戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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軽重を問う

「…さぁて、神風を迎えに行こうか」

 

天龍に放り投げられて痛む体(自業自得)を動かして工廠から出て、取り敢えず

鎮守府の棟内へ戻る

 

「提督っ!」

 

ん?

 

「どうした?蒼龍」

鎮守府に入った途端に掛けられた声

その主人のいる方角に声を向けると、緑の和装が目に映った

 

「提督!復帰してきたんだよね

おめでとう!」

 

「そんなにテンション上がるような事か?…まぁ、ありがとう」

ぱっと手を取られ

 

「帰ってきたら精密検査、すぐ入院して退院直後に休暇、全然会えるタイミングないじゃん!だからこの時間に全部凝縮するの」

「たしかに…ほとんど会えなかったからな」

 

なお後半は俺都合であったりもする

 

「提督はこの後時間ある?」

「いや、神風と雷を拾って出ようかと」

 

「出るって?どこに行くの?」

 

普段なら『そっか、じゃあまたね』と繋がりそうなところだが、今日の蒼龍はひと味違った

 

「せっかくの休暇だし、どっか出ようかと…そもそも鎮守府の中にばかり篭っていると情勢に出遅れるし、少し人口のある所に行ってこようと思ってな」

「ふうぅん…幼女二人連れてショッピング、遊園地、写真撮影、夜景を背にしてキス、派手なホテルに消えて行く…」

 

ジトッとした目で口ずさむその内容は、あまりにも下劣で到底美少女から出るセリフとは思えないものだった

 

「ちょっと待て!なんだその青写真は、俺はそんな爛れた方向に進むつもりは無い!

そもそも俺の好みは…どうでもいい!まず俺艦娘に対してそんな風な目を向けはしない!いいか?俺にとって艦娘ってのは

自分の管轄する鎮守府に所属する部下であって、同時に俺が運用を任された戦力

これを意味もなく弄ぶようなことなど出来ん、いつ以前の離島鬼姫のような怪物級(モンスタークラス)やそれには劣るにしても鬼、姫級が出てくるとも限らないんだぞ」

 

俺の必死の声にジト目から戻った蒼龍は、しかし笑顔には戻らず

 

「提督〜?提督も私たちのことを戦力としか見てないの?私は提督にとって兵器なの?」

手を引っ張ってくる

 

「んな…そんなわけないだろ」「でもさっき提督は戦力って言ってた、つまり私たちは『艦娘』という名を持った兵器に過ぎないってことなんじゃないの?」

 

「断じて違う、いいか?

戦力単位ってのは人間が必要だ

『爆撃機』1、これは兵器だな?」

 

「うん」

「戦力単位としてカウントするには

操縦士(パイロット)を含めて1ユニットにする必要がある、俺が艦娘を『戦力』と称するのはそれが理由だ、俺たちタダの人間には扱えない『艤装』という兵器を操る『使い手』こそが艦娘であり、『艤装+艦娘』でこそ戦力単位としてカウントするべきだ

 

つまり、俺は艦娘そのものを兵器として見てはいない、ただし艤装を運用できる戦力としてカウントしている」

 

[うわ詭弁…][なんとでも言え、これが俺の最適解だ、それに艦娘が艦の化身であることに間違いはないが、同時に人間を素体として、人間に戻ることもできる、なら人間でもあると考えて何が悪い]

 

川内のツッコミには冷静に反論させてもらうが…蒼龍は?

 

「………」

フリーズしていた

 

「…蒼龍?」

「…………」

 

「おーい」

「っ!提督っ!」

 

艤装ありきの滑走になれた空母艦娘の動きではない、俊敏な陸戦機動で飛びつかれる

 

「ん!なんだ蒼龍」

「今まで、『兵器』か『人間』かって二極化してた論争に終止符が打たれたの」

 

「…はぁ…?」

 

「だから!私の中で今すごくスッキリしてるんだよ、ありがと、提督♪」

「…なんにせよ、それで良いなら良かった」

 

蒼龍を剥がして、俺は執務室に向かった

 

[提督〜?][なんだ?]

