」

 

「…よかった…もう無茶言いださないでよね?」

 

雷が後ろから暁に抱きつく

「うん、もう大丈夫」

 

その一言を聞いて安心したか、雷がますますくっつく

 

「ちょ、ちょっと!雷ったら」

「うふふっ♪」

 

姉妹仲睦じいことで

 

「あ、暁、お前はまず、里見君のところ(医務室)行って検査な?生身で砲使ったりして、体に問題が起きてないか調べないと」

「えぇ〜?…」

 

嫌そうな声だな、いつもの一人前のレディムーブすら消えているとは

 

「…お前が行こうとしないなら強制的に連れて行くぞ」

「一人で行けるわよ!」

 

と言いながらちょっと怯えた目が相変わらず一人前(笑)なんだよなぁ

 

「わかった、それじゃ3人で行こう」

「随伴任務了解よ!」

 

「雷も来るの!?」

 

ちなみにこの後、俺も無茶のし過ぎだと言われる羽目になった

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
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