「まずは…朝食どうするか」
「普通に食堂で食べるのは?」
「…味覚が死んでる、回復してるかどうか自信がないんだ、流石に間宮さんの飯で実験なんてするわけにはいかない」
「味覚が…?」
「何かあったの?」
純粋な二人が聞いてくるが
それを言ったら危険なので黙秘することにして、取り敢えずまずは
「……なにもなかった」
その方向で言い訳を試みよう
言い訳だけど
「何かあったのね、ちょっと里見さん問い詰めてくるわ」「雷、ちゃんと艤装に魚雷の装填は済ませたかい?」
時雨エ…
「大丈夫よ、しっかり準備はするわ」
「えっ?」
雷も乗り気…?
「…それ大丈夫なのか?まさか、とは思うが物理的手段に乗り切ったりはしないよな?」
「大丈夫よ、
ん?なんかいま答えになっていなかったような…
「だから気にしないで?」
雷の声はなんだか鳳翔さんに似てるんだよなぁ…いや、同じ声帯だけど
根本的に使い方が違ったのに
いまはどうやってるのかってレベルでそっくりだ
「…気にしないでおいた方がいいわ、それに、休暇に仕事の話を持ち込みたくはないでしょう?」
神風に後ろから手を引かれて
振り返ると、
そこには優しく微笑む…目が笑っていない時雨がいた
「大丈夫、提督はなにも気にしなくていい、ただ、医務官の補充要員の手配をお願いするだけだから」
「それ里見君死んでるって!
それはダメだぞ、流石に許してあげられる範疇を超えているぞ!」
時雨の視線の圧力に全力で抗いながら声を上げる、この鎮守府の提督が俺であり、艦娘はその指揮下にある関係上、彼女たちの不始末は俺が責任を取ることになる
彼女たちに人権がないから責任能力がないと見做される為にそうなるのだが
流石に艦娘が人を殺すというのであれば俺個人で責任を取れる範疇にない
艦娘であるならその前に解体処置を行うか、大本営に配置換えでも申告するかの適切な対応を取らなかった責任として俺自身も軍法会議行きになる可能性もある
「今から休暇だってのに、なんでそんな不安な話になっちまうんだよ…」
俺は軍法会議行きになんでなりたくはないし、艦娘を送りたくもない
というわけで止めさせてもらおうじゃないか
「時雨、雷、里見君問い詰めるのはいいけど、実力行使は禁止するよ」
「ダメなの?」
「ダメです、艤装つけてれば物理攻撃でも十分コンクリの塊を殴り壊せるような艦娘が人に手をあげたら危険だから、お前ら二人の問題じゃ済まなくなるし、それが民間にバレたら
艦娘兵器論者がまた湧いてくる」
滔々と説教しながら徐々に執務室の扉側に移動して、そっと扉に手をかけ
「というわけで実力行使は禁止!
それ以外は好きにしなさい!」
俺は全力で走り出した
目標地点は艤装の置いてある工廠
その出撃ドックだ
メンテナンスはここ四日されていない艤装もあるし、実弾使用状態のままになっていると思う、いかに俺が実力行使を禁止しようとも
やっちまう可能性がある以上は
俺は未然に防ぐための努力を行う義務がある…というわけで、俺は彼女たちの艤装をロックする!
「うぉぉっ!動け俺の体!」
「提督?」
ちょうどそこに通りかかったのは
「天龍!俺を投げろっ!」
「っ!」
天龍は艤装無しの状態でもそこそこ腕力のある艦娘だ、球磨、長門同様
肉体的な意味でも鍛えている
鎮守府本棟2階の執務室から外の工廠に向かうには階段を経由する必要がある上に、本棟の玄関から渡り廊下を通る、だが、時雨たちの方が足が速い関係上、本気でショートカットする必要がある
それをするにちょうどいいのは
執務室先の廊下の窓からの飛び降りだ
「天龍!やれ!」
「了解っ!死ぬなよぉっ」
ギュン、と視界が回転すると同時に、空中に放り投げられ、俺は窓から外へと飛び出した
「よぉっし!」
半回転して、頭を下にしながら落下し
壁を蹴りつけて反動でさらに半回転
同時に横向きのベクトルを与え、落下方向を斜めに修正する
足から着地して受け身、大げさだが全身の
「ぬぉぉっ!」
バジィンと音を立てながら着地を成功させ、立ち上がる、大幅にショートカットできたおかげで階段から時雨と雷が出てくるにはまだ少々の猶予があるはずだ
行くぞ、工廠はすぐそこ
明石があれば協力してもらうが
いなければいないで艤装に細工を施すなんて危険行為を見咎められずにすむ
「ふぅ…すぅ…はぁ…」
一度深呼吸して、落ち着いてから
工廠に駆け込み、雷と時雨の艤装を探す
時雨は白露型だから、左三番の棚、右から二番目…これだ、特徴的な砲のおかげですぐにわかった、
雷は……暁型だから
ちょっと遠いな…
「こっちか?」
吹雪から始まる特型枠でも特|||型の暁型は別枠の扱いになっているので
棚も違うのだが…
「雷は几帳面だからすぐ見つかると思ったんだが…」
どうも艤装の棚に見当たらない
…どこだ?
「ここですよ、いま雷ちゃんの艤装は中破してるので修理中です」
「…明石、いたのか?」
「いいえ、翔鶴です」
「なっ!翔鶴っ!?」
棚の奥のスペース、作業場になっているところから出てきたのは
まさかの作業着翔鶴
いつもの和服じゃない翔鶴は新鮮だ
「しかし、意外と似合っている」
「うふふ、提督ったら…飾り気もないただの作業着ですよ?」
微笑みながら立ち上がる翔鶴から
暁型三番艦、雷の艤装を受け取る
「想定外だったけど、ちょっと触らせてもらうよ」
こそっと実弾使用不可状態
いわゆる演習モードにする
「これでよし、演習モードにしただけだから、気にしなくていいよ」
「…演習モード…ですか」
「ペイント弾専用状態にしたってだけ、それじゃあ俺は休暇に入るから
…ってもなんか引き継ぎとかいる?」
しばらく働いていないし、むしろ俺が引き継ぎされる側ではないか?と訝しみながらの俺の声に、翔鶴は応じて
「私は工廠に正式に配属されているわけではないので、引き継ぎであれば明石さんの方にお願いします」
「…おう」
取り敢えず明石探すか…
「あ、でも
引き継ぎはいらないと思いますよ?」
去ろうとした俺の背中に
翔鶴が声をかけてくる
「だって、提督が帰ってきた後、入院明けに休暇をとった、ってみんな噂してましたから、明石さんも仕事の方は請け負ってくれています」「最初からそれ言ってくれ…」
まったく、俺の休暇は
散々な始まりだな
600話記念番外編は
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テンプレ転生者(ヘイト)
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ストーリーを進めよう
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戦争が終わった後の話を!
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しぐ……しぐ……