狼煙
「…醤油ラーメンを二つ、塩ラーメンはスープ増しです、ガーリックライスと半チャーハン、餃子を10個です…どうぞ」
淀みなく注文内容を復唱しつつ
各々の皿を置いて行くタ級、
店の手伝いをしている、というのは本当なようだ
「後デお話シサセテ頂いても?」
「あぁ、もちろんだよ」
とりあえずまずは、このラーメンを頂こうか
「「「いただきます」」」
ヲ級が作っているというラーメンなのだが、別に違和感はないし、普通にうまい…海洋系の出汁は今や貴重品であるが、腐っても戦艦と空母、鎮守府近海レベルの沿岸では単独でヌシになるレベルの戦力を持っているので、彼女たちなら平然と用意できるのだろう
といっても、秋刀魚漁で言われる通り、艦としての戦闘能力と、漁船としての漁獲能力はまったく別の技能、秀でるか否かは人によるとしか言いようがない
別段、太平洋を抜けてMA海域などに行くわけではないし、彼女たちにもそこまで負担になるようなことはないと思うし、店主の手伝い自体は真摯に取り組んでいるようだ
周辺鎮守府の提督がこれを認知しているか、しているにしても無害と判断される証拠を持っているのかは謎だが、それはまぁ仕方ないだろう
「…いいか、ラーメン美味いし」
ヲ級が分かりやすく明るい表情になるのを苦笑で誤魔化して去って行く
「…店的には良いのかもしれないが、顧客は遠のくよなぁ…」
まずタ級はなんとか『色白の美女』で通じるだろう、だがヲ級である
彼女は今、店支給らしい制服を着ているのだが、それでも下のデザインというか、体型が透けているあたり、そもそも人外感が溢れている
いやまずそもそもの話、ヲ級は目が光りを放っているので、人外バレバレである
タ級の方はうまく抑えて水色の瞳で誤魔化せるレベルなのだが…
「どうしテモ、昔の仲間ダカら…ね」
「隠海棲艦同士の?」
「いイエ、鎮守府所属時代カラよ
私は戦艦、陸奥だったケド、あの娘ハ軽空母の瑞鳳ダッタの、昔カラよくキノ回ル娘だったケド、ヤッパリ深海棲艦としてハ上手ク行かナクテネ…」
「…つまり、そういうことか…」
大体の理由は理解した
つまり、どこかでまた鎮守府者の深海棲艦が生まれ、それが在来の深海棲艦と馴染めずに離脱、隠海棲艦となって、しかし寄る辺も持たない二人はここのラーメン屋の店主に拾われ、結果的にバイト中
…それはそれで良いんじゃないかなぁ
「まぁ、詳しい話は後で聞くよ
…ガーリックライス一つ追加で」
「私達もそれには賛成よ、あ、ラーメン替え玉お願い」
「二人とも…まったく…」
苦笑している雷以外の二人は
話よりも食欲が先に立っているのだが、それもヲ級ラーメンが美味いからであって、普段ならこうはならない
筈であり、そのつもりだ
「…「「…ご馳走様でした」」」
完食、である、結果としてかなりの量食べてしまったのだが、ヲ級もタ級も嫌な顔一つしないし、別に客が多いわけでもないので
長く居座ってしまった
「…美味しかったよ、タ級、ヲ級…」
「ありがとう、店の裏ニ行きマショウか…そこニ事務所がアルの」
「了解」
神風と雷は警護を申し出てくるが
誠意を見せるために断った
そもそも艤装無しの相手になら俺でも普通に押し勝てるし、深海棲艦としての戦闘にもなればタ級はともかく艤装を装着するのに時間のかかるヲ級なら単独で制圧出来る
「…というわけで、話を聞かせてもらおう」
「…ハイ、ここでノバイトを始メタのは単なる小遣い稼ギト、家賃ガワリだったワ…でも、ヲ級と一緒にイル以上、ソコソコの食費モ掛かるシ、ずっと居候してイルのは良くナイカラ、ちゃんと働キ始メタノヨ」
「…目ノ見エナイ店主サンハ、私達ノコトヲ受ケイレテクレタノニ…私達ハ
ドコニ行ッテモ化ケ物扱イ…」
「…ウチ…来るか?」
「え?」「え?」「エ?」「エっ?」
「なんでそんな反応なの?」
みんなの反応が悲しい
「…申し出は有難イケド…私ハこの店を離れラレナイわ、義理を通サズニは、ね」
「私モ遠慮サセテモライマス」
おお、断られてしまった!
世界の半分を出そうという竜王の気分だ…まぁ世界の半分なんて持ってないけど
「…まぁ、仕方ないか…強引には趣味じゃない、俺は関東の…熱海側の鎮守府、創海鎮守府の提督、神巫蒼羅中佐だ、これどうぞ…必要になったらいつでも頼ってくれ」
さりげなく名刺を渡しつつ連作先を告げておく、この子たちが危険にさらされる様な事は早々あるまいが、それでも安全策はとっておくに限る
「…むっ!」
神風が露骨に嫌そうな顔になった
「おい神風、そんな顔するなよ…ほら、帰りにアイス買ってやるから」
「今は冬よ、司令官」
「そうだったな…」
というわけで隠海棲艦二人と別れて
連絡先を交換して
(タ級の方は携帯を持っていた)
予定以上に短くなってしまった土産買いと珍味巡りをさっさと消化して
鎮守府へと帰ろうというその時だった
[提督っ!何かくるよ!]
[感知している!]
深海に属するのであろう
白タコヤキ型、
即ち新型艦載機が飛来したのだった
「…白タコヤキ、じゃなさそうだ」
「別個体よね、アレ…」
「話し合いができるような雰囲気じゃなさそうね」
二人もお土産が入っている紙袋を路上に置き捨ててまで戦闘態勢に入り
「…艤装ないんだった…」
マヌケを晒していた
「…チッ…司令官?通信機器はある?」
「一応、加ニ倉さんと一ノ瀬さん、三鷹さん、鯉住くんら佐官達には電話が通じる
…けどジャミングされてるなぁ…」
どうも敵さんも本格的な襲撃準備を進めていたようだ、第二次大空襲とか
突然勃発されても仕方がないんだが
…まぁ、俺にできることは現在
[川内ごめん!][許す!]
路上のガードレールをひっつかんで、深化する
「ヌォォォっ!」
ガードレールをひっこぬき
再構築、リ級型の腕甲を形成する
「…キャノン喰らえ」
三式弾のような対空特攻は乗らないが、それでも主砲級ともなれば
インパクトだけでもビビらせるくらいは出来るのか、そこまで数の多くなかった艦載機達は散っていく
「…せっかくの休日が台無しだぜ…
とにかく急いで鎮守府へ帰るぞ」
俺の声は、どこか寒々しく響いた
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