 

[提督は、私のことも戦力にカウントしてるの?]

[俺の付属品としてカウントしている、あくまで俺の付属品、戦力じゃない]

 

[なんで?]

[お前を戦力としてカウントするためには俺が前線に出て戦う必要がある

以前ならそれも簡単だったが

大和たちに身体的負荷がバレた以上、それは困難になったと言うべきだろう

運用できない戦力はカウントできない]

 

[なるほど…じゃあ私はどんな分類なのかな?][言ったろ?俺の一部だよ]

 

[そっか、提督にとって私は…ううん、なんでもない、まずは先に格好整えた方が良いよ、提督が軍服じゃ艦娘も落ち着かないでしょ]

[…そうだな]

 

川内はそれで会話を打ち切り

俺は提督私室に置いてある私服と財布、久しく乗っていない車の鍵を取りに向かった

 


のを物陰から見ていた二人

 

「…そういえば、提督の私服ってどんなのかな?…見たことなかったなぁ」

「ずっと何かの制服を着てましたし、軍服か技師支給の黒い軍装か、でしたからね」

 

時雨と…件の里見医務官である

妖精が見えない里見君だが、その技能は高い、最初から冗談で言っていた雷と違い、艤装無しでもマジな目で押し入ってきた時雨を説得して、ついに説き伏せたのだった

 

「…『兵器』と『戦力』は違う、か…お為ごかしの詭弁だね」

「そもそも『兵器』として作られた艦が人型になったからとそれを人間扱いするのは違うとも思いますよ…人権がない以上は法律的には物だし、犬や猫に名前をつける可愛がるならばともかく

鉄と燃料とアルミと真鍮の薬莢からなる物を愛でられるかというと…ね?」

 

「でも、詭弁だからこそ、それを信じて見たくもなるよ、僕は自分を人間を素材にした生体兵器と捉えていたけど、その自説も収めるべきかもしれない」

「それはどうぞご自由に、人間を素材にして、人間に戻せるモノ、それは人間であるのか?永遠の課題ですね…」

 

そもそも艤装を接続して、艦娘を建造するその時に艦の魂を焼き付けている関係上、その素体となった人物の魂は消滅して、たとえ解体しても戻りはしない

 

名前や身分は戻っても、肉体的に、精神的に、失われたかつての形が戻ってくることはないのだから

 


 

「…神風どこいった?」

 

俺は一頻り考えた末に選定した私服を着て、とりあえず神風を探して廊下を歩いていた

 

雷と神風を見つけて鎮守府を出ようというのに…最低限執務室にいなくても鎮守府にいるのは分かるが、それだけで探し出すのは難しい、さてどう探すか…

 

「提督?提督の私服初めて見た気がするんだけど、イケてるじゃん!」

 

角を曲がったすぐそこに、たまたまいたのは…鈴谷

 

「ただの無個性なジャケットにジーンズなんだが?」「もう、それが似合ってるからカッコいいんだよ提督っ、いい?デザインが良いのとファッションとして使いこなせるのとは違うの」

 

ぱっと近づいてきた鈴谷は

俺が羽織っていたジャケットの前を開けて、シャツ出し状態にする、

下のTシャツについては

白地のプリントなのだが、やはり目立つほどの派手なデザインではない

 

「うん、ちょっと渋めのストリートファッションって感じだね、使いこなしてるじゃん」

「…1990年代の流行りらしいが?」

 

「30年も前になると流行り遅れも『そういうスタイル』懐古ファッションって言い張っちゃえるの、提督は歳の割に20くらいで通りそうな外見なんだし、ちゃんと髪型とか整えてそれなりのカッコすればモテると思うよ?」

 

「だと良いんだがな」

 

苦笑しつつ鈴谷と別れて

神風を探しに向かうのだった

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
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