茶を飲んで落ちついたあと、ゆっくりと状況を振り返って…俺は口を開いた
「なんでユカナがいるの?」
「…着任したからです」
「お前深海の」「夢葛鎮守府から転属着任しました、総合管理妖精ゆかなと申します
と、さきほど自己紹介申し上げた筈ですが」
「たしかに聞いたけど、総合管理妖精?お前、たしか探照灯の妖精だったよな」
「そうですよ?もと探照灯妖精、艦隊指揮施設妖精を経て、現総合管理妖精です…すごいエスカレーター登ってますよね、わたし…」
「そもそも総合管理妖精ってなんだ?」
感慨深げに窓の外に視線を流す『ゆかな』に、尋ねてみると
「はい、総合管理妖精とは、工廠業務管轄
スラスラと、逆にわからないのがおかしいと言わんばかりに滑らかに言葉が帰ってきた
「…現場、秘書妖精がその辺やってたと思うんだけど?」
「彼女は元装備妖精ですし、
「…はぁ…そうなのか」
「はい♪」
キラキラした笑顔で頷いたゆかなは
…俺の隣に座って茶を飲んでいた時雨に鋭い目を向けた
「で、時雨さん、あなたは何用ですか?」
「僕?ぼくは提督に連れてこられたから執務室にいるだけだよ?今日は秘書艦でもないし」
余裕の表情で茶を飲みきり
ゆかなに気配を向ける時雨
その気配は間違っても妖精に向けるようなものではない剣呑な空気で々
「よせ時雨」
必然的に止めざるを得なくなった俺が手を出すことになった
「提督?なんで止めるの?こいつは提督の命を狙ったんでしょ?」
「…それは以前の話だ
確執はあれど、それを今にまで引っ張り続けるのは違うだろ?」
そっと時雨の頭を撫でながら
優しく告げる
「だから、時雨は手を出すな」
「…うん、わかったよ、提督」
「お熱いですねぇ…」
(熱い熱い…火傷しちゃいますよ)
(わたし以外の娘と…うぅ…)
恨みのこもった目が俺に突き刺さる
「…なんだお前ら」
《別になんでも》
息合いすぎだろお前ら…
艦娘だけでなく妖精も妖精でチームワークがいいんだなぁうちの鎮守府は
「よし、とりあえず未処理の分の決済とか、残ってるやつをくれ」
さきほどからこちらを見ていた秘書妖精に声をかけると
(はい!…わたし以外の娘とイチャイチャと…いえなんでもありません
未処理の書類は…ありませんね♪)
「ねぇの!?」
「今のところ、秘書妖精さんと大淀さん以外に手を借りることもなく
スムーズに進んでいますよ?
提督もたまにはお休みでも取ったら如何ですか?」
ゆかなから差し出された書類は
休暇届、無論人間用だ
艦娘には休暇などない…一応非番の日もあるし、仕事のない艦娘もいるのだが
外出には届けがいるとか、色々と面倒で、基本的には鎮守府と海の往復生活である
たまに大本営に行ったりするが
「…まぁ、そういうのも…いいかな」
実は提督だって公務員
有給だってある、ここ最近負担も大きかったし、精神的な負荷も掛かっている
休む、というのも相応の選択肢だろう
「…たまには休むか?」
目を閉じて、黙考する
頭の中を巡るのは鎮守府のことばかりだ
艦娘のメンタルケアや指揮、これは俺と里見君にしかできない関係上、里見君には通常業務に加えての負荷を強いることになる
執務は…まぁ、現状を見るに
あまり問題はなさそうだ
残るは艦娘達のほうなのだが
「いーっぱい頼ってね!」
雷!?
「司令官にはお世話になっているもの、こういう時には、ちゃんと休むべきよ」
神風?
「なんでいる?!」
俺の言葉に反応した二人は
後ろでウインクしている時雨を指す
「こっそり入れてもらったの」
「全然気づいていなかったわね
…やっぱり疲れてるのよ」
神風が近寄ってきて
「お休みを取るのはいい判断だと思うわ、私としても薦めようと思っていたの」
俺の手から用紙を取り
サラサラと書き込んでいく
「はい、これでいいわ
今日明日の短期だけど、休暇を楽しんでね」
「お、おう」
手渡されたその用紙には
もちろん諸記入事項欄が埋められており、艦娘用の外出許可届けがクリップで留められていた
「…神風?」
「?どうかした?一緒にお出かけするんでしょ?」
「みんな付いてくるわけにもいかないし、こっそりみんなで話し合ってね
それで、私たちが付いていくことになったの」
(しれつな闘いでしたね)
(欲望にまみれた女の闘い…)
(こわかったです)
実弾ぶつけ合ってなければいいか
…とりあえず何があったのかは聞かないでおく、俺はもうじき休暇なんだ
短い休暇を最大限に楽しまなきゃならない
「っていうかみんな俺復帰には気づいてたのか?」
俺が何気なく問う、その瞬間
「もちろん、私たちは提督の艦娘よ?提督のことならなんだってお見通しなんだから」
「僕は提督のことならなんだって知ってるんだよ?」
世界が凍りついた
何度目かもわからないが
とりあえず世界は凍りついた
「…僕の方が深く知っている」
「私の方が理解してるわ」
氷河期もかくやというオーラを放つ時雨と、それを正面から受け止めて小揺るぎもしない雷、そしてそれ眺める神風
「いやお前は止めろよ!」
「私?無理よ無理、性能差が大きすぎるわ…提督が一声かければ直ぐに止まるわよ?」
「…何をどうしろと言うんだ?」
神風の表情は明らかに遊んでいる者のそれだが、溺れる者は藁にも縋る
俺は一応聞いてみることにした
「どっちかを呼び出して、結婚指輪を渡すの、そうすれば一発よ」
「お前に聞いた俺が悪かった」
そっと目を逸らして
ゆかなの方を見ると…
「無理です、とめられません」
(わたしたちには荷が重いです)
拒否されてしまった、まぁ
あの中に飛び込めと言われたらそうなるわ
「…はぁ…」
いまはまだ可愛いものだが
そのうち艤装まで出したりしなら大問題、なんとか今のうちな話を納めないと
[提督提督、こういってみて…]
内なる川内の声に耳を傾けて
それをそのまま言い放つ
「…二人とも、よく聞いてくれ」
「はい!」「うん」
「喧嘩したら二人とも連れていかない」
「嫌だな提督、僕たちは親友だよ?喧嘩なんてするわけないじゃないか」
「無駄な争いなんてするべきじゃないわ」
[ほら治った][根本的解決になっていないような気がするんだけど?]
これでは先延ばしになっているだけなのではないだろうか…
[大丈夫大丈夫!カタチって意外と重要だし、そのうち勝手に仲良くなってるよ]
[それで良いならいいんだけど…]
まぁ、取り敢えず剣呑な雰囲気は収まったし、それで良いとしよう
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戦争が終わった後の話を!
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しぐ……しぐ……