「…妙ってのは…」
「この六重の連謡はすでに討伐されているのよ」
レ級に開かれた扉から、その一声と共に空母棲鬼が入ってくる
「六重の連謡は初めて観測された姫級の集団、圧倒的な単体戦力をまとめただけの荒削りな集団でありながら、リーダーとして『戦艦棲姫』を抱え、以下『空母棲姫』『潜水棲姫』『駆逐棲姫』『北方棲姫』『軽巡棲姫』と隙のない編成をしていたわ
けれど、成長する艦娘と深海棲艦同士の進化レースによって、あくまで初期型の姫である彼女達は劣化、性能に於いて上回られた
…そして、一年以上前に大規模な討伐作戦が組まれ、艦娘達の集団が
その六重の連謡を打ち破り
『空母棲姫』『潜水棲姫』の撃滅に成功、『駆逐棲姫』と『軽巡棲姫』『戦艦棲姫』は逃れたけど、『北方棲姫』は辺境の地に封じ込められた
かくして、直接的な最大脅威であった六重の連謡は事実上消滅した…とされていたわ」
「…しかし、六重の連謡が夢葛鎮守府を襲撃したのは事実であるらしい、なるほど
それはたしかに妙だな…」
大本営公式記録などどれほど改竄されているかもわからない代物だが
それほどの大物を相手にした戦闘となれば記録はそうそう弄れないもの
よって信頼性も高いはずなのだが…
「…逃れた軽巡、駆逐、戦艦棲姫が沈んだメンバー達の分を新たに補充し、艦隊を再結成した、と考えるのが自然でしょうね…」
「えぇ、それにこんな姿の深海棲艦は今まで確認されていないわ、まず間違いなく
進化レースの最先端を走っているわね」
「…現状の危険度は最上位か…」
そもそも姫級というのは
海域に二人もいれば多い方である
一艦隊に3隻以上姫が集まるなんて馬鹿げた話を信じるような奴は、よほどの大バカか、それが真実であると知っているものくらいである
「とにかく、その六重の連謡に対しての対策を練らなくてはならないな、ビスマルク、我々を呼んだのはつまり…」
「そう、対策会議のためよ
六重の連謡についての情報はどれも古くて役に立つとは言い難いものだから
まずは姫級との戦闘経験がある先人の知恵を借りようかと思って」
ビスマルクにしては大人な発想が先に立ったようで、至極全うな提言の下
大人艦達の話がはじまった
「で、大浴場が使えるからどうぞ
…あとおやすみ」
一方こちらでは神風と雷に入浴時間を告げていたのだが
「…司令官、おやすみはまだ早いわ」
「え?」
「神風?」
「私だって大人の女よ?ちゃんと覚悟くらいしてるわ」
「お前なんか勘違いしてないか?
一応言っておくが、雷、お前はこのホテルをなんだと思ってる?」
「え?一般的なビジネスホテルだけど?…あ、もしかして…」
「だろうな、神風はちゃんと諭してやってくれ」
「わかったわ!」
ちなみに、この後神風は俺と顔を合わせようとしなくなってしまった
「で、おはようなんだけど、神風はなぜこっちを見ない」
「……………」
「司令官!おはようございます、07:00をお知らせするわ」
雷の元気はやっぱり寝起きでも衰えないらしい、元気の良い声であった
「おはよう、雷、7時からは食堂が使えるから朝食行こうぜ?…神風?」
「……もうやめて……」
蚊の鳴くようなか細い声で
神風が鳴く、かわいそうなので声をかけるのはやめてやる事にした
「まぁ…飯食おうぜ」
夕食はそこそこ美味かったし、限られた食材の中でも技巧次第では美味いものは作れるんだなぁと思い知らされた
…鳳翔さん?あの人は規格外だし、そもそも自力で食材獲れる人だから
あの人の山菜とか野草の可食部位とかの知識凄いよ?
「…ふぁぁ………」
あくびを振りまきながら
俺は二人を引き連れてレストランに入り、親子連れを見るような微笑ましい視線を向けられながら食事をとるのだった
「で、どうするのかは……」
「結局、この深海棲艦については詳細な情報が足りない、至極一般的な高火力重装甲と言うのならまだしも、それだけではないのだろう?」
「複数の姫級相手には経験がありませんし…」
扶桑さんと長門は考え込んでいるが、大和はすでに退出、ビスマルクは早い段階でおねんねしてしまった、金剛は子供艦たちのために夜の見回りをしに行っている
「ダメだな…火力が足りない」
結論はやはりそこになったらしい
「いずれにせよ6隻同時に姫が襲ってくるとなれば、膨大かつ重厚な弾幕が必要だ、それも機銃や小口径砲では話にならない…大口径の砲なら効くかもしれんが姫との戦闘中にそれを維持できるほど器用なわけでもない」
「…手詰まり、ですね…」
現状、六重の連謡が総合力で上回る以上、創海鎮守府側としては総力戦を避けねばならない
それでなければ援軍を求めるべきだろう
一番いいのは…戦わないことなのだが
「それで済むほど相手も甘くはない、と言うのだろうな…」
鎮守府の夜は、静かに更けていく
600話記念番外編は
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戦争が終わった後の話を!
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しぐ……しぐ……